2013年 ブラジルの労働事情

2014年1月24日 講演録

ブラジル一般労働組合(UGT)
ネイラ・タチアーニ・ノゲイラ・ドウアルテ・コスタ
(Ms. Neila Titiane Nogueira Duarte Costa)

情報通信連盟ブラジリア支部

 

1. 労働情勢の全般的な情勢

 ブラジルの人口はおよそ1億9900万人で、このうち女性が49%、男性が51%を占める。ブラジルの失業率は2003年には13%であったが、現在は過去最低水準の5.5%前後に下がった。フォーマルセクターにおいては、労働者の入れ替え・流動性が非常に高く、1600万人が被雇用者で、1500万人が失業者という状況である。失業者の大半が失業保険に頼っている。都市部および農村部でインフォーマルセクターの割合が高く、9000万人の経済活動人口の約40%を占めている。インフォーマル労働を減らすことを目的とするディーセントワークを求める活動は、労働組合運動の主要な政治的要求の一つになっている。
 一方、連邦憲法は労働時間を週44時間と定めているが、労働組合は賃金を減らすことなく40時間に削減するよう求めている。最低賃金に関しては、ブラジルでは最低賃金をベースとして賃金が確定される労働者、最低賃金の波及効果を受ける労働者が4820万人(例えば、最低賃金の2倍の賃金とするなど、最低賃金が基準となっている場合が多い)も存在する。年金額を決めるときにも、この最低賃金がベースにされる。全国の一律最低賃金は、各ナショナルセンターと政府との交渉の結果、年間インフレ率5.77%を考慮して、インフレ率の30%増しの月額724レアル(約3万円)にすることに成功した。最低賃金の算出方法に関しては今後も2年前のGDP成長率と前年のインフレ率を加味して算出することが確保された。
 労働組合に対する労働裁判所の介入の度合いが大きくなっている。この問題ではすでにILOに提訴している。労働力の流動性が高いことから、労働者をより安い賃金で、ほかの労働者と取りかえることが横行している。これが全国的に賃金の全体水準の低下を引き起こしている。
 また、黒人労働者や女性労働者の賃金は、一般的に言って、ほかの労働者の賃金より約30%低い。これは法律違反ではあるが、労働市場における慣習となっており、労働組合運動はこの差別との闘いにも取り組んでいる。若年労働者の36%は失業している。これが若者の不満を高める原因となっている。

2. ブラジルの労働組合の構造

 ブラジルの労働組合は産業別に組織されている。労働組合組織の活動範囲は、市町村、州、国のレベルに分かれている。1988年に公布された連邦憲法により労働組合結成の自由が保障された。現在、労働省に登録されている労働組合組織数は1万近くに達している。しかし、労働組合に組織化された労働者の数は、フォーマルセクターおよびインフォーマルセクターを含めた全労働者数9000万人の5%に満たない。
 労働組合運動の構造はピラミッド型になっており、産業別連盟、労働組合総連盟(ナショナルセンター)が上部を構成する組織形態になっている。ブラジルには12のナショナルセンターが存在するが、そのうち労働省によって承認されている組織は、加盟人数の多い順に上位5団体のみである。

ブラジル一般労働組合(UGT)
ジョジネイジ・デ・カマルゴ・ソウザ (Ms. Josineide de Camargo Souza)

イビチンガ市被服労働組合・教育担当書記

 

3. UGTについて

 ブラジル一般労働組合(UGT)は、2007年7月21日に、サンパウロ州サンパウロ市で開催された統一大会で、3つの旧ナショナルセンターであった旧ブラジル労働総同盟(CGT、60万人)、旧社会民主労働組合連合(SDS、約5万人)、旧自治労働者中央本部(CAT、70万人)と他の多くの単組が統一して結成された。この統一大会には、全国623の労働組合組織、400万人以上の労働者を代表する3400人以上の代議員が一堂に会し、ここで第1次執行部が4年の任期で選出された。会長にはサンパウロ商業従事者労働組合のリカルド・パッチ会長が選出され、2011年に開催された大会でも再選された。
 UGT設立の目的は、市民的、倫理的、また連帯的で独立した民主的で革新的な労働組合運動を通してブラジルの労働者を擁護していくことにある。UGTは、労働組合結成の自由を支持する。UGTは、公平で民主的、かつ国民の生活を中心とする社会プロジェクトを支持する。UGTは、国レベルにおいてさまざまな問題解決のための提案を行なっている。

UGTの構造と国際加盟

 現在、UGTには、労働省が承認している1226の単一労組が加盟している。また、UGTには全国レベルおよび州レベルの55の連合体が加盟している。UGTの加盟人員数は、最も基礎となる単一労組に加盟している労働組合員の総数で約550万人である。代表的な加盟業種は商業と被服産業である。UGTは、国際労働組合総連合(ITUC)に加盟し、ブラジルに本部を持つITUC米州地域組織(TUCA)にも加盟している。また、UGTはポルトガル語を公用語とする国々のナショナルセンターが集まって構成しているポルトガル語公用語圏労働組合コミュニティ(CSPLP)の副議長を務めている。また、南半球ナショナルセンターコーディネーターという組織にも参加している。毎年、スイスのジュネーブで行なわれるILO総会にも正式な代表として参加している。UGTは、ILOが提唱しているディーセントワークとディーセントライフについて、ブラジル国内におけるプロジェクトとして、オーストリア、ブルガリア、ルーマニア、リトアニア、ポーランドのナショナルセンターや市民団体と協力してコーディネートしている。

