2003年 ブラジルの労働事情

2003年2月19日 講演録

ブラジル労働総同盟(CGT)
エウーザ デ カシア ブフェリ マカリ

イビチンガ地区縫製刺繍工業労働組合 財政局長

 

国内の状況

 現在のブラジルの経済は大変に悪い状況にあります。インフレを抑制するためにさまざまな経済政策が採られています。インフレのコントロールは行われましたが、その半面、労働者にマイナス面でさまざまなことが振りかかりました。脆弱な経済ですので、市場の状況によって変化することが多くあり、国内の市場、あるいは国際市場に応じてさまざまな影響を受けました。
 そのような問題もあり社会的にさまざまなひずみができてきました。失業率が増加しました。現在のブラジルの失業者は1,200万人で、世界のランキングで13番目だったのが2番目になりました。さらに、ブラジルの出生率は高く、人口は年に1.3%増えています。多くの若い労働力が、労働市場にどんどん入ってきます。そのような状況により、貧困がさらに多くなり、社会から疎外される人たちも大変多くなってきました。
 しかし2002年に選出された新しい大統領により、ブラジルの国民は大変明るい展望をもてるようになりました。現在、大統領が打ち出している政策の中で、社会経済発展委員会というものが発足しました。この委員会は、ある意味で、小さな議会というふうに言われています。さらに、議会の中で大統領が設定したテーマについて、それを討議する国会議員による委員会も設置される予定です。その委員会は65名で構成され、32名が労働者代表、32名が使用者団体の代表、あと1人は大統領自身が参加しています。
 最初に討議される内容は、税制改革と社会保障改革についてです。この2つの問題は、ブラジルの中小企業にとって、とても重要な問題です。ブラジルで雇用を生んでいるのは中小企業で、この政策は雇用を創出させるためにとても重要な役割を果たすと思われます。

CGTの活動方針

 ブラジル労働総同盟(CGT)も、この委員会に参加しており、その中で我々が長い間要求してきた課題に取り組んでいきたいと思っています。それを通じて労働者のために貢献したいと思っています。
 一番大きな問題は、やはり失業の問題です。即効性のある失業対策という提案があります。多くの提案の中の1つですが、国内経済の発展とともに、一番発展してもらいたい企業は、やはり小規模の企業です。小さな企業はまだ大きくなる可能性を含んでいるので、そのような小企業を支援していきたいと考えています。さらに、児童労働の根絶の問題もあります。若者が一番最初の仕事につくときにどのようなサポートができるかも要求課題の一つです。また、CUT、CGT、FSの3つのナショナルセンターが要求しているのは、週40時間の労働の実現です。
 ことしの5月にCGTの大会があり、この課題を重要課題として決定していくつもりです。中長期的なさまざまな目的を通じ、社会面と教育面を重視していきたいと思っています。
 女性問題については、女性の労働組合への参加は、以前よりは増加しています。しかし、女性役員の割合はまだ少なく、労働組合の役員の中で女性が占める比率は5%です。企業ベースでは、女性の参加は38%です。女性のことでもう1つ申し上げておきたいことは、ブラジルの25%の女性は世帯主、要するに家族を養っているという状況です。
 我々が女性問題に対して肯定的であるのは、男性と比べて女性のほうが学歴が高いためです。高等教育を受けている数を比べてみますと、男性より女性のほうが多いのです。そのような状況をかんがみますと、女性の将来はそんなに暗くないという見方もできます。
 CGTはすべて国際組織にも参加していますので、ICFTUなどを通して、世界の労働組合が掲げている目的を、我々も一緒に到達できるように、すべての労働組合が一緒になって、労働者のために働きかけていきたいと思っています。

ブラジル中央統一労働組合(CUT)
エウザ ネヴェス ロペス

アクレ州教職員労働組合 委員長

 

CUTの状況

 ブラジル中央統一労働組合(CUT)を含めてさまざまな代表的な労働組合の支持を得て、新しい政権が発足しました。新政権は、ブラジルの労働者、社会に大きな希望を与えています。今度の政権が選挙で勝つことができたのは、我々すべてが出している新しいプロジェクトを提言しているからです。しかし、前政権時代に多くの政策が進められ、それらが進展しており、簡単にストップさせることは大変難しいと思っています。前政権では、労働者の権利を引き下げるということも行なわれました。相当討議も進んでいるので、それを元に戻すとことは大変難しいと思っています。従って、CUTにとっては大きなチャレンジとなります。ブラジルを再建する、またブラジルに新しい道筋をつくっていくという作業が、CUTの手の中にあるわけです。
 本年5月には第8回CUTの大会が開催されます。大会では会長、執行委員の選挙が行なわれます。この大会に引き続き州レベルでも大会が開催され、州レベルでの執行部が選出されます。現政権との関係では、一緒に国を再建する目標に向かって活動します。しかし、CUTは独立した組織であり、政治からの影響力は受けません。これまでと同じように、どのような政権であろうとも、政治とは独立した形で労働組合の活動を続けています。労働組合は、労働者のために活動する組織であるからです。
 今年の大会は、多くのことを議論する大会になります。今後3年間の方針を決める場所になります。さらに、労働組合の自由、年金・社会保障の改革、税制改革について方針を決定します。更に労働組合の改革についても議論します。労働組合の改革は、現大統領のルラ氏はCUT出身の方ですが、彼が以前から提案している問題でもあります。年金・社会保障の改革についても、見通しがあります。現在の年金・保障大臣はヒカルド・ベンゾイニ氏で、元サンパウロの銀行労働組合委員長でした。その労働組合委員長当時JILAFのプログラムに参加しており、大臣になって、今後前向きにさまざまなことが討議されるのではないかと期待しています。

