2015年 チリの労働事情

2016年1月22日講演録

チリ中央統一労働組合(CUT)
ビビアナ ステファニー・アバロス・オルデネス
(Ms. Viviana Stephanie Avalos Ordenes)

国家局保育所担当部(JUNJI)
地域代表兼幼稚園・保育園教員全国連合(AJUNJI)青年局長兼CUTコピアポ市青年局長

 

1.労働情勢-いたるところに見られる不安定な雇用の諸相-

(1)実質GDP・物価上昇率・最低賃金の動向
 チリの国内総生産(GDP)の成長率は、2013年の4.4%から、2014年は1.9%に低下し、2015年には2%の見通しとなっている。物価上昇率は、2013年に3%、2014年は4.6%、2015年は4.4%の見通しとなっている。
 最低賃金は、徐々に上がってはいるものの(注1)、世界でも有数の銅輸出国としての恩恵が、労働者の賃金には反映されておらず、さらに物価も高く労働者の生活は苦しいものとなっている。

(注1)2013年193千チリペソ、 2014年210千チリペソ、 2015年241千チリペソ、 1円≒5.9チリペソ

(2)不安定な雇用状況に直面する労働者
 チリの労働情勢は、労働者が保護されず、不安定な雇用状況に直面している。年金や社会保険の掛け金を払えない労働者や、雇用主からの労働関係に関する契約書(雇用主からの搾取を阻止できる書類)を締結できずに、雇用主から搾取される労働者も多い。さらに、男女平等とされていながら、女性が不安定雇用の犠牲者になっている。チリはワインの輸出国で、ワイン生産に従事する若者や外国から多くの女性労働者が働くため、夏の時期に不安定雇用が増える傾向がある。しかし、このような人たちに、必要な雇用対策がとられていない。

2.労働組合が現在直面している課題-解決のカギはこれまでの取り組みの中にあり

(1)不安定雇用の安定化―見習うべき労働法改革への足跡
 現在、労働組合が直面している課題は、1つ目が不安定雇用の安定化であり、もう1つは、男女平等の実現である。
 もちろんこうした課題を放置してきたわけではなく、これまでの労働組合のさまざまな活動や取り組みにより、少しずつ労働条件は良くなってきてはいる。
 この改革は、労働者の働きかけで実現できたものと自負している。その改革の中身の主な点は、[1]企業を代表する労働組合の尊重、[2]労働組合員になった場合の特典、[3]いろいろな情報を得られること、[4]組合のさまざまな手続を簡略化すること、[5]ストライキ権と最低限の業務提供に関する改革、[6]労働組合に加入した場合の特典、[7]労働組合活動を行うための時間、[8]機会均等、[9]組織の拡大――などである。
 団体交渉によって得られた特典は、労働組合員に対して適用されることは言うまでもない。現状の低い組織率を高めることに資する措置も盛り込まれている。また、より多くの情報の提供ということでは、経営側が労働組合に対して企業の財政状況などの情報を与えることである。企業の財務関係で公にすべき情報をより透明にすることも果たされた。身近なことでは、給料の支払いデータの提供も義務付けられ、男女間の給料格差のチェックもできるようにもなった。そして、ストライキをした場合、以前はその組合員を解雇して新しい労働者を採用できたが、それができなくなった。こうした成功事例を励みに、直面する課題への挑戦に粘り強く取り組んでいかなければならない。

3.その課題に向けた取り組み-求められる組合内部のガバナンス

 不安定雇用を安定化させるという課題は、これまでの地道な取り組みを踏襲するとともに、その実効性を高めるため、組合内部のガバナンス強化が必要だと思われる。今はまだ労働組合のリーダー間に存在する世代間ギャップを克服することができていない。このギャップは、多くの場合、対立や隔絶を生んでいる。この問題を克服すれば、新しいリーダーの間でより多くのコミットメントが生まれ、労働者が抱える問題の解決を可能にする団結を生むことができる。労働組合幹部に若者を入れることも検討し、エンパワーメントや法律、改革などに関する情報を得て、社会の変革のために行動を起こす時である。こうした作業や努力は結果的に国の進歩にもつながるはずである。
 また、男女平等の実現については、先に紹介した取り組みの成功例である労働法の改革(労働組合の尊重、組合員の特典、より多くの情報、労働組合手続きの簡略化、スト権と最低限の業務提供、交渉基盤、労働時間の柔軟性合意、組合活動のための時間、機会均等、組織拡大)で取り組みがしやすくなった反面、実は野党や経営側から大きな反発を受け、社会的な論争となる批判を生み、法律改正を余儀なくされている事項もある。こうした意味で今後の困難はあるが、男女平等と労働者の労働条件の改善充実という大義を旗印に、粛々と取り組みを行っていかなければならない。