2004年 ブラジルの労働事情

2004年2月18日 講演録

ブラジル労働総同盟(CGT)
ジョゼ クラウディネ メシアス

ソロカバナ地域鉄道従業員労働組合 財政局長

 

国内の状況

 ブラジルの鉄道従業員労働組合を代表していますので、ブラジルの鉄道についてお話ししたいと思います。ブラジルは広大な国土を持っていますので本来ならば鉄道が中心の交通手段になるべきでありますが、残念ながらそのような状況にはなく、鉄道は衰退してきています。日本は鉄道が大変発達していますが、ブラジルは残念ながらそういう状況になっておりません。
 ブラジルでも1950年代までは、鉄道は大変活発で目立つ存在でありました。その時期を過ぎたころから、新たに自動車産業やトラック産業などが発展してきまして、ブラジル政府は道路交通政策を打ち出し、その政策により鉄道は大変衰退していくことになりました。
 1970年までは、ブラジルのサンパウロには5つの独立した鉄道会社が存在しました。その5つの鉄道会社は、経営的にも維持可能な、運営可能な状態にありました。政府のいくつかの政策により、困難もありましたけれども、大きな問題を抱えることなく運営することができました。1972年にこれら5つの鉄道会社が合併し、フェパーザという名の鉄道会社1社に統一されました。
 フェパーザが設立されたとき、同社の株式の51%は州が所有し、ほとんど州営の鉄道会社に変ったと言っても過言ではありません。その状態で鉄道運行を維持することが可能ででした。その当時、20の電車がサンパウロからサンパウロ北部を運行していました。
 1990年代になり、だんだんと鉄道運行状態が悪くなってきました。質的にもあまり良くなくなり、運営がうまくいかなくなりました。1994年に幾つかの区間で、電車の操業区間が廃止になり、車両も少なくなってきました。このような状態になったために、労働組合はさまざまな活動を開始しました。労働組合はS.O.S.運動という活動を展開し、例えば新聞を通じて全国レベルで作文のコンクールを行うなど、現状がどのようになっているのかということを国民にアピールする活動を展開しました。
 さらに1994年になりますと、サンパウロ州政府は連邦政府への債務支払いに当てるために、この鉄道の株式をすべて連邦政府に売り渡してしまいました。さらに1997年になりますと、連邦政府は様々な政府事業の民営化を進め始めました。この民営化の中で、連邦政府は鉄道も民営化のプログラムに組み込み、1998年12月に完全に民営化されました。民営化に当たり、労働組合は反対運動を行いました。労働組合は民営化するモデルが間違っていると訴えました。要するに連邦政府は、民営化に当たってさまざまな条件を付することをしなかったわけです。
 民営化された最初の時期には、民営化に伴い、一般市民の交通のために更により良いサービスを行ってもらえるのではないかという期待がありましたけれども、先ほど94年に20の電車が運行していたと申し上げましたが、それがすべて廃止され、市民の電車を使った移動手段はなくなってしまいました。電車はすべて古鉄として売られてしまいました。
 以前、電車は電気で走っていましたが、それがディーゼル車に切り替えられてしまいました。環境のことなどを考慮すると、ディーゼル車ではなくて電車が良いと考えられるのですが、ブラジルの場合は逆のことが起こっています。電気で走っていた電車は現在再稼動することができない状態になっています。

