2016年 コロンビアの労働事情

2017年1月20日講演録

コロンビア労働組合連盟(CTC)
ローゼンベーグ・メロ・ピンソン

SINTRACAUCA (カウカ県砂糖産業労働組合)書記長

 

1.はじめに

 この報告の目的は、現在のコロンビアの労働事情や労働運動が直面している状況について説明することである。特に、就業率、失業率、インフォーマル労働率を中心に、DANE(国家統計庁)、ANDI(コロンビア経営者連盟)、ENS(ナショナル・ユニオン・スクール)などが提供する労働市場の主な指標の傾向に関する情報を使って説明する。また、コロンビアにおける組合運動の最近の状況や、その課題、対策などを説明する。

2.雇用状況

 さまざまな資料の調査結果をみると、近年のコロンビアの雇用状況は改善傾向にある。しかし、あまり期待が持てる状況とは言えないことが指標に反映されている(アレバロ、2015)。DANE(国家統計庁)によると、コロンビアでは2015年以降失業率が一けた台に下がったが(9.8%)、9年間で失業率は4%しか下がっておらず、2006年度と2015年度の12月から2月の3か月間で比較すると、0.6%しか下がっていない。また、2014年1には、失業率はラテンアメリカで最も高い率となっている。また、ENS(ナショナル・ユニオン・スクール)によると、コロンビア経済は過去数年間成長を遂げているが、労働市場はこの傾向と一致していない。就業率は改善し(2014年58.4%)、失業率は減少したが、インフォーマル労働率が依然として高く、労働力の不安定化、若者や女性の雇用状況、雇用の質、労働者が社会的に保護されていないことなどが懸念される。

12014年、ENS(ナショナル・ユニオン・スクール)によると、アルゼンチンでは失業率は7.3%、ウルグアイでは6.6%、チリ6.4%、メキシコ4.8%、ブラジル4.3%、ペルー3.7%。

 ENS(ナショナル・ユニオン・スクール2015年)によると、2014年の失業率は9.1%(失業者2,151,000人)と2005年以降最も低くなっている。また、就業率の統計を分析すると、2014年の就業率は58.4%であったが、個人に雇われている労働者(8,124,000人)や自営業者(9,163,000人)が多く、DANE(国家統計庁)によると、2015年8月と2016年8月の就業率は60.8%であった。
 業種別にみると、2005年から2014年の間に顕著なことは、第三次産業に属する業種での雇用の再編成がおこなわれたことであった。農業や工業は、雇用に関しては重要な業種であるが、雇用創出の面では減少している。コロンビアでは第一次産業は2005年には100人に対して21人の雇用を提供していたが、2014年には100人に対して16人となっている。2014年では、就業者のおよそ半数が二つの産業に従事している(47.2%)。一つは商業、ホテル業、レストラン業(就業者全体の27.2%)、もう一つは社会、コミュニティ、個人サービス(19.9%)である。これら二つの産業に就業者が集中しているが、従事している労働者の最低限の労働の権利が尊重されておらず、多くの労働者が総合社会保険制度に加入できず、低い賃金で働いている。こうした産業の特徴はインフォーマル労働であり、就業者の三分の一以上がインフォーマル労働となっている。
 DANE(国家統計庁)によると、コロンビアのインフォーマル労働は、主な13都市では過去3年間減少している。しかし、この数字は国にとっては非常に高いものでありANDI(コロンビア経営者連盟2015年)によると、2014年のインフォーマル労働率は49%、2015年は48.3%2、2016年は47.3%3であった。また、コロンビアではディーセントワークではない労働条件や派遣労働が多く、ENS(ナショナル・ユニオン・スクール、2015年)によると、労働者の32%のみが、ILOがディーセントとする条件で働いている。

