2007年 ブラジルの労働事情

2007年2月7日 講演録

ブラジル労働総同盟(CGT)
エデュアルド カルロス デ リマ

リオデジャネイロ商業労働組合労働契約部長兼CGTブラジル南部地域組織副会長

 

 ブラジル・リオデジャネイロの商業労働組合の代表として報告する。ブラジルの労組も企業別ではなく産業別労働組合の組織である。ブラジルでは団体交渉の期間、賃金交渉の1カ月の期間は労働者を解雇することが禁じられている。仮に解雇した場合、企業側は1カ月分の賃金を支払わなければならない。すなわち団体交渉が行われている間は、仕事が保証されているということである。
 われわれは労働省と一緒に調査研究を行い、多くの商業労働者が足に欠陥があることがわかった。血液の循環が悪化しているという持病をもっている人が多いということが分かった。そこで団体協約に、商業労働者は、お客さんがいないときには体を休める、足を休めるために椅子に座ることが出来るという項目を入れることに成功した。今まで足の血液循環悪化のために離職するケースも多々あったということであり、女性のみでなく、男性にも血液循環の病気を持つ人がいたわけである。
 リオでは新しい団体協約が締結されてもそれを実行することには実際上難しい状況がある。政府が労働組合と一緒になって労働者を守るという施策がなく、新しい協約が結ばれたにもかかわらず、労働省からの支援がないため、獲得した権利を実行に移すことは大変難しい状態にある。
 もう一つ団体協約に関するトピックを報告する。労働者にとって日曜日はとても大切な日で、父親、母親と子供が一緒に過ごす日というように位置づけてきた。しかし、日曜営業が課題になり、2002年に日曜営業が許可され、その労働条件は労使で話し合うという法律が制定された。交渉の結果、日曜労働は賃金が50%の割増し、1日の就業時間を6時間以下にすると設定した。
 法律どおりに労働者を守るのは労働組合であり、そのために法律相談も行っている。また労働組合は、レジャーあるいは保養所の運営や病院、医者などを提供するという活動も行っている。このように、本来なら政府が行うべき福祉分野の活動も労働組合が行っているという状況にある。

ブラジル中央統一労組(CUT)
ネウジー アントニオ ジアチーニ

商業労働組合役員代行兼CUTサンタカタリーナ州会長

 

 ブラジルCUTサンタカリーナ州の商業労働組合を代表し、当面する課題のいくつかに絞って報告する。
 まず労働者の自由時間の問題についてである。1996年の法で、暫定法というものが定められた。その中で、商業に従事する労働者も企業の経営問題に関する協議会に参加できるということが決まった。その法律と一緒に商業の店舗は自由に開店することが出来るという法に改正された。労働者の利益の参加という法律であるが、この法律が制定されて1年たってから、労働組合と使用者側が交渉のテーブルについた。そこで、使用者側は、今年は大変多く投資したので、利益は無いと帳簿を見せた。投資といっても自分の州ではなく、違う州、ほかの町などに投資したので、現在分け合うお金は無いという立場を示したのである。この法律は1996年に暫定法という形で出され、毎年改正され、2002年に議会を通って法律として定められた。この法律に従うと店舗は24時間開店していても良いとなっている。開閉店の時間も自由化された。このため、商業労働者は休日が決まらない状況になっており、いくつかの州あるいは市によっては、労働組合の活動によって、休日が決められてはいるが、現状はなかなか休日の決定が実現していないという状況である。商業労働者はコミッションという扱いを受けているため、彼らは休まずに働くという現状になってしまっているのである。
 そのような変化の中で問題が生じてきた。労働者が過剰に働き、ストレスが高まること、あるいは同じ作業を繰り返すために出てくる疾患などが出てきたのである。このような自由化によって、われわれCUTあるいは他のナショナルセンターが掲げる目的と相反することになっている。われわれが現在要求しているのは労働時間バンキングの廃止、そして労働時間の短縮、さらに短期雇用の廃止などであるが、現状はそのような考え方に相反する状況になっている。
 この労働時間バンキングは、1998年に導入された。労働時間は法律では48時間になっているが、それ以上に働いた残業は時間で貯められていく。これは1日単位、週単位、月単位でもいいのだが、時間を貯めていって使用者が労働者を要らない日に、その貯めた時間を使うといった形をとっている。現在多くの人が短期雇用で働いているが、この人たちには、たとえば解雇するために事前に通知する義務もなく、さまざまな労働保障など、たとえば年金、健康保険にも加入していない。われわれは短期雇用の廃止を望んでいる。現在、ブラジルの失業率は9%となっている。1999年の失業率は21%、その当時ブラジルはIMFの救済を受けた時期であり、現在は世銀に大きな返済をしており、世界で一番高い金利を払っている国でもある。我々の闘いは、そのような返済を早く終わらせ、新しい投資を拡大していくことである。われわれは、さらにブラジルの経済が発展し、経済、政治が安定し、労働者たちがインフォーマル・セクターから抜け出せる状況を作り出さなければいけないと考えている。インフォーマル・セクターに従事している人は4,000万人程もいる。その人たちは自由業も含め、インフォーマルな形で働いており、労働手帳という保障がなく、社会保障の恩恵もないまま働いている人たちである。
 ブラジルの経済は2002年、03年を通して回復の兆しを見せ、2006年の経済成長率は3.5%であったが、我々にとって、この指数はまだ不十分である。5~6%の成長がなければ、ブラジルの回復、あるいは労働市場において雇用の供給を受け入れる状態にはないからである。
 われわれのナショナルセンターは、さまざまな闘いに挑んでいかなければならない。ブラジルは資源が豊かであるにもかかわらず、富は一握りの人間が握っており、われわれは富の分配の問題を重視していかなければならない。このために労働運動ではナショナルセンターの協力が重要になっている。

