2013年 コロンビアの労働事情

2014年1月24日 講演録

コロンビア労働組合連盟(CTC)
グラディス・スミス・ハイメス・ワルテロス(Ms. Gladys Smith Jaimes Walteros)

カラマンガ州サンタンデール支部青年委員長

 

1. 労働組合を取り巻く環境

 コロンビアの労働組合運動を取り巻く労働環境は、失業率の高さ、非正規労働の増大、インフォーマルセクター労働の増大、賃金の低下および格差の拡大、労働時間の増大など、人間として尊厳ある諸条件の中で生産的な労働に従事するにはほど遠い環境にある。
 コロンビア政府は、国際労働機関(ILO)を始めとしてさまざまな国際機関の勧告により、労働者が自由に労働組合を結成する自由を尊重すると発表してきているが、現在においても労働組合の組織率は減少し続けており、現状は4.6%にしか過ぎない。加えて、労働組合関係者に対する暴力的な行為は相変わらず続いている。
 しかし、長年にわたる労働組合の努力によって、最近になって特に公務員に対して、これまで無視され続けてきた労働組合の基本的権利を認める方向で合意が得られるようになってきた。公務員の団体交渉権に関しては、その一部が2012年の政令1092号によって勝ち取られた。中央の段階では政府とナショナルセンターおよび公務員産別組織間で合意が締結されたものの、地方自治体レベルでは合意が締結されておらず、それが大きな問題になっている。

◎内戦の状況

 国内内戦に関して、CTCは民兵組織であるコロンビア革命軍(FARC)と政府との間の和平対話を支持している。現在、キューバのハバナにおいて、FARCと政府との間に和平対話が進んではいるが、依然として紛争は国内各地で起こっており、それに伴う死傷者も多数出ている。コロンビアでは長い内戦状態が続き、そのため国民の97%の世帯が内戦によって土地を奪われ、避難生活を余儀なくされている。

2. 虚偽労働組合の横行

 現在のコロンビアでは正当な労働組合を結成することが、不可能に近い状況にある。コロンビアでは労働組合に類似した組織として労働協同組合(CTA)という第3者を介する雇用形態や請負業者(SAS)が存在する。協同組合はどの国にもあるが、コロンビアのCTAと呼ばれる組織は、職業紹介、派遣会社のような役割を果たしている業者である。CTAは、紹介・派遣に当たって派遣先の企業に有利な労働組合契約を行なう。労働者が労働組合に参加しないように、労働者の権利が守られないような形で「労働組合契約」と呼ばれる虚偽の労働組合契約を押しつけている。そのため労働者は法律に基づいて自由に労働組合を結成し、自らの権利を守れない状況にある。

3. 労働組合潰しの2つの方法

 コロンビアには労働組合潰しが2つの方法で行なわれている。一つの方法は、出資性協同組合という形で、会社に直接雇用せず、派遣の形で労働者を受け入れ、労働組合をつくらせないという方法である。もう一つの方法は、労働組合契約の形でそれぞれの労働者と契約し、一種の反民主的な労働組合、会社寄りの労働組合を会社として抱え込む方法である。国の法律では、CTAのような組織をつくることを規制しているが、コロンビアでは法律などは有名無実であることが多い。虚偽の労働組合に対する制裁はない。虚偽の労働組合を押し付けられている労働者には、インフォーマルセクター労働者、潜在失業者など正当な報酬を受けずに働かされている労働者に多くみられる。コロンビアでインフォーマル労働者というのは、行商人などのような誰にも雇われずに自営業を行なっている労働者、無期の雇用契約を結んでいない労働者などを指す。それらの労働者は、社会的な保護の対象外にある。

コロンビア労働組合連盟(CTC)
パウラ・アンドレア・エレラ・メディナ(Ms. Paula Andrea Herrera Medina)

バジェカウ州カリ支部 国際担当書記

 

1. 医療機関の民間への移行

 中央政府、国会議員の何人かは、『医療基本法』の下で、国民の健康を公共の医療機関から民間の医療機関に移そうとしている。利潤の追求が第1の目標になっており、民間の医療組織を監督する機関もない。

