2009年 ヨルダンの労働事情

2009年12月11日 講演録

1.労働事情(全般)

人  口 5,880,000人(2007年)
労働組合 ヨルダン労働組合総同盟(GFJTU)
加盟16組織 1地方組織  組合員数 125,000人
労働力人口の11%を占める公営部門の労働者は組合結成禁止

 ヨルダン経済はこの5年間、順調な成長を実現してきたが、現在多くの経済的問題に直面している。なかでも国家の財政赤字は最も重大な問題の1つで、2009年初めにはGDPの10%以上に達すると見られている。また莫大かつ増加傾向にある貿易赤字による国際収支赤字も問題となっている。このためヨルダン経済は、ますますアラブ諸国および世界各国からの援助に依存し、国債依存度も上昇している。国債の規模は2008年初めには93億9,400万ヨルダン・ディナール(GDPの62.4%)に達した。
 ヨルダン経済はサービス経済であり、サービス部門が経済成長の主要な原動力となっている。2008年のGDPに占める個人所得の割合は年間平均で3,400ドルだった。またヨルダン国民の経済活動参加率も低く、総人口の39.5%である。ヨルダンの労働力人口は134万3,000人で、今なお失業率が高く、2008年には12.7%、2009年上半期には13.0%に上った。世界的経済危機の影響により今後も増加する見通しである。
 平均賃金は低く、ヨルダン労働者の約90%は月給300ディナール(422ドル)未満であり、最低賃金は150ディナール(200ドル)である。
 2009年1月から8月には数回にわたって労働者の抗議集会が行われた。いくつかの協定が締結され、賃金・手当の上昇と健康保険の条件改善、3か月分の賞与などの成果が得られた。

2.労働組合が現在直面している課題

  1. 民間部門の労働者の大半は健康保険を受けておらず、労働法で定められた労働時間(週48時間)を上回る労働を強いられている。
  2. 小企業の労働者や非正規(非組織)部門の労働者の大半は、年次休暇も病気休暇も与えられない。
  3. 安全な労働環境が整っていないため、労働災害も発生しやすい。
  4. 児童労働が増加しており、労働省によると労働に従事する子供の数は約3万3,000人に達している。
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  6. 女性の経済活動参加率は非常に低く、実質的な女性の労働参加レベルは地域において最低レベルで、労働力全体の約14%となっている。その大半は教育、保健、社会福祉部門に従事している。女性労働者は特に民営部門において、労働機会や賃金・昇進機会の面で差別されている。2008年の労働省年次報告によれば、女性の失業率は24.4%であり、男性の10.1%に比べて高い。
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  8. 外国人労働者数が増加しつつあり、労働省から正式な就労許可を取得した労働者の数は30万3000人に及ぶ。男性が88%、女性が12%を占め、労働省に登録された外国人労働者全体のうち68%がエジプト人である。しかし、労働省に登録されていない外国人労働者は10万人に及ぶ。
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  10. 国際労働機関が承認した諸条約のうち24条約を批准しているが、労働組合活動の自由と団結権の保護を謳った第87号条約は現在に至るまで批准していない。

3.その問題解決に向け、どのように取り組もうとしているか

  1. 労働法制に関しては、労働組合運動は団体交渉の明確な基本原則、不当解雇の賠償金の増額、労働組合設立の自由(特に公営部門)など、国際的な労働基準に見合った労働法の改正を行うよう要求している。
  2. 現在予定されている社会保障機構法の改正について、広範な対話が行われている。同機構に登録されている人数は2008年で66万2000人であり、労働力の約40%はいかなる年金制度や社会保障制度にも属さない。GFJTUは社会保障機構法案について労働者層の利益に資する画期的なもと考えているが、改正案の一部に関しては留保の立場を示している。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 労働法には新規の労働組合設立の障碍となる条文が含まれており、ヨルダンでは30年以上前から新しい労働組合は設立されていない。GFJTUの資金は全面的に政府および社会保障機構が拠出している。

5.多国籍企業の進出状況

 経済特区では多国籍企業が参入しているが、労働者の権利はまったく公平に守られていない。投資家たちの利益を得るためだけの場所となっている。

2009年2月25日 講演録

ヨルダン労働組合総同盟(GFJTU)
ハザール マラッラ(Ms. Hazar Malallah)

電力労働組合女性委員会委員

 

1.一般労働事情

 ヨルダンの雇用状況は安定していると言える。使用者に対して、労働組合が労働者を代表している。組合は団体交渉を通じて、労働条件の改善、労働者の生活水準向上のために努めている。官民ともIT技術の活用が盛んに行われている。この分野のプロフェッショナルの需要は高い。

2.労働者が直面している諸問題

 世界経済のクローバル化であり、そのヨルダン経済への影響である。一部の企業は、労働省の要請を受け入れて構造調整を実施し、大規模な解雇を行った。その際に適用された法律はヨルダン労働法第31条である。

3.問題解決に向けた取り組み

 総同盟としては、労働省、使用者側団体と協力して労働者の雇用維持に最善を尽くしている。総同盟は社会的パートナーである政府、使用者、労働者と協力して、労働法制を国際基準に合致するよう改正に努めている。ヨルダンは24のILO条約を批准しているが結社の自由87号条約はまだ批准されていない。社会全体としては消費中心の社会生活を産業型社会に変革し、ヨルダンに存在している天然資源の利用に投資する。労働権の保障、雇用機会の確保に努め失業をなくす。生産性の向上、生産手段の改善と職業訓練方法の開発・発展をはかる。

4.労働運動と政府の関係

 ヨルダン労働総同盟と政府の関係は相互の尊敬に基づき良好である。労働法には国が労働組合の内部に介入できるとの条項があるものの、これまで政府が総同盟の内部に干渉したことはない。

5.多国籍企業

 多くの多国籍企業がヨルダンのさまざまな産業分野で操業している。おもな部門は、通信、鉱業、金属、交通等である。しかし、これらの企業の多くは労働者を任意もしくは強制的に解雇している。