CGTの具体的な活動

 そのような状態の中で、組合員の数もだいぶ減ってしまいました。1994年には1万7,400人いた組合員が、現在は3,000人しかおりません。要するに1万4,000人が解雇されてしまったのです。その当時、卑劣なプレッシャーや脅迫的な働きかけによって、労働者は本来ならば労働協約によって決められていた内容の便宜を受けないまま、解雇されてしまいました。例を挙げますと、サンパウロ州に居住しているのに、賃金は全く同じでブラジルの最南端のリオ・グランジ・ド・スル州に異動するようにと通告された労働者もいました。労働協約では、解雇されるときにはさまざまな便宜が図られることになっているのですが、その便宜が図られないで解雇されるような脅迫的な解雇が行われました。労働組合は、裁判に訴えて幾つか勝訴することもありました。
 労働組合はILOにも提訴を行いました。提訴の中で、今回の事態は労働組合への犯罪行為であると強く訴えました。委員長を始め労働組合の幹部に対する脅迫など卑劣な行為が行われましたが、労働組合は裁判という手段に訴えて幾つかのケースで勝利することができました。
 労働組合は、新たにS.O.S.運動を始めました。労働組合はサンパウロ州の内陸で、政府関係者、議員を集めて会議を開催しました。その会議に28人の市長、50人の市議会議員、州の局長、国会議員、連邦政府のほうからは運輸大臣などを招待しまして、鉄道事業の必要性を訴えました。そのような活動のおかげで、現在ある区間の路線を復活することができました。我々の考えは、鉄道を再度復活して新たな雇用を生み出すことです。我々は派遣とか委託とかいう形で、労働者を雇用することには反対します。

 最後に、私たちの運動を紹介するパンフレットを紹介します。パンフレットの中には、我々の行いました会合の写真や、さらに鉄道の写真、それも本来ならば電車が走っているべきなのに、牛が鉄道の上で草をゆっくり食べている写真も掲載されています。
 もう1つ紹介したいものは、今回一緒に来日していますサンパウロ州商業関連労働組合副会長のモッタと私が2人で署名した文書です。内容はユニシティーというブラジルの産業別組合を支持するものです。ブラジルの産業別労働組合はそれぞれの産業で、その産業に働くすべての労働者のために働いているわけですが、組合員は組合費を払っていても、すべての労働者が組合費を払っているわけではなく、従ってすべての労働者が組合費を払うように訴えている文書であります。要するに、我々が活動するのは組合員を守るためだけではなく、その産業で働くすべての労働者のために活動しているわけですので、すべての労働者に認めてもらいたいという立場をとっているのです。

ブラジル中央統一労働組合(CUT)
ジョアン オゾリオ ダ シルヴァ

連邦区陸上交通労働組合委員長

 

国内の状況

 ブラジルの連邦区陸上交通労働組合の委員長をしておりますジョアン・オゾリオと申します。首都内と州を結ぶ旅客輸送に従事する運転手、車掌、メンテナンス部、経理部などの労働者1万2,000人を代表する組織です。組織率は高く、約80%です。組織の主な活動は毎年行われる団体交渉、権利問題での労働者に対する法律上の手助け、さらに雇用関係で不当な行為を受けないように支援活動を行うことです。
 ブラジルの旅客輸送業は危機にあり、その中で労働者は大きなネガティブな影響を受けています。旅客輸送に関連する企業は、政府からの委託を受け、このようなサービスを独占し、補助金として政府から多額の資金を受けてきました。しかし、市民へのサービスはよくありませんでした。サービスが行き届いていないところに、闇の海賊輸送業者が現れ、バンや古いバス、自家用車などを使って、市民輸送サービスを行い始めました。結果といたしまして、業者は不当なやみの輸送業者と対抗しなくてはならないだけでなく、さらに政府も補助金打ち切りを言い出すようになりました。政府は補助金打ち切りなどのプレッシャーを与えて、バスなどの輸送業のサービス向上を図ろうとしているわけです。それだけではなくて、政府は財政状況の悪化を口実に、これまで滞っていた税金を支払うようにと、企業に迫ってきました。結果として、運賃の大幅な引き上げになりました。バス代などの運賃が上がり、大変な状態に陥ってしまいました。
 このような状況の下で、ブラジルには新しい階級が出現するまでになりました。連邦政府のデータによりますと、交通手段を使えない国民が5,400万人いるといいます。それらの国民は交通手段から疎外されてしまい、日常の移動は歩くか、または自転車を使うかに頼らざる得なくなってしまいました。
 深刻な状況にもかかわらず、政府は何の対策も立てようとしません。その問題に手をつけてしまうと、政治資金などの援助をもらえないおそれがあるからです。困窮している国民は、ただの気の毒な仕事のない国民としか見られていません。また国民のほうも、海賊の交通手段にも頼らなければならないという現状もあります。
 旅客輸送部門で過去に勝ち取ってきた成果が大きく減少しています。よい時代に勝ち取ってきた条件は、ほかの産業と比べると平均より上の状態でしたが、これが脅かされてきています。

