2012年 クウェートの労働事情

2013年1月25日 講演録

クウェート労働組合連盟(KTUF)
サバーハ イード アルアージミ(Mr. Sabah EID ALAZEMI)

クウェート労働組合連盟(KTUF)労働文化センター所長

 

1.労働情勢(全般)

 現在クウェートの労働組合運動は、多くの問題に直面している。その一つは、2010年に議会で可決された民間部門を対象とした新たな『労働法』に関するものである。クウェート労働組合連盟(KTUF)は、この法案に対し35以上もの修正を働きかけた結果、最終的な法案の採択に至った。この法案により、多くの成果が労働者階級の隅々まで及ぶこととなった。中でも重要なのが、労働者の権利、成果の保護を保障したことや社会的・経済的な保障を拡充したことである。これにより民間部門への労働者の参入が一層促進されることになった。さらに、これまで不正や搾取にさらされてきた外国人労働者に対し、ディーセントワークを保障し、必要な社会的保護を付与し、労働において一層の報酬が得られるようになった。
 KTUFはこの新たな法律を通じて、さらに多くの成果を得ている。最も重要なことは、ナショナルセンターをひとつに限定することで、労働者階級の一体性を法的に保障したことである。また、組織化の自由、組合専従者の権利も認められ、労働組合として国内外のさまざまな活動に参加するための有給休暇取得の権利などについても盛り込まれた。
 また『労働法』第9条は、労働のための公的機関の設置や保証人制度※の廃止について定めている。この保証人制度は、これまでクウェート国民にとって大変な重荷となっており、国際社会でのクウェートの評判を貶める欠陥となっていた。この制度は、国際労働機関(ILO)の定める水準、原則および協定に反するばかりではなく、人権に関する法律やその他の権利、一般的な自由および民主主義にさえ反していると言える。人々の自由を制約し、不法に人々を利用するもので、KTUFとしては、外国人労働者に対する保証人制度の撤廃を定めるこの法律を適用すべきときが来たと考えている。
 昨今、クウェートでは議会選挙が終了し、去る12月には新たな内閣が組閣された。この新たな内閣に求められることは、これまで述べたような重要な課題を最優先事項と位置づけ、アラブ諸国や国際社会の関係機関からのクウェートに対する厳しい批判の声に応えていくことである。こうした関係機関の中にはアラブ諸国の労働機関の他、ILOさらには国際労働組合総連合(ITUC)や国際移住機関(IOM)、人権に関する機関などが含まれている。
 クウェートの労働運動が直面するふたつ目の問題は、2011年の夏よりKTUFが行なってきた一連のストライキや抗議行動に関することである。石油産業および政府機関など公共サービス部門を始め、さまざまな産業分野がわれわれの抗議行動に参加した。これらの労働者および組合員の具体的な要求は、賃金の引き上げであり、さらには高度の専門性を持ついわゆる「高度人材」に対する手当、ボーナスの引上げ、社会保障給付の引き上げ、医療・教育・社会保険給付の削減への反対であった。しかし当局側は、こうした要求を無視し、検討の対象にさえせず、これらの要求をすべて休眠状態にしてしまった。一部の要求については実現したものもあったが、残りの要求についても実現させるため、KTUFは現在も交渉を続けている。

2.労働組合の取組み

 KTUFは、労働者の抱える問題を交渉によって解決することを原則としている。そのため、KTUFは共同委員会の設立を呼びかけている。この委員会には、KTUFの他、構成組合、政府、市民サービス機関などが参加し、労働者からのあらゆる要求について検討し、その解決に向けた適切な手段を模索していく。こうしたことを通じて、安定した労使関係を構築し、クウェートの経済・社会の発展をめざしていく。
 一方、政府はこれと並行して、労働市場の重大な欠陥を改善するための明確な仕組みを作ることや長期的かつ総合的な経済開発の戦略を策定することが必要である。その戦略とはすなわち、収入源の多様化を基礎としつつ、クウェートが中東地域における貿易・金融・基礎的サービスの中心としての役割を果たすことである。そして上昇を続ける失業率に歯止めをかけ、クウェート経済が抱える欠点を解消し、汚職の撲滅をめざしていかなければならない。
 さらに現在クウェートで深刻になっている物価の高騰への対策にも取り組むべきである。そのため、賃金および高度人材手当の一層の拡充、物価高騰の兆候に対する科学的な研究の実施、定期的な賃金の見直し、関連する法律、特に2年ごとに定期的な見直しを定めている82/49号という法律の履行の徹底が政府に求められていることである。
 
 ※保証人制度
 外国人労働者を雇用する場合に、雇用主が保証人(カフィール)となる制度。外国人労働者は雇用主の承認なしに雇用主を変更することができないため、雇用主はこの制度を利用して労働者を監視下に置き、給料を天引きしたり、契約外の労働を強制したりするなど、雇用主と労働者の隷属的関係が問題となっている。