2015年 バーレーンの労働事情

2015年12月4日講演録

バーレーン労働組合総連盟(GFBTU)
モハンマド・ジャシム・アルヤーン(Mr. Mohamed Jassim Aryan)

湾岸アルミニウム圧延製造所労働組合委員長

 

1.労働情勢(経済指標・最低賃金・ナショナルセンター)

 バーレーンの実質GDPは、2013年3.11%、2014年4.5%、そして2015年が4.5%の見通しとなっている。また、物価上率については、2013年2.2%、2014年3.5%、そして2015年3.6%の見通しとなっている。最低賃金(月額)については、2013年400(約12万9744円)~250バーレーンディナール(約8万1090円)、2014年350(約11万3526円)~250バーレーンディナール(約8万1090円)、そして2015年350(約11万3526円)~200バーレーンディナール(約6万4872円)となっている。
 ここに参加のナショナルセンターはバーレーン労働組合総連盟(GFBTU)で、その結成は2004年、構成70組織、組合員数約3万人となっている。

2.労働組合が現在直面する課題

 バーレーンが抱えるもっとも重大な労働課題(問題)は以下の5点である。その課題をあげれば、1つは、ILO条約87号と98号が批准されていないこと、2つには、政府部門に労働組合結成・活動が許されていないこと、3つには、三者構成による社会的対話ができていないこと、4つには、1つの事業所に複数の労働組合が存在していること、そして、最後5つには、労働組合への参加が非常に弱いということ、以上である。
 GFBTUとしては、これらの課題解決に組織を挙げ立ち向かう決意である。

(1)ILO条約87号と98号の批准課題について 
 バーレーン政府はILO条約87号と98号を批准していない。87号条約は、1948年7月9日、ILO大会が採択した労働組合結成の自由をうたったものである。また、98号条約は労働組合を組織して団体交渉を行う権利に関するものであり、いずれも基本的な権利を保障するものである。
 ちなみに、バーレーン政府が現在批准している条約は次の通りである。1957年の第105号条約「強制労働の禁止」、1958年の第111号条約「差別待遇(雇用及び職業)の禁止」、1965年の第8号条約「あらゆる形の差別禁止」、1999年の第182号条約「児童労働の禁止」である。

(2)政府部門における労働組合結成と活動の自由という課題について
 現在、政府部門での労働組合活動は許可されていない。バーレーンは王国であり、王様自身は憲法に従い、政府部門における労働組合の結成並びに活動を許すとしている。しかし、2003年に公務員局令第1号が出され、政府部門の労働者の労働組合結成が禁止されたままとなっている。GFBTUは何度か声明を出し、政府がこの公共部門における労働組合結成を認めるように求めるとともに、公務員局にも働きかけを行ってきた。また、法的措置として大審院に訴えもした。だが、残念なことに同院はこの訴えを棄却した。その後、高等控訴審裁判所にも控訴したが、この控訴審裁判所でも訴えを退けられた。そこで、GFBTUはさらに破棄院に同趣旨を訴えたものの、破棄院も管轄でないという理由でこの上訴を棄却した。しかも、裁判費用はGFBTUが負担するようにとする判決まで下された。
 こうした厳しい状況下ではあるが、GFBTUと法律専門家は、労働組合法第10条が、憲法第27条の原則に照らして拡大解釈できると考えている。それは、憲法の第27条がILO条約87号、98号と同じ原則に立つものだからである。

(3)三者構成による社会的対話の活発化という課題について 
 国レベルで、共通の課題について話し合うべき政労使三者構成の対話ができていない。過去(2011年)に唯一三者対話が行われたことがある。それは、バーレーンで騒擾事件等があり、大変混乱した年に行われた労働法改正の時であり、生産者側の合意と衆議院の議決を経て、三者協議で三者が合意した多くの内容が新しい法律に組み込まれた。(2012年)また、これまでに労働組合が成果をあげてきた分野もある。大企業における使用者と労働組合の間の二者協議に成功したことである。この団体交渉の結果、より多くの権利が獲得されている。また、内閣府代表とGFBTUの間での労働及び労働組合に関する臨時協議は時折開催されているが、残念ながらGFBTUと労働省の労働及び労働組合に関する二者協議は中断したままとなっている。
 いま一つの問題は、三者で構成されるべき保険機構、それから年金機構に労働組合が呼ばれていないことである。さらに、2011年の事件で解雇された、およそ4800人の労働者の権利回復(復職問題)が、ILO指導のもと労働組合と政府の間で話し合われ、合意事項もあったはずだが、全く実施されていないという問題の解決も図らなければならない。

(4)1つの事業所における複数労働組合の存在が引き起こす問題・課題について
 1つの事業所に複数労働組合が存在することで団体交渉に悪影響を及ぼしている。この問題は、2003年からあった労働組合法が、2011年事件を受けて2012年に改正されたことに端を発している。従業員100人~300人程度の小規模な会社に複数の労働組合が存在することになった。しかもその中には、政府寄りの労働組合であったりイエロードッグと呼ばれるような労働組合も出てきた。こうした状況の中、労働組合とは無関係な人が殺されるというような非常に危険な状況も起こり、政府と協議もしてきたが、バーレーンでは複数労働組合制への移行の流れは止まっていない。ただ、少数組合員の労働組合でも、それぞれの民主的な考えに基づいて行う労働組合活動はいいとして、少数であり、複数であることが及ぼす団体交渉を弱める悪影響について考えていかなければならない。

(5)労働組合への参加を高めるという課題について
 労働組合への参加が弱いということにはいくつかの原因が考えられる。もともとバーレーンは労働組合活動の歴史が浅く、10年ほどしかないのも原因の1つだろう。だが、なによりも労働者層のサイズが小さいにもかかわらず、ナショナルセンターが2つも存在することに大きな原因がありそうだ。また、外国人労働者が多くバーレーンで働いているが、これらの人は労働組合活動を行うと雇用主から首を切られるということも原因しているだろう。さらに、契約労働者については、契約が短期であることから労働組合活動に入るメリットがない、あるいは入るといじめられるというようなこともあり、加入は進まない。加えて、小規模な会社においては、会社経営者が労働組合結成・活動を認めないと妨害することもある。
 様々な原因はあるが、これらを解決すべく着実な活動を展開していきたい。

*1バーレーンディナール=324.36円(2015年12月4日現在)