2. コロンビアの農業従事者と自由貿易協定

 1990年代にコロンビアで行なわれた経済開放はあらゆる経済分野にマイナスの影響を与えてきた。とりわけ農業分野に大きな影響を与えてきた。コロンビアの農業従事者は、政府によって長きにわたって忘れられた存在となってきた。CTCにとって、この見捨てられた農業従事者を取り込むことは重要な課題である。
 自由貿易協定(FTA)はコロンビア国民の存在しないところで、コロンビア国民の意思に反して調印されたものであり、CTCは調印前から今日まで一貫して国民生活に悪い影響を与えるものとして反対してきた。FTAは農業従事者、特に中小農業従事者、季節労働者、先住民、アフリカ系農業従事者に打撃を与えた。政府は、農民の困窮を支援するための施策を何ら打ち出していない。国民の声を無視した形で結ばれたFTAの影響により、その弊害が国民生活の中に顕著に見られるようになってきている。それにもかかわらず、政府はさらにほかの国ともFTAを結ぼうとしている。それはすでに国会でも承認されている。コロンビアの国民生活は今後ますます困窮していくものと考えられる。

◎オバマ・サントス・アクションプランは失敗

 コロンビア政府とアメリカ政府との間で合意されたコロンビア国内の労働者の保護強化に関するオバマ・サントス・アクションプランの中で、アメリカ政府の主張により、コロンビア政府はコロンビアの労働者の権利を守るよう努力するという合意がなされている。 しかしアメリカ政府が設置したフォローアップ委員会によると、アクションプランは失敗であったと評価している。コロンビアの貿易収支は、好転しておらず、増えているのは、労働者の不満の声、労働者が自らの権利を守りたいと挙げる声の大きさだけである。コロンビアの労働者は政府の政策が、コロンビアの存続を脅かしていると考えている。

3. 労働組合の課題

 コロンビアの労働組合が直面している大きな課題として、まず第1に、労働組合指導者に対する殺戮などの暴力行為が挙げられる。コロンビアでは、それらの暴力行為が無罪とされ、犯罪が見逃されている状況がある。
 第2の課題は、コロンビアの労働組合活動家や労働者の人権が侵害されていることである。内戦の余波もあって、コロンビアの労働者はさまざまな暴力行為に苦悩しているのが現状である。
 3つ目の課題は、労働のサービス業化、つまり労働者の派遣業化が増加していることである。その派遣労働者をうまくカモフラージュするための共同組合という名称で組織がつくられ、それによって、働きがいのある仕事が脅かされている。その中でよく使われる「労働組合契約」は、会社側がある一定の人数の労働者に働きかけて、会社の息のかかった労働組合を結成させるという取り決めである。このような虚偽の労働組合が、コロンビアの労働組合運動のイメージを悪化させている。労働組合運動に対する間違ったイメージを国民に押しつけている。さまざまな困難を抱えながらであるが、CTCや、その他の労働組合組織は、コロンビアの労働者のために日々努力を続けている。

4. コロンビアの労働組合指導者の苦悩

 国際労働組合総連合(ITUC)は、毎年ILO総会前に「世界の労働組合権侵害に関する報告」を出している。その中で、コロンビアについて労働組合指導者の暗殺事件や指導者に対する暴力的な事件の頻発が毎年のごとく報告されている。
 コロンビアは、芸術や文化だけではなく、豊かな遺産を持っている国である。しかしながら政府は、残念ながら労働組合活動家を国家の敵だとみなしている。コロンビアは世界の国々の中で労働組合運動を行なうには最も危険な国になっている。確かに、これまで労働組合指導者が多数殺害されてきた。1935年に設立されたCTCの初代の会長も暗殺された。労働組合活動家個人だけではなく、労働組合活動全体として危惧・不安を抱いて活動している。
 しかし近年少しずつではあるが、状況は改善されつつある。労働組合の努力により政府と合意に至り、2013年に『法律1448号』が制定された。この法律により労働組合全体に対して賠償金を支払うことになり、肉体的・精神的な損害に対しても賠償を行なうことになった。
 なぜコロンビアに暴力が多いのか。CTCは、現在キューバで行なわれている和平交渉が進展し、成功を納め、内戦が最終的に終結することを期待している。