労働組合の力(FS)
セルジオ ルイス レイチ

サンパウロ州化学・薬品産業労働組合事務局長兼FS第一書記

 

 ブラジルの労使関係の基本は、1945年に制定された労働法(CLT)によって規定されている。現在経営者側は、この労働法の改正を求め、その緩和と柔軟性の実現を期待している。FSは、この規制緩和に強く反対の立場をとっている。ほかのナショナルセンターも同じ立場を取り、われわれは労働法について討議する場を求めている。現在44時間制の労働時間を40時間制に、保険制度の改善も図って行きたいと考えている。もちろん、労働時間の短縮は賃金の低下なしで実現することを要求している。
 すべての労働に関しての対話をするために、2003年に労働省を通じて、政府は全国労働フォーラムという場を立ち上げた。このフォーラムにはナショナルセンター、政府、使用者が集まった。話し合われる内容は、労働組合法の改正、労働組合の強化、日曜日の就業、労働時間あるいは労働者の利益への参加、さらに社会保障など広範な話し合いが行われた。4年間その話し合いがなされた。そして、いくつかのコンセンサスが出来た。例えば労働者側だけの合意、使用者側だけの合意などがあったりした。労働者側が提案の、労働組合の代表を職場に設定するということには、使用者側は拒否した。ブラジルの組合は産業別であり、経営者側は企業の中に労働組合があるということには反対したのである。
 われわれは現在、ナショナルレベルでもさまざまな活動をし、事実上のナショナルセンターであるが、法的には認められていない。したがって、われわれが望むのは労働組合改革によって、それが承認されることである。ブラジルの労組ナショナルセンターは今回訪日している3組織を含め、16組織にもなっている。
 そのほかにフォーラムで話し合われたことは、労使関係全国委員会を設置してナショナルセンターの状況を研究すること、組合の融資システムの規定、さらに反労働組合的な圧力を阻止するメカニズムを作ることなどであるが、これらの提案はまだ国会で可決されていない。
 そのほかに、現在ナショナルセンターが取り組んでいる主な活動を上げると、一つは請負・派遣などに対する闘いであり、商業の分野では日曜日の労働についての規制を行うことなどである。
 最後に、ブラジルのナショナルセンターは協力して、2007年12月に連邦政府との話し合いを通じて、最低賃金決定の仕組みに「インフレ率プラス国の成長率を含めた指数」を使うという方式を可決するという、大きな成果を上げることが出来たことを報告する。