2013年 バーレーンの労働事情

2013年10月4日 講演録

バーレーン労働組合総連盟(GFBTU)
ハサン・ハルワージー(Mr. Hasan Abdullah Al Halwachi)

バーレーンガス労働組合 委員長

 

1.2011年大規模反政府デモの解雇者の問題

 バーレーンでは、2011年に大規模な反政府運動のデモが起き、参加した約4500人の労働者が大量に解雇された。これに対して、バーレーン国王が直接対処に乗り出し、解雇問題の調査委員会を立ち上げ、専門家による調査を行なった。その結果、デモに参加した労働者は単に意見を表明したに過ぎず、解雇は不当なものであると結論づけられた。
 この問題は国際労働機関(ILO)の場でも協議され、イギリス、フランス、オランダなどのヨーロッパ諸国も大きな関心を寄せた。その結果、さまざまな労働関係の改善が進展した。
 また、労働組合としても、使用者団体、政府、その他の社会勢力と対話の場に臨むことで、2011年の解雇者の問題を始め、さまざまな労働問題を協議することになった。ILOの場でもさまざまな働きかけが行なわれ、こうした結果が結実して10月6日、新たな法律の施行が予定されている。

2.バーレーンにおける日系企業の解雇問題

 バーレーンにおける日系企業の現地法人において、労働組合の委員長が意見の表明を行なったことを理由に、不当に解雇されるという問題が発生した。この問題は、司法の場でも争われ、裁判所はこの委員長を職場に復帰させなければならないという判決を下した。

3.バーレーンの労働情勢全般

 バーレーンでは、労働組合の結成は民間部門だけに限られており、国営企業、公営企業を含めた公的部門では労働組合を結成する権利が認められていない。
 民間部門の労働組合の活動状況を見ると、大企業については、団体交渉を通じてすでに恵まれた成果を上げており、労働者の権利もおおむね守られている。一方、中小企業については、そもそも規模が小さく、それほど人数が多くないこともあり、経営者側による恣意的な行為が見過ごされている。中小企業の労働者の権利を保護するためにも、産業別組織の強化が必要である。その枠組みの中で、中小企業の労働者の権利保護・擁護のための活動を強化していかなければならないと考えている。

4.新労働法の成立とバーレーン労働組合総連盟(GFBTU)の取り組み

 GFBTUにとって、『労働法』の改正への取り組みは非常に重要であった。『労働法』は1976年に制定され、バーレーンの労働法制の中心的な法律であったが、時代の変化とともに改正の必要が指摘されてきた。GFBTUは、政府や経営者側などとの協議を重ね、改正に関する意見勧告書を、2006年に政府の開発評議会に提出した。バーレーンの皇太子が主催する開発評議会は、政府の中で経済をはじめとする重要な問題を協議する最もハイレベルな機関で、委員には経済大臣、貿易大臣、労働大臣他、経済開発に関する主要な閣僚など、関係者のすべてが加わっている。
 『労働法』改正については下院・上院でも議論が白熱しており、2011年の反政府デモなどの影響もあり、法案の採択・採決に至るまでには、多くの時間を要した。ようやく2012年8月に法案が可決され、新しい『労働法』が成立した。
 この新『労働法』にはさまざまな改善点がある。一番大きい改善点は、女性労働者の権利が改善されたことである。例えば、女性の産休は、産前・産後の有給休暇が45日であったのが60日に延長された。また、子供が6歳になるまでという条件で、女性労働者は育児休暇を取得することができることなどが明記された。
 女性の権利拡充の他、団体交渉の権利について、国際的な基準に沿うような労働者の権利が、具体的にはっきりと明記された。これにより、労働者の自由は大きく前進したものの、労働者が持つべき権利に関する内容については若干不満が残るものもある。
 また一方で、雇用における差別を撤廃して平等な機会を実現することについては大きな進展がみられた。2000年にILO第111号条約(差別待遇:雇用・職業)批准の影響もあって、新しい『労働法』の中で雇用の機会や待遇の面での平等に関して大きな進展を果たした。しかしながら、パートタイム労働者や家庭内労働者の労働環境の保護については、事前の三者協議等の場ではさまざまな内容が盛り込まれていたにもかかわらず、法制化の際には見送られてしまった。