CUTの活動方針

 CUTが今後しなければいけないことは、どのような変化をしなければいけないのか、どのような変革をすれば国がよくなるのか、市民と多くの討議を重ねていくということです。今までの古い法律に携わっていくのではなく、労働者の権限を守りながら国がよくなるためにはどうすればいいのかということを、これから多く討議していく予定です。
 CUTは、人材育成プログラムも行っています。経済市場の中で技能の重要性が変わってきたことにより、労働者たちも変化した技能に合わせて訓練が必要になっています。失業中の労働者は新たな職を探すために新たな技能を身につけなければならず、その訓練の場所も提供しようと思っています。
 汎アメリカ自由貿易協定(アルカ)につきましては、7月に予定されている会議で、公的にブラジルはどのような立場をとるのか討議されることになっています。どのように対応するのか議論されるわけですが、反対意見もあり賛成意見もあります。アメリカが自由貿易地域でどのような活動に出るのかということも議論しなければなりません。
 新しい政権は、さらに貧困ゼロというプログラムを打ち出しています。これは飢えている人たちがゼロになるというプログラムです。3月8日の国際女性デーにも参加いたします。ブラジルの東北部でマーガレットという女性が多くの活動をしまして、彼女に敬意を払って「マーガレット運動」ということで、マーガレットウォークというのを行います。さらに、メルコスール南部自由貿易市場の会議にも参加しますし、メーデーもCUTの活動の中に入っています。

働組合の力(FS)
ヴァウクレシア ジェザス トリンダーデ

労働組合の力 書記長代行

 

 グローバル化の中で権力と富が一ヶ所に集中し、さまざまな社会的経済的ひずみが起こっています。ブラジルの経済は停滞し、経済的格差が拡大しています。
 そのような問題を抱えて、労働組合の力(FS)は、さまざまな改革を要求しています。政治改革、税制改革、労働組合改革、農業改革などです。FSは、民主主義の理念に則り、ナショナルセンターと政府が常に対話を行い、お互いの理解を深めていくのが重要であるという立場をとっています。そのような対話の場所では、労働者のために良いことはすべての国民のためにに良いと立場で対応しています。

FSの活動方針

 FSは、ナショナルセンターとして、新しい労働組合のモデルをつくっていくことを目標にしています。賃金引上げ、労働条件の改善だけではなく、さらに社会的の問題の解決も図りたいと思っています。労働者と労働組合は力を1つにして、社会をよくするために活動しなければなりません。そのためには、現在の社会的格差、生活水準の格差を縮小していくことです。そうすれば、国民の生活水準がよくなり、社会的公正が確立され、賃金の分配、さらには教育、保健の面で充実していくと思っています。
 今後労働組合指導部を動員して、新たな改革を討議し、政府とよく話し合い、国の経済成長と発展をもたらすために活動を行います。労働者のために有効な、新たなプロジェクトを推進することも目的としています。新たな労働組合の方向性を決め、目標設定をしていきたいと思います。
 また、初めての仕事を探す若者のための人材育成プログラムを充実していきたいと思います。若者が初めての仕事につくときに、CGTのカシアさんが先ほど申し上げたさまざまな問題点があります。
 今年の課題は、さまざまな州などを回って、多くの会議、セミナーなどを行い、現在の問題点や、将来どのようなアクションをすればよいのかなどについて話し合いをしていきたいと思っています。
 活動の中には、3月8日の国際女性デーも含まれています。さらに、統一賃金キャンペーン、賃金の引き下げのない週40時間への労働時間短縮もあります。メーデーは今回で6回目です。女性だけではなく全労働者を対象にした組織化強化、児童労働に対する労働組合幹部の意識向上などもあります。
 改革についてはブラジル全体の状況として聞いていただき、ブラジルでどのような改革が行われるのかということを理解していただきたいと思います。
 税制改革の目的は、ブラジルの経済成長発展と、富の平等な分配を目的としています。社会保障の改革は、優遇されている階層とそうでない階層との大きな格差をなくすためにどのようにすればいいのかということです。すべての国民に受け入れられる改革を行ないたいと思っています。
 ブラジルには6つのナショナルセンターがあります。ICFTUに参加しているのは3つの組織だけです。
 労働組合の構造改革については、労働組合の近代化を望んでいます。労働組合員は、日本と同じように賃金から組合費が徴収されていますが、さらに年の1日分が労働組合税として徴収されています。FSは、そのような徴収だけでなく、例えば政府からの補助金というような形など、ほかの財源も模索しなくてはいけないと思っています。
 新しい労働組合構造改革に対して、FSがどのようなことを考えているのかというと、それは要するに、ナショナルセンターの認定の問題で、それは事実上はあるのですが、法律上は認められていないということです。
 最後に、働いている場所に労働組合の代表が1人いること、それがもう1つの私たちの要求です。