CGTの具体的な活動

 我々の組織の主な活動は、世論を動かし、政府に圧力をかけ、要求をすることです。現状を逆転し、市民によりよいサービスを提供し、労働者のための活動を行うことです。

労働組合の力(FS)/ブラジル
ルイス カルロス モッタ

サンパウロ州商業関連労働組合 副会長 FS執行委員

 

国内の状況及びFSの活動方針

 ルイス・カルロス・モッタと申しまして、サンパウロ州商業関連労働組合の副会長、さらにFS(労働組合の力)の執行委員をしています。
 各国代表の皆様とこの時間を共有し、世界の労働状況を考えることができることは、私にとって光栄であります。私はブラジルでも将来性のある地域であるサンパウロ州から参りました。サンパウロ州はブラジル国内で、工業、商業、サービスの分野では最も発展している地域です。サンパウロ州商業関連労働組合は、ブラジルの小売、卸売業に従事する120万人の労働者を代表する、南米では最大の産業別労働組合です。
 ブラジルの労働組合の組織は、第1は国、州、市レベルの労働組合、第2は州、国レベルの連合体(フェデレーション、第3は国)レベルの総連合体(コンフェデレーション)で構成されています。サンパウロ州商業関連労働組合は第2のレベルに当てはまり、その役員であることを光栄に思っております。連合体や総連合体の目的は、国あるいは州レベルで労働者の代表として調整を行うことです。ブラジルの労働組合は、商業、工業、金属など産業別の組織に分かれています。
 さらにブラジルの労働組合の組織の特徴は、憲法の規定により、各州に産業別組織は市段階、州段階、国段階でも1つと決められていることです。憲法で市には1つ、州には1のフェデレーション、国にも1つのナショナルコンフェデレーションと決められております。さらに憲法で定められている通り、資金的には正当であり、公正であります。政府や使用者からは一切の資金を受けておらず、すべて組合員の組合費で賄っています。
 現在私が代表していますFSには64の組織が加盟しております。国の主なナショナルセンターであるにもかかわらず、法律では階級代表者としてではなく民事団体とみなされており、しかし連邦政府レベルでは労働者を代表する団体としてみなされています。
 ナショナルセンターを認定する目的で、ブラジル政府は2004年の3月までに、労働組合法の改正を議会に提出する予定ですが、ブラジルの労働組合としてはブラジルは既にすぐれた労働法をもち、労働者の主な権利は戦略的に機能していると理解しているため、労働組合はこの改正に異議を申し立てています。ブラジルの労働組合の考えは、今回の政府の提案は大企業のような組織のみを有利にし、国際社会での競争力を強化するため賃金を押さえるために打ち出したものと捉えています。ブラジルの労働組合は、連邦政府案は労働者の生活水準の低下につながることを懸念しています。