3.労働組合を取り巻く環境

 ENS(ナショナル・ユニオン・スクール)によると、組合活動の現状は複雑である。2014年には労働者100人のうち4.5人が組合員であった。2010年の組織率は4.3%であったため、比較すると増加が見られる。(組合員は)2010年の83万人から2014年には97万人以上に増えている。この増加は、1984年以来の減少傾向を止めることになった。1984年の組織率は16%であった。このことから、コロンビアは世界のなかでも組合組織率の低い国のグループに入っている。ラテンアメリカの平均より低く、コロンビアで実施した労働の柔軟化プロセスをおこなった国々よりも低い4
 2014年、組合数は4,337組織で、うち民間部門が3,112組織、公共部門は1,225組織であった。また、48.8%が職種別の組合、35.9%が企業別組合、14%が産別の組合、1.3%が複数の職種で構成される組合であった。また、小さな組織による組合運動の分散化をまねき、公共政策への影響力や動員力が弱まることになった。特に、民間部門では顕著で、民間部門の組合の数は公共部門より多いが、組合員数は少ない。
 また、コロンビアの組合運動の大きな課題は、団体交渉の減少である。2013年には459件の団体協約が締結された。2014年は347件のみであった。半面、集団協定や組合契約などの、団体協約に代わる反組合的な手段の件数は増え、集団協定は2013年の204件から2014年には236件に増えた。組合契約も増加し、2013年の984件から2014年には1,925件に増えた。現在では、偽の組合または書類でしか存在しない141の組合が管理している組合契約が2,000件以上ある。こうした契約により、保健部門では多くの労働者が派遣労働となっている。

2DANE(国家統計庁)、2015年第一四半期1月~3月。
3DANE(国家統計庁)、2016年第一四半期1月~3月。
4ENS(ナショナル・ユニオン・スクール)によると、ラテンアメリカの組合組織率には3つの異なった現状がみられる。アルゼンチンとウルグアイは組織率が最も高く(組合組織率30%以上)、ブラジル、チリ、メキシコは安定した組織率で10%以上、最も低いのはペルーとコロンビアで、10%以下。

 このような状況の中、反組合の慣行が存在し、組合幹部への迫害が多いことから、コロンビアは他のラテンアメリカ諸国と比較し、暴力行為の発生件数が悪い面で際立っている。ENS(ナショナル・ユニオン・スクール)の資料では、1977年から2014年の間に3,000人以上の組合員が殺害され、幹部に対する攻撃は13,8000件以上あり、そのなかには、6,600件の殺害の脅し、1,900件の強制的な解雇が含まれている。

4.結論

 したがって、コロンビアの労働組合運動は多くの課題に直面している。この原因としては、第一に、国の雇用情勢があり、これは経済のインフォーマル性と派遣労働化に特徴づけられ、労働者協同組合、ジョブプール制、サービス契約など労働を不安定化する契約制度に関係している。第二は、国内での暴力や組合員への迫害である。第三に、最近発生している組合組織の分散化であり、これは公共部門の民営化プロセスと関連している。公共部門は労働の保証に貢献していた。一般的に、このようなことから、組合組織率が低くなり、コロンビアの組合運動の展望は複雑となっている。
 このような状況ではあるが、こうした課題に対してとった対策としては、活動を強化し労働者の組合組織への参加を促すキャンペーンの実施がある。特に、政府や経営者が提案する、労働者の権利を侵害する政策に反対する戦いをおこなうこととした。このためには、要請を提示し、国の労働政策や経済政策に関して、現在の課題に関する国の状況について意見を述べた。また、組合やナショナルセンターは、さまざまな国際的な組合組織からの支援を得るために努力をおこなった。国際的な組織から支援を得たことで、政府に対するこうした活動は合法的であることが認められたと言える。
 具体的には、コロンビアの組合運動の主な課題としては以下のことがある。
 政府に対する労働規約実施への働きかけ。この規約のなかでは、コロンビアの労働者が仕事をするための真の保証を認めさせるとともに、労働分野を促進するプログラムを推進させ、高い失業率を低下させる。
 コロンビア政府とゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍)が最近署名した和平合意を活用する。この合意には、今まで紛争により大きな打撃を受けたコロンビアの農業の再活性化が反映されているので、より多くの雇用を生み、食の安全を保障することになる。
 コロンビアの組合運動が国の政治に参加できるようにする。尊厳ある雇用や自由な労働を強化し保証する提案や、低い組合組織率を上げるプログラムを促進する提案をおこない、政治に活発に参加する。
 教育訓練により、組合の幹部を強化するため、継続して国際組織の支援を受け、政府や経営者が促進する反組合政策に対抗する力をつける。
 政府とともに、労働分野で現在おこなわれている女性への差別をなくす政策を模索する。

