2015年 アフガニスタンの労働事情

2015年10月2日 講演録

アフガニスタン労働者全国組合(NUAWE)会長
マルーフ・カデリ

会長

 

 アフガニスタンは、天然資源が豊富な国で、銀、ガス、鉄など、さまざまな資源が産出されている。輸出品は伝統工芸品であるカーペットやキリムなどの毛織物、ドライフルーツ、麻薬、羊の皮や高価な宝石などであるが、輸出入の割合は、1対10で輸入が10倍となっている。
 現在の国の収入は、年間予算の25%を賄うことができるが、残りの75%は国際援助に頼らざるを得ない状況にある。
 人口は、一番詳しい統計で約3100万人、その6割が25歳以下の若者である。しかし、多くの若者は能力があるのに就職できない状況にある。また、教育を受けていない人の割合は70~75%であり、識字率は楽観的に見てもせいぜい25%である。国民の36%が1日の所得が1ドル以下の貧困状態にある。また今年は物価が18.39%も上昇しており、大家族で暮らしているので生活は悪化している。
 雇用状況は、80%が非正規労働者である。労働人口は1200万人で、その6割にあたる720万人がほぼ無職(半日以下の労働)で、300万人が完全無職の状態にある。残りの100万人が公共セクターで、80万人が民間セクターで働いている。
 最低賃金は1ヵ月5000アフガニー(約83ドル=約59万9450円)、1日180アフガニー(約3ドル=約360円)と公務員のみ法律で定められており、2013年から3年間まったく変わっていない。公共セクターで働いている労働者は、この法律の賃金や雇用がある程度保障されている。しかし、民間セクターで働いている労働者には最低賃金の制度がなく、使用者との間で正式な契約が存在していないため、賃金をはじめとした労働条件・雇用について一切保障されていない。 
 海外に出る労働者等は多いが、正式にアフガニスタンから派遣された労働者はいない。国内では、法的には外国人労働者は就労できないことになっているが、パキスタンや東アジアからの外国人労働者が不法に働いている。
 アフガニスタンの国民平均所得は2000年で、90ドル(約1万790円)であったが、2014年では654.83ドル(約7万8508円)まで伸びている。GDPは、2013年が205.4億ドル(約2兆4625億円)で、2014年は203億ドル(約2兆4338億円)、そして2015年は約208億ドル(約2兆4937億円)に達するだろうと考えている。
 政治状況は、トップが大統領で、国会議員は249人である。国会は、すべての法律を審査、認定、政府の執行承認、大臣の承認などを行っている。
 アフガニスタンのナショナルセンターであるアフガニスタン労働者全国組合(NUAWE)は1964年に結成され、徐々に拡大し、今では労働者をサポートするためのアフガニスタン最大の労働組合となっている。特に2011年からは組織拡大が進み、現在14万8337人の組合員が加盟している。そのうち4万4501人が女性で、残りの10万3836人が男性である。加盟産別業種は農業、公務、保安部隊、教育、情報・通信で、全国34州のうち、25州で739の労働組合が加盟している。大会は4年に1度で、次回の大会を2016年に予定しており、会長と中央執行委員などの役員を選出する予定である。
 アフガニスタンで労働者の権利を守るということは、[1]労働法をしっかり適用すること、[2]失業と貧困をなくすこと、[3]企業内の不正などをなくし、就労環境を良くすること、[4]労働者の能力を高めること、[5]男女の仕事の機会を平等にすること、[6]ストライキなどの権利を理解すること――などである。さらに労働者と使用者の労使関係を良くすることで、全体的に協力できる環境を作ることも必要である。
 労働組合の目的は、[1]労働者が自主的に参加することで知見を高め、生活と労働の状況を改善すること、[2]労働法がきちんと遵守され、労働者の権利を守ること、[3]労働者と使用者との間で雇用契約を結び雇用機会を拡大すること、[4]雇用差別をなくすことや適切な労働ルールを制定すること、[5]女性労働者や若者の権利を守ること、[6]15歳以下の子供の就労を禁止すること――などである。また国際的な労働組合との協力で、職場環境の改善や、社会的な平等などのために努力することである。
 国際的な労働活動は、国際労働組合総連合(ITUC)と国際労働組合総連合アジア・太平洋地域組織(ITUC-AP)に加盟しており、南アジア地域労働組合協議会(SARTUC)のメンバーでもある。さらに、日本のJILAF、アメリカのソリダリティー・センター、ドイツのフリードリヒ・エーベルト財団(FES)、スウェーデンのスウェーデン全国労働組合連盟(LO)や民間保険会社従業員労働組合(FTF)などの国際的な団体と協力することである。ドイツの組合や、トルコ、パキスタンの労働組合との協力関係も持っている。
 今日の労働組合の課題は、アフガニスタンの労働法が労働組合をサポートする内容になっていないことや、労働組合の組合員やリーダー達の知見や教育の機会が不足していることである。
 このような問題を解決するために、NUAWEは労働に対する知識の向上を目的とした研修会の開催や、労働法令がきちんと遵守されているか管理・監督して、関連機関に報告している。これまで首都や地方で組合員の為に25回以上の研修会やセミナーを開催してきた。
 また、労働組合が法的権利を受けられるように労働法を改正するために法律改正委員会のメンバーとして、交渉を行っており、その結果として2つの法律が改正される見込みである。さらに労働紛争に関する労働審判制度を設けるよう政府と交渉を行っている。
 近年アフガニスタンは、テロと不安定な社会情勢もあって、外国からの投資も少なく、社会インフラや技術者も不足している。企業活動としては、1600万ドル(約19億1824万円)が通信の分野で投資されて、通信関連企業が2001年から6社設立されている。インターネット分野の企業は44社で、20万人が働いている。またアフガニスタンには17の銀行があり、そのうち3つが公共系、9つが民間系、5つが外国資本の銀行である。テレビ局が86社、ニュース報道(通信社)が12社、ラジオ局が172社、新聞は2500社ある。
 アフガニスタンは世界の真ん中に位置する国で、パキスタン、イラン、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンと接しており、貿易の発展が期待できる国である。また、戦略地政学的な位置、鉱山、農業、川・湖などは、この国を発展させることのできる潜在力がある。しかしテロと不安定な政治状況や、技術者が少ないことなどで大きな制約があり、発展・成長できない状況にある。今後は電力不足を解消するためにもダムを建設など、社会インフラ建設が見込まれる。しかし、こうした資金不足が課題となっている。国民は社会インフラの整備を強く望んでいる。

*1ドル=119.89円(2015年10月2日現在)