FSの具体的な活動

 FSは労働者の利益のために活動しています。政府との間では委員会などを通じて、労働者支援基金、公的福祉年金基金での活動に参加しています。
 新しい年が始まったばかりです。新たに人生が再開されます。夢も希望も再開します。変化の望みも始まります。両親、配偶者、子供、兄弟、友人、近隣、仕事仲間との関係を良くしようと思っております。連帯感のある公正なよりよい世界を望む気持ちを持ち、我々一人一人の望みが実現するように努力しなければいけません。一人一人の日常のアクションがあれば、遠い夢も手に入ることだと思っています。
 2004年はうるう年なので、我々が問題を達成するために1日多くあります。ここに集っている我々仲間たちは、地域の数多くの労働者の代表でもあります。FS会長パウロ・ペレイラ・シルバとサンパウロ州商業組合会長パウロ・フェルナンデス・ルシアナからも、皆様によろしくというメッセージをもらってまいりました。
 ブラジルの週刊誌『ベージャ』は特集号で大きなページを割き、ブラジルにはまだ幾つかの解決しなければならない問題があり、他の132カ国の開発途上国と同じように先進国ではないと1つずつ詳しく検討しています。そのような結果に達するために、週刊誌はブラジルに投資している410の外国企業を調査しています。さらに世銀発行の194ページに及ぶ「2004年ブラジルでビジネスを行う」という資料を紹介しています。調査によりますと、ブラジルの官僚制度は世界のランク付けを行うと、企業を設立するには下から6番目に悪く、企業を閉鎖するには下から2番目に悪いとしています。労働法制面では下から3番目に悪く、裁判にかかる日数は下から30番目と位置づけています。直接関心がある労働法制について申し上げますと、ブラジルの労働法制は後退していると週刊誌は言っています。これが一番懸念されることです。
 『ベージャ』特集の調査の基準になった資料を制作したのはだれでしょうか。世界銀行でした。世銀は融資をする国の成長、発展は何も問わないのでしょうか。世銀はお金や利益のためであれば、労働者の犠牲も問わないという大企業と同等なレベルにいるのです。
 同じようなことがブラジルでも行われようとしています。さらに卑劣なことには、それをブラジル政府と一緒に行おうとしていることです。ブラジルは新しい国であります。長い間軍事政権の下にあり、完全な民主主義と直接投票制度を手に入れましたのは20年前です。フェルナンド・コロール・メロ大統領を選びましたが、政権を追われ副大統領イタマル・フランコにかわりました。次の大統領フェルナンド・エンリケ・カルドーゾは2年間政権を担当しましたが、労働者の観点からは、新自由主義の政策を進め、労働者の問題には無神経でした。2003年の1月にクリーンな選出により、元金属労働組合出身者のルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバが大統領に選ばれました。現在1年経ちましたが、ブラジル国民はさらなるよい国になるだろうと希望と確信を持っています。1年で改革を進めるには時間が十分ではないという人もいますし、一方では不必要な問題にあまりにも追われすぎているという人もいます。
 現在何が緊急を要する問題でしょうか。雇用問題です。仕事をする場所がなければ経済は停滞します。労働組合改革や労働法改正のような問題で、ルーラ大統領を忙しくさせるのではなく、この問題は大統領と同じ政党のジョアン・パウロ・クーニャが提案していますように、議論は2005年に持ち越すべきであります。重要なのは雇用促進であります。連邦政府の労働法改正は、労使関係を不安定にし、さらに無秩序な解雇も手助けします。このような改革は国家緊急性に反しています。緊急に必要なのは、質のある公的福祉、公正なる農業改革、司法改革と現在の政治構造です。FSは、経済発展がなくても雇用を拡大するために、現在の労働時間を周44時間から36時間への短縮、ブラジル最大の雇用を行う零細企業へのインセンティブ付与、社会負担債務免除などを行い、すべての国民に満足のいく賃金と、均衡のとれた賃金の分配を実現することを要求しています。

 最後に、私たちの運動を紹介するパンフレットを紹介します。パンフレットの中には、我々の行いました会合の写真や、さらに鉄道の写真、それも本来ならば電車が走っているべきなのに、牛が鉄道の上で草をゆっくり食べている写真も掲載されています。
 もう1つ紹介したいものは、今回一緒に来日していますサンパウロ州商業関連労働組合副会長のモッタと私が2人で署名した文書です。内容はユニシティーというブラジルの産業別組合を支持するものです。ブラジルの産業別労働組合はそれぞれの産業で、その産業に働くすべての労働者のために働いているわけですが、組合員は組合費を払っていても、すべての労働者が組合費を払っているわけではなく、従ってすべての労働者が組合費を払うように訴えている文書であります。要するに、我々が活動するのは組合員を守るためだけではなく、その産業で働くすべての労働者のために活動しているわけですので、すべての労働者に認めてもらいたいという立場をとっているのです。