参考文献リスト

  • アレバロ, D. (2015年4月30日)。「労働の展望は改善するが、見通しは明るくはない」ポートフォリオ。2016年12月5日復興版。
  • コロンビア経営者連盟(ANDI)、(2015年)。コロンビア、2015年の結果と2016年の予測。コロンビア、ANDI。
  • ナショナル・ユニオン・スクール (ENS)。(2015年)。ラテンアメリカ・ディーセントワーク、コロンビア。ラテンアメリカ・ネットワーク。
  • 国家統計庁(DANE)。
2017年1月20日 講演録

コロンビア労働組合連盟(CTC)
マージョリー・マルゴ・キニョネス・ニューニェス

刑務所監督庁労働組合書記長

 

1.労働情勢の全体状況

  2014年 2015年 2016年(見通し)
実質GDP(%)
(DANE 国家統計庁)
4.4% 3.1% 4.0%
物価上昇率(%)
(中央銀行)
3.66% 6.77% 6.0%
最低賃金
時間 日 月当り
(雑誌 ポルタフォリオ)
時間 2,566ペソ
日 20,533ペソ
月 616,000ペソ
(*)
時間 2,684ペソ
日 21,478ペソ
月 644,350ペソ
(*)
時間 2,872ペソ
日 22,981ペソ
月 689,455ペソ
(*)
労使紛争件数
(CTC)
(**) (**) (**)
失業率(%)
(DANE 国家統計庁)
9.1% 8.9% 8.3%
法定労働時間
(CST労働法)
8時間 /日 48時間 /週 時間外/割増率
75%
休日/割増率
100%

(*)1コロンビアペソ=0.04円(2017年2月20日現在)
(**) 2016年の紛争。以下のような理由から多くの紛争が起きた。

 最低賃金の低い引上げ率。発電公社イサヘン(ISAGEN)の売却。地方経済開発法(ZIDRES)の施行(農地改革に反対)。生活費の大幅な上昇。運輸労組に対する一部合意の不履行。中小農家に対する合意の不履行。非累進性税制改革の提案。このような理由から、全国規模での抗議行動が約12件発生した。また、和平プロセスに向かうハバナ合意(コロンビア政府とゲリラ組織コロンビア革命軍FARCとの和平合意)への様々な支援活動もおこなわれた。
 伝統的に、国の経済成長は大資本に恩恵を与える。統計によると、2014年以降この傾向は大きくなっており、収入の多い人々に恩恵をもたらしている。つまり、不平等は減少せず、むしろ増加している。これはジニ係数(収入不平等指数)でわかることで、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC/CEPAL)によるとジニ係数は0.52である。しかし、2016年3月28日の報告書によると、0.55と予測している。また、貧困問題も深刻になっており、約80人の子供が栄養失調により死亡している。
 労働安全衛生プログラムには、労働に起因する疾病を予防する十分な力が備わっていないことは明白である。その理由は、プログラムの予算が浪費されるうえ、予算が削減されているからである。仕事に起因する事故や病気の予防が重要であるとは考えられていない。
 最も危険を伴う仕事は、建設部門であり、労働者が業務遂行中に注意を怠る、事業者が安全基準を満たさずに仕事をさせることがあるため、労働者の負傷や死亡を防ぐ対策を強化する必要がある。
 若者は、技術・専門・職業の面で準備ができていないため、雇用を得ることが難しくなっており、仕事をおこなう能力が認められた時に得ることができる報酬や特典に応じた、全面的な自己啓発ができる雇用にアクセスすることが難しくなっている。コロンビアは依然として、ラテンアメリカのなかでも若者の失業率が最も高い国の一つである。
 しかし、社会的な地位が高い限られた人々には、より多くの機会があり、成功した人生を営むことができる。例えば、報酬の高い職に就くことができ、昇進や成功する可能性があるが、多くの若者にはこうしたことは制限されている。
 民間部門の団体交渉は減っている。労働省のデータによると、フォーマルセクターの労働者の約1%のみが労働協約の対象となっている。3年前から団体交渉の状況が改善されたのは公共部門で、中央や地方レベルで交渉がおこなわれている。公共部門の多くの組織では協約を締結することができたが、中央政府は部分的にしか遵守していない。また、市町村でも遵守されないことがある。しかしながら、このような合意ができたことにより、統計の数字は約4%に上昇している。
 労働組合運動、特に、CTCは、武力紛争を終結させるため、政府とFARC(コロンビア革命軍)との対話プロセスを支援してきた。紛争終了後には、社会の不平等と極貧状態を解決させるために、社会的正義が実現されることを望む。和平プロセスは順調に進んでいる。
 この武力紛争は多大な負の遺産を生み、多くの武装グループ、治安部隊のメンバー、一般市民が死亡している。特に、労働組合が犠牲となり、数千人の幹部が殺害されている。また、約600万人の国内避難民が生まれている。

