2016年 バーレーンの労働事情

2016年11月11日講演録

バーレーン労働組合総連盟(GFBTU)
アブドゥルワヘド・モハメド・エブラヒム・アンナジャール
組織化担当副事務局長
フセイン・アブドゥラ・アブドゥルナビ・アフマッド
バーレーン鉄鋼労働組合 委員長

 

1.当該国の労働情勢(全般)

  2014年 2015年 2016年(見通し)
実質GDP(%)
(出典元)
4.5%
(中央銀行)
2.9%
(中央銀行)
2.9%
(中央銀行)
物価上昇率(%)
(出典元)
2.8%
(中央銀行)
1.8%
(中央銀行)
4.8%
(中央銀行)
最低賃金
(出典元)
なし なし なし
労使紛争件数
(出典元)
400件
(GFBTU)
300件
(GFBTU)
350件
(GFBTU)
失業率
(出典元)
(        ) (        ) (        )
法定労働時間
(出典元)
8時間/日
(労働法)
48時間/週
(労働法)
時間外/割増率
午後7時前125%
午後7時後150%
(労働法)
休日/割増率
150%
(労働法)

*バーレーンでは、最低賃金が法律で設定されていない。バーレーン人に対しては労働省が提案している月額700ドルが適用されるが、外国人労働者は、使用者次第の金額となる。
*労使紛争は、ほとんどが単位組合のレベルで解決されており、上記に記載されているのは解決できずにGFBTUに報告された数字である。
*法定労働時間は、公共部門と民間部門では異なっており、上記に記載されている時間は、民間部門の数字である。

 インフォーマル労働、非正規労働の典型例は、以下の通りとなる。

  1. 大学を卒業して、専攻分野が労働市場の需要と異なるため公共・民間部門で一時的雇用される労働者。専攻分野に見合った仕事につけない問題がある。
  2. 民営部門で定期的(3ヵ月〜1年)に契約が更新される労働者。一部の企業ではこのような雇用の仕方を行っており、安定した仕事につきたい労働者からすると問題である。
  3. バーレーン国籍以外の外国人労働者で、何らかの理由により国内滞在資格を喪失し、 滞在許可なく周縁的な労働(自動車の洗車など)に従事する人々。要するにあらゆる仕事で契約なしに従事する労働者のことで、「フリービザ」と称される。フリービザの労働者を雇用すると労働者1人当たりに対して2,500ドルの罰金が課される法律がある。

2.労働組合が現在直面している課題

  • 労働組合加入率の向上
  • 外国人労働者の組合加入促進。バーレーンでは、約56万人の外国人労働者が就労しており、バーレーン人労働者は16万人程度である。外国人労働者の組織化は困難であるが、GFBTU加盟の労組では、外国人労働者の組織化に成功しており、今後もさらに努力する予定である。また、政府はGFBTUに対抗するため御用組合を設立し、使用者側に利益となる活動をさせている。そのため労働者は、GFBTU加盟労組に加入すると解雇するなどと裏で脅されている。また、軍や警察にも外国人労働者が多く働いている。外国人労働者の契約は2年間で、68才に達するまで更新し続けることが可能であるため、帰化する人が非常に多くなっている。
  • 2011年の「アラブの春」後の解雇措置が残した影響への対応。
    大量解雇された労働者の多くは復職できたが、まだ復職できない労働者も多く、政府とGFBTU、ILOの三者間で合意も結ばれたが、この問題は解決していない。
  • 不当行為から組合員を守ること。
  • 労働者のジェンダー、宗教的信仰、国籍による差別への対策。
  • 組合指導部における女性と青年の参加促進。
  • 政府による財政支援からの独立。政府がすべての団体を財政支援しているため、GFBTUも支援を受けている。しかし、意思決定に関しては独立を保持している。
  • 法律による最低賃金の設定。
  • 国際労働条約の批准。すべてのILO条約を批准することを目指している。特に87号条約(結社の自由と団結権)と98号条約(団結権及び団体交渉権)を批准していないことが問題である。結社の自由については、民間部門では認められているが、公共部門では認められていない。公務員庁が2003年に「公共部門で労働組合を設立することを禁止する」という通達を発令しており、GFBTUは、裁判所に再提訴している。

3.その課題解決に向け、労働組合としてどのように取り組もうとしているのか

  • 職場レベルでの使用者との交渉。組合が使用者と交渉し、さまざまな阻害や問題が生じた場合は、GFBTUが介入して問題解決を行う。
  • 国レベルでの政府および使用者団体との交渉も毎月の委員会を通じて実施。
  • 議会両院(任命による評議院と代議院)との対話とコミュニケーション。GFBTUは、両院と会合を設けて話し合いを行っているが、結果的に政府の声が強くなってしまっている。
  • 労働者を送り出している国、特にアジア諸国の労働組合との協力。

4.その他

 バーレーン王国は、他の湾岸アラブ諸国と同様に、収入源の多様化と、主要な収入源としての石油部門への依存の縮小化を図り、石油価格が大きく変動する中で、工業化をめざす必要がある。
2015年のGDPに占める石油部門の割合は20%であったが、これは理想的な状態というわけではなく、自国労働者に依拠し、彼らを指導的な地位に就かせるべくエンパワーメントを行うことが必要である。