2008年 チリの労働事情

2008年2月 講演録

チリ統一労働組合(CUT)
マルコ アントニオ カナレス フェンチュアン

Felix Bulnes Cerda病院連合書記兼CUTスポーツ・文化・レクレーション担当

 

 チリの人口は1,645万人、一人当たりGDPは6,980ドル、経済成長率は4.0%、失業率は7.8%(いずれも2006年)である。
 チリCUTは、ネオリベラル経済モデルの影響に対抗できる力を蓄積するため、チリの現実の労働や経済の枠組みの中で、さまざまなイニシアティブをとっている。 これは社会経済組合運動の構築を推進することであり、チリの労働者が個別の要求や現実を超えて、社会や政治の主体であることを認識し、より良い社会を作ることである。
 チリの組合組織率は非常に低く、労働者達は今でもピノチェット軍事政権時代にとられたネオリベラルな経済モデルの影響を受けている。独裁政権は、無料で質の高い教育、労働者とその家族の尊厳なる健康など、労働者が持っていた労働や社会の全ての権利を変えてしまった。これにより国家の役割が失われ、電気や水道などの基本サービスが民営化され、多国籍企業に売却された。われわれが使ってきた戦略は、2003年に開催されたCUTの再建大会に反映され、この大会では「より多くの人が全ての生活の側面に参加できるよう、社会を再構築する必要がある」というスローガンを掲げた。
 社会的なビジョンを持つとは、われわれは1人ではなく、われわれが目指している公正なチリの構築を進めるためには、多くのチリ人の総合的かつ組織的な努力が必要であるということを理解することである。われわれは住民、学校、大学、専門家、零細中小企業主に目を向ける必要がある。そのためにCUTは公正なチリという要求を掲げた。これはマルチセクターの結束を構築することにより団結するためのCUTの綱領の一部となっているものであり、既存モデルに代わる大きな政治社会の提携を目指すものである。公正なチリという要求には以下のような項目がある。
 年金制度の改革、チリではAFP(民間年金基金運営企業)が行っている現在の年金制度が危機に陥っている。AFPは25年間勤務した労働者の資金を運営してきたが、年金生活に入るチリ人に尊厳ある十分な年金を払うことが出来ない。したがって、労働者のナショナルセンターとしてCUTは、普遍的かつ連帯的で、経営側が参加し、尊厳ある生活が出来、国の機関が運営する年金改革を提案する。
 LOCE(教育基本法の改革)、チリの教育を大幅に変える必要がある。独裁政権時代に公布されたLOCEはチリの教育を不平等にしている。労働者の子供達は私立学校や大学への入学が制限され、二流・三流の教育しか受けることが出来ない。したがって、効率的で、普通教育を行い、無料で質が高く、仕事を含む生活を総合的に保証する教育が必要である。
 二人区制の廃止、チリの労働者は国政の審議に参加する必要がある。つまり、社会建設の主体になるべきである。労働者は政治手段を使うことや、労働者に影響する法律を制定する政府や、議会の候補者の投票に参加することが少なくなっている。
 さらに社会や組合のリーダーが民意や政治を代表する機関に参加することを禁じる、国民の意見を決定する手段になる国民投票を利用することが出来ない、など、束縛する法律が残っている。また、二人区制を廃止し、全て、比例代表制にしなければならない。
 チリでは団体交渉がないといってもよく、この権利を行使するのはわずか8.2%である。労働法では労働者のグループと経営側の間の直接団体協約による交渉が認められているにもかかわらず、労働組合は尊重されず、組合設立が推進されないため、賃上げがされず、富の再分配が公平になされていない。したがって、われわれの要求は団体協約なしの団体交渉であり、これが組合の全ての組織に採用され、企業間の組合に義務付けられ、交渉のベースとなり、スト参加中止やスト中の労働者の交代をなくし、団体交渉の障害を全て取り払い、ILO87号および98号条約を効力あるものにすることである。また、企業の都合による解雇をなくさなければならない。年金や教育改革については、さまざまな動員をかけ、討論したが、政府は労働者や各種の社会主体にとっては不十分な改革しか行っていない。
 終わりにCUTの第8回大会について述べる。現在CUTは次の大会に向け準備を進めている。大会では、われわれが目指している「社会・民主・連帯国家」の基礎を築くための闘いの基盤を強化する必要がある。社会や政治からの排除をなくすため、より広いセクター間の結束を可能にする基盤を完成させ、労働改革、賃金、収入の分配、税制改革、年金、公正な労働、政治家改革などの提案を進めていく。さらにわれわれの目的を達成するために必要な2つの要素として、対話と動員政策を強化し、労働者の力の要素として必要な動員運動が、国家の書記官やその他の社会主体との関係によって弊害を受け、禁止されることがないようにする。
 また、ネオリベラルモデルによって生まれた、パート労働や派遣労働といった新しい契約形態を含むさまざまな変化を、組合組織として認識しこれに対応する必要がある。また、技術革新によって生まれたさまざまな労働面の変化にも対応する必要があり、技術革新は製品ユニットを分散化、縮小させ、チリの組合組織に直接的影響を与えている。さらに今回の大会では、労働者を代表する強い基盤を持つ組合の構築を推進し、組合を取り巻く新たな現実を認識して組織化を行うとともに、対話と動員の戦略を維持するため、内部の民主化および組合下部組織の参加に関し改善を行い、社会や力の蓄積、横断的な要求面で前進し、団体交渉を行う条件を備え、チリの労働者の生活水準を上げていきたい。
 「労働組合の団結で社会・民主・連帯国家を作ろう」というスローガンを掲げた今回の第8回大会は、2000年以降CUTが進めている作業の集大成ともいえるものであるとともに、チリの労働史においては、360人を超えるチリの硝石工が亡くなったイキケのサンタマリア校虐殺事件から100年を考える契機にもなる。