2017年 ブラジルの労働事情

2017年10月20日 講演録

ブラジル中央統一労働組合(CUT)
ドウグラス デ アルメイダ クニャ(Mr.Ⅾouglas de Almeida Cunha)

連邦区専門検査委員会および関連団体労働組合 委員長

マリア アドリアナ オリベイラ(Ms.Maria Adriana Oliveira)
マラニャン州委員長

労働組合の力(FS)
マリア イザベル ガルシア(Ms.Maria Izabel Garcia)

リオグランデ・ド・スル州ヴィアマン市職員労働組合 事務局長兼委員長

マリア エウジレネ ノゲイラ(Ms.Maria Euzilene Nogueira)
サンパウロ州モジ・ダス・クルーゼス市金属加工労働組合 委員長

ブラジル一般労働組合(UGT)
パスコスキ ネウシル(Mr.Paskoski Neucir)

フロリアノポリス市清掃業者労働組合 委員長

 

 各ナショナルセンターを代表して下記の3名がレクチャーした。

  • ・ブラジル中央統一労働組合(CUT):ドウグラス デ アルメイダ クニャ
  • ・労働組合の力(FS):マリア イザベル ガルシア
  • ・ブラジル一般労働組合(UGT):パスコスキ ネウシル

1.労働情勢

 実質GDPは、2015年が△3.8%、2016年が△3.6%である。
 物価上昇率は、2015年が9.0%、2016年が8.7%となっている。
 最低賃金(月額)は、2015年が788レアル、2016年が880レアル、2017年が937レアルである。なお、直近の為替レートは1ドル=3.17レアル相当となっている。
 法定労働時間は、1日8時間、週44時間である。
(実質GDPおよび物価上昇率は、「IMF-World Economic Outlook Databases」を参照した)

2. 2017年労働法改正に至る歴史的経緯と問題点

① 今日に至る歴史的経過

 ブラジル政府は1943年に統合労働法の公布を行った。この法律は労働関係の基準を定めた複数の法律をまとめたものであり、以降いくつかの小さな改正を経ながら今年(2017年)
まで有効であった。
 この間、2003年に初めての民主的、かつ、大衆の支持を受けた政府が誕生した〔※2003年1月、「貧困の解決」と「経済成長の回復」を掲げたルーラ大統領の労働者党(PT)政権が誕生し、2011年のルセフ大統領政権に引き継がれる〕。この政権は、国内の飢餓の根絶を目的とした「飢餓ゼロ」プログラムや貧困層の子供たちの就学支援を目的とした「ボルサ・ファミリア」という世帯給付プログラムに取り組み、大きな成果をあげている。また、当時の政府は経済を強化しつつ労働関係の改善を目指す政策も実施した。この間、失業率は低下し、インフレ率を上回る最低賃金の設定など大きな成果をあげてきた。これらの政策は2008年の世界金融危機と重なるものの、国民所得の向上と国内消費に支えられて、国は難なく危機を乗り越えることが出来た。
 また、新しい企業や起業家を誕生させ、中小企業の数が増加し、国内市場での競争を刺激した。こうした政策は一方で、古くからの寡占大企業や大地主層の反感を買い、かれらは連邦議会議員を増やすための運動を展開し、何の確たる証拠がないにもかかわらず、ルセフ大統領を弾劾し罷免に追い込んだことは周知のとおりである。
 この後に誕生した現政府が行っている主な措置(政策)は次の通りである。

  • 〇保険・医療・教育分野予算の削減、公務員の賃金凍結
  • 〇労働者の権利を剥奪し、法を改正し、国内で適用されているILO条約の破棄
  • 〇社会保障制度の改悪
  • 〇最低賃金の削減
  • 〇農村部の労働者の仕事に対し、賃金ではなく食料品だけを受け取れるような法案の提出
  • 〇2017年10月には奴隷労働の定義を変更する通達1129号を出す

② 2017年労働法改正の問題点

 今度公布される統合労働法では、今までの法律が事実上無くなってしまう。いくつかの事例を挙げておこう。
 例えば、最低賃金法に関しては、事実上最低賃金以下で働くことが可能になってしまう。それは、一人の労働者が雇用主と個別に雇用契約をすることが可能になるからである。また現行法では、妊婦は不健康な職場で働くことが禁じられているが、新しい法律が公布されると、どこで働いてもいいことになる。派遣法も緩和され、現行法では教師の派遣は禁じられていたが、教師の派遣も可能になるのである。
 労働組合のナショナルセンターの財政にも大きな影響がある。これまでは、すべての労働者の賃金の1日分が自動的に労働組合活動費として納付されていたが、これが個々の労働者が労働組合に参与することが条件となるからである。

③ 労働組合の統一行動

 こうした情勢の中で、現在、ブラジルは全てのナショナルセンターが相互の違いを超えて統一した行動を展開している。3月8日には女性のためのデモが行われた。3月15日には全国的なデモ、4月28日にはすべての産業別労働組合が参加したデモが行われ、地下鉄・バス・公務員・銀行・商業などで働く労働者も参加し、ブラジル全体がストップしたとも言える行動だった。そして5月24日にも10万人の労働者の参加による全国的デモを行っている。
 私たちは、祖先たちが長い間努力を重ねながら勝ち取ってきた権利の略奪ともいえる新労働法を許すことができない。全ての労働者が一つになって権利を守らなければならないと考えている。