2. 労働組合が現在直面している課題

 組合運動が直面する最も深刻な問題の一つは、民間・公共部門の経営者の多くが組合運動に反対する態度をとっていることである。これは、広範におこなわれているため、組合を設立することや、労働者が既存の組合に参加することが非常に難しくなっている。組合運動に悪名・汚点をなすりつけることで、反組合文化を生みだし、コロンビア国民の間に、本当の組合運動とは違った間違った考えを植え付けることになっている。これは、武力紛争が存在するため、巧みにマスコミを利用して、組合を武装グループと同一視するようにしたからである。こうした偽りの行為により、労働者は組合に参加することを恐れ、このような理由から組合組織率は減少を続けている。このような問題に加え、組合活動を強化させるための資金の不足の問題がある。組合に参加したい労働者は多いが、仕事を失うことを恐れて参加しない。また、身の危険にさらされ、時には人生設計が脅かされることもある。

3.課題解決に向けた取り組み

 平和的な活動としての見本を示すことで、組合運動が人権の尊重、人間の尊厳、尊厳ある条件での雇用への継続的な戦い、経済と社会の成長のために優先課題となるディーセントワークや正当な報酬を受けるための基盤であることを証明する。これは、ソーシャルネットワークや代替メディアを使い、影響力があり、社会対話に活発かつ効果的に参加できるリーダーの養成を通じて推進する。
 組合員を技術面や専門・職業の面で育成するための活動を促進する。起業や雇用を生み出し発展させる目的で、労働者が労働市場で競うことができる最低限の能力を取得するため、継続的な育成訓練の文化を生み出し促進する。
 内戦終了と内戦犠牲者補償法を活用し、内戦の犠牲者である組合運動への補償を要求する。これに向け、1991年の憲法で言及されながらもまだ実施されていない労働規約の制定を促進し、労働者に有利な法律に変更するよう提案する。
 また、政府は労働組合とともにキャンペーンをおこない、強く発展した労働組合を有することは民主主義にとり利点となることを国民や経営者に啓発する。

4. その他

 私にとって重要なテーマは、コロンビアの受刑囚の雇用状況である。自由を奪われた13万人には約30の雇用があるが、多くの場合、悪条件で搾取がおこなわれている。犯罪行為により、こうした人たちが罪を償わなければならないのであれば、社会はこうした人たちに教育訓練の機会を提供するべきであり、人間としての尊厳を保ち、社会復帰時に生産的に復帰できるよう、社会復帰のプロセスや、刑務所内で職業能力を有効に取得訓練できるプロセスの中でおこなわれるべきである。