2012年 パレスチナの労働事情

2013年1月25日 講演録

パレスチナ労働組合総連盟(PGFTU)
ファールーク アフマド アーリフ アーリフ(Mr. Farouq Ahmad AREF AREF)

パレスチナ労働組合総連盟(PGFTU)トルカレム支部長

 

1.労働情勢(全般)

 パレスチナの労働事情は、非常に厳しい社会、経済情勢の中で、[1]非常に高い失業率と貧困率の拡大[2]賃金の低下。特に公共サービス部門や農業部門における賃金の低下[3]労働市場における雇用機会の欠如。その原因となっている投資家の不在および政府の投資計画の欠如[4]『パレスチナ労働法』を始めとした労働関係法令や制度について、監視するための制度の欠如[5]労働者とその家族を守る社会保障関連の法律の未整備[6]働くパレスチナ女性に対する賃金面などの劣悪な労働条件――などである。

2.労働組合が現在直面している課題

 パレスチナの労働組合が直面している現在の課題は、[1]労働市場および賃金制度が構造的な欠陥を抱えていること[2]失業率の上昇、地元労働市場における雇用機会の減少[3]貧困率の上昇[4]パリ経済協定(オスロ合意に基づくパレスチナとイスラエルの経済関係を定めた協定)によるパレスチナ国民の社会的・経済的生活への悪影響[5]国際労働機関(ILO)が定める労働基準の適用についての問題。特に第202号勧告(社会的保護の床勧告)の適用[6]パレスチナ政府の政策と社会・経済情勢への影響――などがある。

3.その課題解決に向け、どのように取り組もうとしているのか

 これらの問題を解決するための計画・活動としては、まず社会的対話を強化することである。特に製造業部門における政労使三者間のパートナーシップを強化するとともに、報道機関や市民とも連携して、労働組合は抗議行動を起こし、圧力を行使していかなければならない。また、市民、NGO、政党、政治勢力との調整や協働を図っていく必要もある。さらに啓発活動として、労働者を対象とする研修やワークショップを開催することも必要である。われわれは、2012~2016年までの戦略的計画を実行に移し、男女とも労働組合への加入率を上げて、労働組合の組織強化を図っていく。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 政府は、パレスチナ労働組合総連盟(PGFTU)を理解し尊重している。対等な社会的パートナーであり、対話を原則としている。パレスチナの労働運動は、PGFTUの下で展開している。政府の政策や決定が労働者の利益や目的に反する場合は、これに対抗していく。例えば、最低賃金の決定にあたっては、異議申し立ての他、対案を提示したり、関係省庁と論議したり、さらにはデモや抗議活動も行なう。これらを通じて指導的な役割を果たしている。その他、われわれは労働法を始め、社会保障制度など数多くの問題に関わり、組合員の利益のために行動している。

5.多国籍企業の進出状況について、また、多国籍企業における労使紛争について

 パレスチナには多国籍企業は存在していない。その理由としては、現在もパレスチナはイスラエルの占領下に置かれている状況であり、パレスチナ経済はイスラエル経済と結びつけられているからである。占領の影響はパレスチナの労働市場にも影響を及ぼし、失業の悪化や貧困、賃金の低迷、雇用機会の喪失などが生じている。多国籍企業ではないがパレスチナにおける大企業は公共部門のサービス企業が多く、例えば携帯電話サービス会社のジャウワール社のように、多数の労働者を雇用している企業は国営企業に限られている。

 

6.パレスチナが国連のオブザーバー国家として承認されたことは、今後労働運動にどのように影響していくか

 パレスチナは、国連のオブザーバー国家資格を国連総会で取得した。これにより、あらゆる慣習法や国際憲章の適用を受けることが可能な政治体制として承認された。今後パレスチナが国際機関に加盟することや、国連の国際条約への参加が求められていくことになると思う。
 現在も続いているイスラエルの占領状態について、国際的な組織への加盟を通じて、法的な審判の下に置かれるべきと考えている。また、パレスチナ国民全体、特に無法状態と不公正に苦しめられている労働者階級に対し、社会的・経済的な状況の変化がもたらされることが期待されている。
 今日まで組織的な暴力行為やイスラエルによるテロ行為などの問題も、この加盟を通じて解消の方向に向かっていくことが期待される。また、オブザーバー国家取得を受けて、政府は失業や貧困の拡大を阻止するための計画を策定し、社会保障関係の法律の施行に向けた取り組みを行なうことも求められている。また、国際社会に対しても、占領の終結に向けてあらゆる方面からパレスチナ国家を支援するよう求めていきたい。イスラエルの占領当局は、入植活動を行ない、本来パレスチナ側に与えられるべき利益を収奪するなど、その他にも非常に多くの放漫な行動をとっているのが現状である。このためPGFTUは、労働者の保護や社会・経済状況の改善をめざして、法律の整備や労働者の利益の確保につながる計画に取り組む体制を整えていく必要がある。