2000年 チリの労働事情

2000年11月8日 講演録

アリシア・デルバスト
全国少年ケア公務員連合中央執行委員兼CUT 教育担当

 

国内の状況

 98年と99年に、チリは経済危機を迎えました。その前の10年間は堅実な成長ぶりを見せていたのですが、アジアの経済危機を発端とする外部からの影響を受けて、再び危機に陥りました。一番影響を受けたのが雇用です。それに対する反応が非常に遅く、こういった危機につきものですが、生産、投資、その他の活動が回復の兆しを見せている中で、一番対応が遅く、回復の遅いのが雇用です。よって全国的に失業率が上昇していきました。この状況に対処するために、例えば、大企業では解雇があり、中小企業では負債に苦しむという状況が生まれております。
 現在では、ストが行われる回数は減っています。すべて団体交渉の中で解決されるようになってきています。団体交渉の枠の外で行われているようなストの数も減っております。というのは、一方で、会社側ではこのストを回避するためのさまざまな手段を用意している面があるからです。
 チリの法律では、会社の都合で従業員を解雇することも認められています。ですから、このような経済危機にある国の中で、労働者が解雇されないように擁護されることが、非常に重要な役割となっています。
 この危機を乗り越えるために、労使の協力も必要ではないかという声が評価されつつありますけれども、問題自体はなくなるわけではありません。労働者は低い報酬に悩み、また労働条件も悪く、社会保障なども充実していません。労働組合運動なども、組織率が低いために積極的な参加がありません。
 労働人口は500万人ですが、そのうちの70万人が労働組合に加盟しています。そのうち、45 万人が私たちの労働組合、CUT に所属しています。長期雇用、定職についている人たちは、派遣、短期雇用、期間雇用の労働者にとって代わってきています。この人たちの割合がますます増大しているところです。これは、労働組合運動にも深刻な問題を引き起こしております。というのは、労働者の数が一定しないために、労働組合の活動が安定して行うことができない状況だということです。
 労働時間は1週間に48時間と決まっているのですが、残業、さらに過重な労働問題が多々発生しています。女性の社会進出については、この10年間、チリでは非常に増大してきました。女性の保護という観点もありますが、女性の立場、権利を守るということで、日本の雇用機会均等法に相当するような機会均等法が制定され、政府もその方向に向かって歩んでいます。国家近代化計画という中で、労働界の代表者が多数活躍しています。
 1981年に社会保障制度が民営化されました。それによって、労働者と労働者の家族に対しての保護が薄くなってしまったという側面がありました。経済力がある人たちはこの社会保障に頼らず、自分で貯蓄をし、老後のために備えることができますが、チリのほとんどの労働者は、生涯を労働に捧げ、非常に少額の年金を受ける人たちですので、そういう人
たちは老後に不安を抱え、なかなか生活も成り立っていません。
 医療制度についても民営化が行われており、医療を受ける権利の公平さが今欠けています。
 公務員は、危険に対する社会保障がなく、専ら期間雇用に頼っており、12月31日をもって契約を終了する公務員の人たちが非常に多くあります。ですから、私たちはそういう人たちが解雇されないように守るべく努力しているところです。自営業の人たちは、自分たちのための社会保障制度は持っていませんし、公務員の人たちも、解雇された後の生活を保障するような制度を何も持っていません。最近行われた大統領選挙では、国民の政府に対する不信感があからさまになりました。また一方では、経営者側の人たちは、社会主義政党の出身である大統領に対しても不信感を持っています。
 私が出国する少し前の話ですけれども、トラック輸送業界の労働者がバリケードを組んでデモ行為を行いました。これは燃料の高騰と輸送業界の抱える大きな負債に反対してのことです。また、学校の教師も給与水準の引き上げを求めて活動しています。この中では、私たちの労働組合のリーダーたちも協力をして、おそらく3年後までには、教員も人並みの給料がもらえるようになるのではないかと思っています。

CUT の活動

 今年から来年にかけてのナショナルセンターとしての私たちの活動では、労働組合運動リーダーの教育及び育成に重点が置かれます。
 最近選出されたCUTの会長は、どこの政党ともつながりを持っていません。自分の意見をはっきりと持っている人です。彼の考えていることは、CUTをどの分野のどの仕事についている人も、そしてどんなイデオロギーを持っている人も、すべて加盟ができるような組織にしたいということで、今、努力をしているところです。
 もう1つ重要なことは労働改革法です。これは国会で2年越しの審議をされているものです。現在の労働法は、経営者側に非常に有利になっていると考えています。これを世界レベルの労働条件になるまで、また国際労働機関、ILO の協約の87項と98項である、団体交渉権と労働協約締結権という労働者の権利が守られるため、新しく改正される法律の
中ではしっかりと盛り込んでもらいたいと思っているところです。
 社会保障の面での活動は今も行っていますが、これからも続けていかなければならない運動としては、古い社会保障制度で保険料を払っていた労働者を、新しい社会保障制度に新たに移行させ、その時、古い制度の権利や払い込んでいた資金が、この新しい制度でもしっかり守られるようにすることです。
 また、政府は国家の近代化計画を推し進めていますが、その中で、私たちは公務員の個人的な成果の達成、個人的な能力が特に発揮された場合、全体の2 ~4パーセントの人に報奨金を与える制度や、さらに優秀な人には国家の表彰を行うこととか、制度的な改革などもすることができました。
 私たちは新しく選出されたばかりの大統領であるラゴス大統領に大きな期待を寄せています。ラゴス大統領は国民、特に労働者との対話を大事にしており、今実践しているとも思っています。労働界のリーダーとして、大統領の言っていることをすべて信用することは危険なことだとは十分承知していますけれども、どうやら彼の行おうとしていることは、私たちのためになるような方向に向かってくれているような気がします。