2013年 ベネズエラの労働事情

2014年1月24日 講演録

ベネズエラ労働総同盟(CTV)
ジャミレス・カランチェ・メンドーサ(Ms. Yamileth Calanche Mendoza)

執行委員(国際協力担当)

 

1.世界的な労働組合組織率の低下、そのいくつかの原因

 まず、政権の迫害により2003年以来ペルーに亡命中のベネズエラ労働総同盟(CTV)のカルロス・オルテガ会長に代わり挨拶を申し上げたい。
 世界中の労働組合活動を見てみると、どの国も状況は同じく、労働組合の組織率低下に悩んでいるベネズエラも同じである。労働組合組織率の低下は、現在の世界的な労働組合運動のアキレス腱だと思っても差し支えない。組織率低下の原因として考えられるのは、技術革新などによる生産システムの変化、新たな技術が新たな生産方法や労働関係を生んでいる状況、社会の意識に対抗して個人の意識が成長していること、経済のグローバル化、変化する社会における労働組合運動の役割についての労働組合活動家自身の迷い、さらに労働組合組織内での官僚主義の横行、また労働組合活動の本部と草の根ベースの間の考え方の違いに伴う関係の破綻などがあげられるのではないかと考える。

2. 労働組合活動の弱体化の外的・内的要因

 ベネズエラの労働組合活動の弱体化には、外的と内的な要因が幾つかある。まず、外的な要因として、政権の独裁的な傾向が強まり、民主主義的な価値観が弱体化し、反労働組合的な政策や措置を通じて政権により執拗な攻撃が繰り返されていることである。次に、労働組合の役割に対して社会が間違った、ゆがんだ印象を持っていることである。内的な要因として、工業化以前の時代からの労働組合の機構、機能や行動が現在もそのまま残っていることがあげられる。企業が抱え込む労働組合(御用組合)が幅を利かせ、真の労働組合活動が阻害されており、労働組合自体も分裂している。

3. ベネズエラの就業構造

 ベネズエラの経済活動人口は、2013年の数値で1360万人強、そのうち就業人口が1250万人となっている。公共部門の就労者は、20%を超える250万人強で、民間が1000万人弱である。フォーマルセクターで働く労働者は59.1%にあたる約740万人で、インフォーマルセクターで働いている労働者は40%強の511万人に及ぶ。インフォーマルセクター労働者は、労働契約がなく、さまざまな社会的保障の範囲外にある労働者という意味である。ただし、年金制度は例外で、女性は55歳、男性は60歳で年金を受けることができる。

4. 最低賃金の改悪

 最低賃金については、2日前に改定されたばかりで、2日前までのベネズエラの最低賃金は正規の換算レートで月額507ドルであった。これが2日前の改定で283ドルに削減された。この数値は公式な交換レートで換算したものである。ベネズエラには米ドルのブラックマーケットがあり、その闇相場で換算すると、最低賃金は月額40ドルになってしまう。2013年のインフレ率は30%であったが、2014年のインフレ率は50%と予想される中で、最低賃金の改悪が行なわれた。

5. 失業率のまやかし

 また、失業率について、政府が公式に発表している失業率は6.6%となっているが、その計算にはかなりのからくりがあるため、実態を表していない。ベネズエラでは1日4時間ではなく、1ヵ月に4時間働けば、その人はその月に仕事があったとみなされる。従って、1ヵ月に4時間以下の仕事しかできなかった労働者でないと、失業者として認められない。政府の統計は完全なまやかしである。

6. ベネズエラの労働組合組織

 ベネズエラの労働組合組織状況については、ナショナルセンターレベル、産業別、単組などすべてを含めた数で労働組合数は2002年には2974組織であった。その後、年々増え続け、2008年には6124組織に増加した。2008年以降についてはデータがない状況が続いている。
 その中でナショナルセンターとして考えられている組織は、CTV(ベネズエラ労働総同盟)、Codesa(独立労組連盟)、CGT(労働者総同盟)、CUTV(ベネズエラ統一労働者連盟)、ASI(ベネズエラ労働者総連合)、UNT(ベネズエラ全国労働者連合)、FST(労働者組合戦線)の7組織である。その中で国際労働組合総連合(ITUC)に加盟しているのはCTVとASI(ヴェネズエラ労働者総連合)の2組織である。

7. 労働組合が置かれている問題点

 ベネズエラの労働組合が置かれている問題点は、労働協約の締結の拒否や、締結されても遵守されないという状況である。カラカス地下鉄労働組合の場合には、労働協約が一度は締結されたが、それが無効と判断されたため、その労働協約が真正で正当なものかどうか、保留の状態になっている。また、公共部門の団体協約480件が何の議論もされないまま放置されている。
 石油労働組合の場合には、指導部の選挙ができない状況に置かれている。理由は、指導部の選挙を行なうには、政府によって選挙管理委員会を認可される必要がある。しかし、候補者リストを作成しても政府に近い勢力でないと認可されないからである。
 労働組合幹部による抗議行動が非合法とみなされたり、場合によっては犯罪とみなされたりする。政府職員の雇用が不安定化している。1つの企業の中に、正当な労働組合すなわち民主主義的な手続きを経た労働組合と、企業が介入して作り上げた企業寄りの労働組合が並列して存在する場合がある。

8. 政権寄りのナショナルセンター

 民主的な労働組合運動に対抗する形で、中央政権を後ろ盾にして結成された労働組合組織が存在する。これらの組織は正しい労働組合としての形式をとっておらず、また労働協約なども結んでいない。単に集まっているだけの労働組合組織である。チャベス政権もマドゥロ政権も、労働組合運動にはまったく関心を示さず、むしろ労働組合の活動を憎んでいるのではないかと思われるくらい無関心である。

9. 労働組合の構造

 企業別労働組合の場合は、20人以上の労働者が集まれば労働組合とみなされる。業種別・職種別では40人以上の労働者が集まれば労働組合として結成できる。その上に、産別組織、もしくは部門別組織が構成される。

10. 労働組合構造の特徴

 ベネズエラの労働組合組織の特徴として、[1]正規労働者で構成されている[2]民間部門よりも公共部門のほうが存在感が大きい[3]主要手段として団体協約を企業内で締結している[4]歴史的に政党とのつながりが強い――などがあげられる。

11. 労働組合運動のジレンマ

 ベネズエラの労働組合活動の今後の課題は、政党とのつながりを別にして労働組合の政治的な参加を政治日程の中に組み込む必要があるということである。その方向で議論を進めている。1企業内、1産業内にさまざまな労働組合が並行的に存在している現状からいかに脱却するかの議論も進めている。建設業では労働組合間の対立、組合潰しなどの暴力などによって、ここ3年間に300人もの活動家が犠牲となり亡くなっている。
 CTVは、今年中に大会を開いて、CTVをはじめとする3つのナショナルセンターを1つの共同戦線にまとめる議論を行なうことにしている。労働組合に対する敵対心、労働組合内部の官僚主義、労働組合の並行的な存在を打破するのが目的である。