2012年 バーレーンの労働事情

2013年1月25日 講演録

バーレーン労働組合総連盟(GFBTU)
報告者: ジャアファル ハリール イーサ(Mr. Jaafar Khalil ISA)

バーレーン労働組合総連盟(GFBTU)副会長

 

1.民主化運動の情勢とその課題について

 バーレーンでは、労働者が権利を要求する行動に参加したことを理由に、4500人の労働者が解雇される事件が起こった。
 チュニジアやエジプトに始まった中東・アフリカ北部地域の民主化革命の動きは、バーレーンにも波及した。メディアを通して、若者たちの間に広がり、変革を求める運動やデモへの参加が呼びかけられた。そして2011年2月14日、全国25ヵ所でデモが行なわれ、治安部隊が出動した。治安部隊の発砲による死者も出て、翌日15日の犠牲者の葬儀に対しても治安当局の弾圧が行なわれ、青年1人が死亡した。事態が深刻化していく中で、民衆は首都マナーマの真珠広場に集まり、座り込み集会を始めた。夕方には、国王がテレビ演説を行ない、犠牲者を追悼するとともに、抗議行動を事実上容認することを発言した。しかし、2月17日には再び警官隊が真珠広場に突入し、デモ隊の強制排除を行ない、死傷者が出ることとなった。2月19日には軍が出動し、実弾による死傷者も出る事態となり、バーレーン労働組合総連盟(GFBTU)は、ゼネラルストライキを呼びかけた。その後、改めて国王がテレビ演説を行ない、集会を行なう自由について正式に認めるとともに、政府、反政府勢力、野党とで対話を行なうことを呼びかけた。しかし3月11~12日にかけて、国内各地の町や村の入り口に検問所が設置され、さらに湾岸協力会議(GCC)※が「半島の盾」軍をバーレーンに派遣した。労働者はこの検問所のために通勤することも難しくなり、また、実際に治安部隊に暴行を受けることもあった。GFBTUは3 月14 日、改めてゼネラルストライキを呼びかけたが、翌15日には、国民安全宣言という非常事態宣言が発動され、その状態は9日間にわたって続いた。その後、副首相がストライキの中止を呼びかけたが、GFBTUはその条件として労働者が職場に向かうための安全を保証することを求めた。その結果今度は、当局側による大量解雇が始まった。医師、看護師、教師、そして大規模な工場へと対象は広まっていった。これは単に、ストライキやデモに参加した者を解雇するというものであった。
 GFBTUでは、この一連の事件で3141件の不当解雇の事例について記録を取り、その上でILOやITUCなどの関係各国際組織に問題の深刻さを知らせるとともに、支援を要請した。ILOからは調査団が派遣され、労働者、労働組合、労働省などと会見した。バーレーン国内だけでは、解決は難しかったが、アメリカやフランスを始め、その他の12組織からもILOに対して提訴されたことで、解雇された人々の70%は職場に復帰することができた。その後も交渉は続いたが、残りの30%の解雇労働者のうち、職場に復帰できたものは10%に過ぎなかった。
 GFBTUの調査によると、解雇の対象になった労働者の年齢は、20~60歳にわたっており、その平均年齢は35歳である。労働者1万人当たり152人が解雇されている。中でも、アルミニウム会社のアルバ社が最も多く、18%が解雇された。また、国営石油会社バルコにおいては12%で、国営会社における解雇者の数が最も多かった。

※ 湾岸協力会議(GCC)
Gulf Cooperation Council。1981年設立。アラビア湾岸地域における地域協力機構。バーレーン、UAE,クウェート、カタール、サウジアラビア、オマーンの6ヵ国が加盟。「半島の盾」はその合同軍。

2.労働情勢(全般)

 バーレーンの労働情勢については、労働者の状況は部門ごとに異なるが、民間部門の大企業では、賃金や労働環境の面で良好と言えるが、小企業では厳しく、多くの問題を抱えている。また、政府系機関の職員等の公務員についてはきわめて良好な状態にある。

3.労働組合が現在直面している課題

 労働組合が直面している課題は、一つは、前述した2011年3月の事件で解雇された人々の問題とその影響である。二つ目は、家庭使用人(家庭内労働)の問題である。そして三つ目として、請負労働者、建設労働者の労働環境と権利の問題である。
 
(注)バーレーンの家庭使用人、建設労働者は、ほとんどがアジアからの外国人である。GFBTUは、外国人労働者の相談事務所の設置に取り組んでいる。

4.その課題解決に向け、どのように取り組もうとしているのか

 これらの解決に向けて[1]解雇された労働者を把握し、記録することと職場復帰に向けて支援すること。また、ILOに対して行なった提訴についてフォローアップを行なうこと[2]家庭内使用人(家庭内労働)の権利を保障するための法律を制定すること[3]請負労働者の安全・衛生等職場環境を改善し、賃金を引上げること。移民労働者の問題に対処するための特別委員会の設置すること――などを取り組んでいる。

5.ナショナルセンターと政府との関係

 各種の審議会、評議会等に関係省庁とGFBTU双方の代表が参加しており、ナショナルセンターと政府の関係は良好である。

6.多国籍企業の進出状況について、また、多国籍企業における労使紛争について

 バーレーンへの多国籍企業の進出は新しい現象であるが、これらの企業における状況は悪くはない。労働者と経営者の間で問題が発生することもあるが、GFBTUはその多くを解決している。