労働組合の力(FS)
ハウー・エルロン・カンディド(Mr. Raul Erlon Candido)

マリンガー市被服労働組合委員長

 

4. FSについて

 労働組合の力(FS)は、ブラジルで2番目に大きなナショナルセンターである。1720の労働組合組織が加盟しており、直接加盟人員数は100万人であるが、FSが代表してカバーしている労働者の総数は約1000万人に達する。FSは1991年に結成された。UGTとCUTとは労働組合運動上の相違点で分かれている。
 FSの現在の目標は第一が労働者教育にある。労働組合運動の中で、労働協約をかち取った項目を完全に保障し、労働条件を改善していく活動を展開している。
 労働時間短縮問題では、賃金を下げずに労働時間を週40時間に削減することを目標にしている。もう一つ年金制度改革については、FSは40万人の加盟組合員を持つ年金生活者労働組合を代表しており、年金額を引き下げる提案を行なっている政府と闘っている。

ブラジル中央統一労働組合(CUT)
ダニエル・マシャド・ガイオ(Mr. Daniel Machado Gaio)

CUTブラジリア支部政治担当局長

 

5. CUTの概要

 CUTに加盟する労働組合は、1970年代末から活動を開始し、当時の軍事独裁政権に反対する運動を展開していた。その運動の中からCUTが正式に結成されたのは1983年である。昨年は、CUT結成30周年を祝った。CUTには3800の労働組合が加盟している。これらの労働組合を通して、全体で2400万人の労働者を代表している。直接加盟している労働者数は約800万人に上る。CUTは、ブラジルの全産業に加盟組合員を持ち、ブラジルの労働組合加盟人員総数の約36%を占める。ブラジル最大の労働組合組織であり、全世界でも5番目に大きな組織である。

CUTの原則および組織構造

 CUTの原則は、まず労働組合の自由、さらに政府、使用者、政党からの独立である。CUTの組織は、ブラジルの他のナショナルセンターの大半と同じく、横の組織、縦の組織を有する。横の組織としては、全国の26の州にCUTを代表する組織が設置されている。縦の組織としては、単位組織の上に産業別・職能別に連盟が形成されており、連盟の上に総連盟であるCUTが形成される組織構造となっている。

組織枠の拡大

 CUTの組織は、産業別に構成されているが、現在の組織の枠を超えて運動を拡大していくことを目標にしている。例えば、銀行従業員の労働組合であれば、全金融機関に拡大していく組織拡大運動である。

CUTの教育機関

 CUTは、本部をブラジル最大の都市であるサンパウロ市に置き、27の州に事務所を設置している。首都のブラジリアには中央事務所を置いている。労働組合指導者養成のために7つの学校を開設している。さらに、労働者が自分の能力を向上させて、より良い雇用条件を労働市場で得られるようにするために、さまざまな職業訓練をいくつかの機関と協力して行なっている。
 その中で特記できるのは、2013年に開設されたばかりの国際協力学院である。この組織は国際的に労働者間の連帯を育んでいくことを目的に設立された。CUTがこれまでもさまざまな協力を得てきたイタリアやドイツの労働組合運動の協力をさらに得て活動を展開していくことにしている。今後、南米やアフリカの国々の労働組合と協力していくことを目標にしている。

ブラジル一般労働組合(UGT)
ルイス・グスタヴォ・デ・パヅア・ワルフリード・フィリョ
(Mr. Luiz Gustavo De Padua Walfrido Filho)

青年委員会委員長

 

6. ブラジルのフォーマル労働とインフォーマル労働

 ブラジルでフォーマル労働というのは、雇用契約がある労働という意味である。雇用契約が労働手帳に記入されている。労働手帳に記載されている労働は、無期限であっても、有期であっても、また日本でいうパート労働であっても、労働手帳に記載されている契約であればブラジルではフォーマルな労働と位置づけられる。
 一方、インフォーマル労働というのは労働手帳に記載されていない労働、労働契約がない労働という意味である。そのような労働者は法律で定められている恩典が受けられなくなる。さらに最低賃金以下の賃金労働を強いられる場合もある。
 インフォーマルセクター労働者は、2つのタイプに分類される。1つは、例えば自営業者のように自らその仕事を選んでいる労働者である。もう一つは、本人は望まないが労働環境によりそのような労働を強いられている労働者である。その場合には労働手帳に何も記載されないので、ほとんどの社会保障を受けることができない。
 しかし、年金については2つの年金システムがある。1つは、働いた年数で年金をもらえるシステムである。もう一つは、生涯ずっとインフォーマルな形で働いた労働者が、一定年齢(女性は60歳、男性は65歳)に達すると年金を支給するシステムである。ただし、年金以外の保障はまったくない。