2010年 パレスチナの労働事情

2011年1月28日 講演録

パレスチナ労働組合総連合(PGFTU)
イブラーヒーム モハマド ズワイブ(Mr.Ibrahim Mohamad THWAIB)

食品産業労働組合国際局長兼PGFTU執行委員

 

1.当該国の労働情勢(全般)

パレスチナにおける労働情勢について以下に項目的にまとめるが、問題はイスラエルによる占領である。パレスチナでは賃金も低く低迷しており、市民の購買力にも影響を与え、経済だけではなく、すべての社会における危機的な状況が深刻化しており、いつ爆発するかわからない状況にある。

  • イスラエル占領当局の諸措置(隔離壁、検問所、市民の拘束、土地の没収、深刻な貧困、不安定な生活状況など)の結果として危機的な状況にある経済。
  • 占領当局の諸措置が移動と労働の自由に及ぼす影響。
  • 青年層の失業率の高さ。特に20~24歳層では44.6%に上る(2010年第3四半期労働力調査、中央統計局)。
  • 住民数に占める労働力人口の割合は41.5%(2010年第2四半期)。
  • 労働市場における女性の参加率は15.2%、男性は67.1%。
  • 公営部門に従事する労働者の割合は23.5%。
  • 民営部門に従事する労働者の割合はヨルダン川西岸地区で62.3%、ガザ地区で80%。
  • イスラエル関連の施設で働く労働者の割合は13.6%(すべてヨルダン川西岸地区)。
  • 農業部門に従事する労働者の割合はヨルダン川西岸地区で15.4%、ガザ地区で7.8%。

2.労働組合が現在直面している課題

労働組合が直面している主な課題は、次の通り。

  • 社会保険が存在せず、最低賃金の設定も行われず、自治政府も労働者の尊厳ある生活を保障するための政策方針を有していないこと。
  • 社会対話/団体交渉。
  • 職場の安全と衛生の欠如。
  • 労働市場の不安定な状況。
  • 労働法の条項が履行されていないこと。
  • 職場、工場の規模が小さく、政府の監視が行き届かない。
  • 労働者(特にイスラエル関連施設の労働者)の状況が不安定であるため、労働組合の組織化が困難であること。

3.課題解決に向けた取り組み

上記の課題解決に向けた取り組みでは、まず社会対話の実施、そして団体交渉が挙げられるが、以下にまとめる。

  • 圧力の行使や関連組織との相互支援、ネットワーク作りに向けたキャンペーンの展開(最低賃金設定と社会保護のためのキャンペーン。開始日時は2011年1月4日)。
  • 最低賃金設定に向けて政府と事業主に圧力をかけるための50万人署名キャンペーン。
  • 職場の安全と衛生のためのキャンペーン。
  • これらの課題に関する戦略の策定。
  • 労働者に対する啓蒙活動。
  • 労働組合組織率の引き上げと組合の強化。

4.ナショナルセンターと政府との関係

ナショナルセンターと政府との関係には、団結・協力と対立・闘争の側面がある。団結・協力では、社会対話の実施や労働政策委員会の活動、部門別の各種戦略の策定における社会的パートナーとの協力(雇用、労働市場のニーズ)である。
対立・闘争では、不当な法律・法制への反対、最低賃金設定の要求と社会保険法撤廃への反対、労働者の権利に抵触する税法への反対(退職金課税法)などである。

5.多国籍企業の状況

 地域情勢の不安定による投資環境の不在のため、パレスチナに多国籍企業は進出していないが、以下のような問題点が存在する。

  • 国際/二国間の通商協定・貿易協定の締結。
  • 製造業が存在しないこと。無秩序な輸入の結果としての労働機会の喪失。
  • 原材料が不足しており、またイスラエル経済に依存しているため、製品価格が労働者の賃金や個人の収入と適合しないほどに高騰している。
  • 結果としてパレスチナ市場の消費市場化。