2016年 チリの労働事情

2017年1月20日講演録

チリ中央統一労働組合(CUT)
エヴェリン・タティアナ・アンドラーデ・フエンテアルバ

オソルノ県 青年部長

 

1.労働事情の全体状況

  2014年 2015年 2016 (推定)
実質GDP(%)
(チリ中央銀行)
1.9% 2.3% 1.1%
物価上昇率(%)
(国家統計局)
4.6% 4.4% 2.7%
最低賃金
(時給、日給、月給)
(国家統計局)
1,172ペソ(時給)
9,375ペソ(日給)
225,000ペソ(月給)
1,255ペソ(時給)
10,04ペソ(日給)
241,000ペソ(月給)
1,375ペソ(時給)
11,000ペソ(日給)
264,000ペソ(月給)
労働争議の件数
(チリCEES)
スト306件 スト306件 スト382件
失業率(%)
(国家統計局)
6.2% 5.8% 6.2%
法定労働時間 時間/日
8時間/日
時間/週
48時間/週
残業割増率
(50%)
休日出勤割増率
(100%)

*1チリペソ=0.2円(2017年2月20日現在)

 チリは、民主主義に戻って27年が経ち、税金を通じた収入の再分配と社会福祉支出の集中化といった一群の措置がとられた後でも、世界でも有数の格差のある国である。確かに貧困層と極貧層を減らすことには成功したが、格差を是正することはできていない。一連のエコノミストや社会科学者の指示を受けCUTが主張しているのは、チリの格差は最初の収入源、つまり労働の段階と不均衡な労使関係で発生しているということだ。チリでは資本の価値は下がり、労働は社会経済的に価値を下げている。
 加えて社会保障の問題がある。民主主義時代に入って改善はしたものの、暫定的なシステムが続いており、多くの労働者は現役での雇用を終えた途端に低い収入に苦しみ、現役以降の生活に問題を抱えてしまう。
 チリの人口は1700万人で、このうち800万人強が労働力となっている。就業率は男性が68%、女性が44.2%で、これが今までにとられてきた公共政策では解決が困難な問題になっている。
 中南米の中でも生活費が高いチリでありながら、現役労働者のうち50%が手取り賃金305,000ペソ(500ドル)に届かず、80%が600,000ペソ(1000ドル)に満たない。その結果、120万人以上の現役労働者が貧困ライン以下の生活を送っている。つまり、仕事があるからといって必ずしも貧困ラインを越えられるというわけではなく、国の援助があって初めて、この人数が58万人に減っているということだ。
 労使関係を規定する法律は独裁時代(1978年)に定められたが、それはピノチェトのような独裁政権に対峙する力のある議会も社会的行為者もない中でのことであり、2016年末になってようやく、労使関係を確立する新たな方法の始まりになるべき幾つかの労働改革が発布された。この法律は2017年4月に施行予定で、今はまだ法律が施行された際の影響の評価が行われつつあるところである。このような状況下では、労働者組織が果たし得る役割が重要になる。

  1. 非正規労働(派遣労働)やインフォーマルセクター等不安定雇用の現状について
     チリには現在2つの現象がある。1つは、かなりの人口が(ディーセントワークの標準に照らして)不安定な労働に就いていること、もう1つは、移民の流入が労働市場に影響を与えており、その規模が正確にわからないことだ。加えて我が国には60年代の移民法があり、現在のニーズが把握できない。
     2014年にはチリ在住の移民は411,000人いると推定されたが、これはチリの人口の2.3%に相当する。先進国在住の移民数に比べれば、この割合は低いが、南米各国在住の移民数と比べると、国連の記録によれば、南米各国の平均移民比率は1.4%であって、チリは第5位の比率の高さである。

2.労働組合が直面している課題

 文民独裁政権(1973年~1989年)により導入された労働法は我が国の労働組合組織に深刻な影響を与えた。業種別、地域別の団体交渉を廃止し、経済単位(企業)レベルだけのものとし、さらに労働組合が交渉力の低い小さな組織として多く分散するような条件を生み出し、実質的に効果的なストも廃止した。
 27年の民主主義の中であまり変化のなかったこの状況の中、今日では労働改革と労働組合の努力により、より有効な形でこの問題に対処することが可能になっている。労働組合の結束、統一労組の結成、労働者組織が実質的に存在しない経済分野での組織化拡大が主な課題だ。
 これはチリ中央統一労組とその加盟組織が実現する必要のある、政治的影響力を持つ組合の自己改革プロセスによってのみ可能になる。進んだ技術を導入するとともに、より多くの組合活動家を育成するプロセスは、我が国の新たな労働、社会、政治状況の中で我々が直面する課題に対処するのにより適したステージを確立してくれるだろう。

3.課題解決に向けた取り組み

 CUTは2017年中に、労働組合を質的、量的に成長させる自己改革プロセスを始め、地理的(CUT州組織)、部門(経済分野)別構造の近代化プロセスを推進する予定だ。
 より活発な組合活動家育成プロセスを開始し、現状分析と提案の技術革新を伴った、より高いレベルでの社会主義化と普及を開始する。これは、政治的影響力を強めるに違いない。

4.その他

 チリの組合組織率は低い。大半がかなり批判的であまり建設的ではない若者たちの間にある無関心がその要因の1つになっていると懸念される。同時に、正規労働者の中で、若年労働者の44%が勤続3年未満であり、転職率が高いことも指摘できる。労働組合とはどういうもので、何の役に立っているのかといった基本的なことが知られていないことが、組織化を阻む大きな問題の1つになっている。法令に対して明確性があまりないこと、労働組合に好意的ではなく、労働者に将来的な報復の危惧を抱かせる雇用主がいることも問題だ。