2011年 チリの労働事情

2011年12月9日 講演録

チリ中央統一労働組合(CUT)
Ms. カレン・フアンシスカ・パルマ・タピア

 

1. 労働事情(全般)

 現在、チリでは労働者にとっては厳しい状況となっている。その代表的な例が、世界に知れわたることになった、鉱山の落盤事故であり、安全対策を怠り監督も不充分な結果、鉱山労働者が坑道に閉じ込められることになった。また、チリの公務員、特に医療関係の公務員は十分な保護がなされていない。

2. 労働組合が現在直面している問題

 労働法制上の問題は、公務員が団体交渉権とスト権を持っていないことにある。また、以前は労働組合の分裂という問題があったが、現在はCUTの地域運動の実現(地区(ゾーン)CUT、区(コムーナ)CUT)よる、組合運動の再連携等をはじめ、労働組合組織を再編成して力を結集していこうという動きが生まれている。

3. 課題解決に向けた取り組み

 公共部門と民間部門の労働者の労働条件などを規定する法律が全く違うということで、この2つの力を一緒に合わせる努力が今行なわれている。これまでナショナルセンターは首都圏、首都部にしかなかったが、労働組合運動の再編成の動きの中で、CUTは地方組織の拡充を重視し始めている。
2つ目は、全国レベルのディスカッションセンターをつくろうという試みがある。労働条件の改善のためのディスカッションや、ディーセントワークを求めるためのディスカッション等を行なう場として利用したい。

4. ナショナルセンターと政府との関係

 新労働法でも明らかであるが、政府は労働者のための政策(ユニオンショップ制、不当労働行為に対する厳正な罰則、スト参加者の交代要員を送らないこと、連帯性のある新たな公的年金制度)を策定する意思がない。このため、CUTは動員という労働者が持つ唯一の手段で、我々の不満を表明している。

5. 多国籍企業の進出状況と労使紛争

 多国籍企業の進出は、二重の心配をチリ国民にもたらしている。1つは、雇用の不安定化、もう1つは、民営化の流れである。さまざまな公共サービスを提供する機関が、多国籍企業により民営化されている。このことは、生活のセーフティーネットである教育、医療、住宅等々サービスの質の低下を招くと懸念されている。

チリ中央統一労働組合(CUT)
Mr. フアン・アントニオ・モレノ・ガンボア

 

1. 労働情勢(全般)

 経済・社会的格差がチリの第一の特徴で、特に若年労働者と未熟練労働者の低賃金が問題になっている。最も貧しい世帯の1人あたりの収入は月額31ドルである一方、最も裕福な世帯では2,399ドルに上る。一方で、教育や医療、福祉の民営化により、労働者とその家族がこれら最低限の社会的権利でもあるサービスを受けようとすると多大な出費をしなければならない状況になっている。
 労働条件に関して、労働者側と経営者側の間の均衡を妨げる主要因は、解雇のし易さと反労組的行為、それに対する罰則の軽さがあり、こうしたことが労働者に不安感を生み、これが組織化の意欲を喪失させている。事実、わが国の法制では、団体交渉は存在しているが、団体交渉権を行使しているのは、労働者の6%にすぎない。

2. 労働組合が現在直面している課題

 主な課題は次の通り:
 第1に、組合組織の拡大(特に、不安定な雇用状態にある労働者、若者、女性)。
 第2に、報酬と労働者の諸権利に関し、成果を伴う団体交渉するための改革の促進。
 第3に、医療、教育、社会福祉が市場で取引される商品ではなく、労働者のための権利として扱われるような制度改革。
 第4に、前述の改革を阻む二大政党制に終止符を打つため、憲法改正の模索。

3. 課題解決に向けた取り組み

 社会政治的労働組合運動の枠組みの中で、CUTは対話と動員の方針を進め、組合活動と労働条件の強化に向け、政府および企業側との合意を模索している。そのため大規模な動員を実施し、2011年8月の全国ストは、労働組合組織や市民の間で大きな反響があった。労働関係や労働条件の改革について合意するため、経営者側代表との「労働会議」も設立された。政府との間には、100万人近くの労働者に影響する最低賃金を定めるための年1回の交渉や、公共部門の賃金や労働条件見直し交渉が行なわれている。また、CUTは組織拡大と幹部育成のための全国的な養成制度を作っている。

4. ナショナルセンターと政府との関係

 CUTと現政権との関係はまじめで互いに敬意を払う関係にあるが、チリの労働者の労働と社会福祉に関しては、諸権利に関する政府側の提案とCUTの要求との間に一致点は見出せない。

5.多国籍企業の進出状況と労使紛争

 2010年、チリにおける外国からの投資は109億8,000万ドルであり、これは新記録となる。その80%は鉱業に集中している。また、医療サービス、電力、銀行や商業部門での多国籍化が起こっている。これら多国籍企業の参入は現地労働者の諸条件の向上に結びついてはいない。多国籍企業は、現行の労働法制は遵守するが、雇用全般の不安定な状況を利用して労働者に配分せず、企業の利益追求していくのみである。この分野における紛争は一般的に団体交渉プロセスに端を発し、小規模や大規模のストにつながっている。