2001年 ブラジルの労働事情

2001年9月26日 講演録

ブラジル労働総同盟(CGT)
ワシントン アパレシド サントス

サンパウロ州電力労働組合 事務局長

 

国内の状況

 8年前ぐらいから、ブラジルの労働組合運動は大きく変化してきました。それは、不況や政府の政策により経済が行き詰まり、失業が拡大し、社会危機に直面したからです。社会から阻害されている人たちが増えてきており、それで失業率も高くなっています。
 労働組合は賃金引き上げキャンペーンを行ったり、不平等などの問題に対して戦っています。

CGTの活動方針

 多くの不平等をなくすために、さまざまな活動を行っています。主な活動の1つは、労働者や労働組合員の教育・育成のプログラムです。プログラムの内容は、グローバリゼーション、新しいマーケットに対応していく技術、オートメーション対策、団体交渉を行うための労働組合員やリーダーの育成です。多くの要因により、労働者の権利は不平等になっています。
 ILOと共催で児童労働根絶のためのプログラムを行っています。ブラジルでは多くの児童労働が強制的に行われており、これを根絶させようというプログラムです。
 若者の就労キャンペーンも行っています。若者に労働市場に参入しやすくするためのプログラムもあります。さらに品質管理、生産性向上、競争力の強化、生産編成などの能力訓練なども、労働雇用省と技術科学省との共催で行われています。
 労働者訓練プログラムは、失業予防のプログラムです。CGTは労働者保護基金に参加しており、その審議会のメンバーでもあります。CGTの書記長はこの審議会の議長です。この審議会は3者構成で、政府、労働者、使用者で構成されています。1996年から2001年までの間に23万3,000人が21の種類別の職業訓練を受けることができました。さらに、訓練を維持できるように、さまざまなプロジェクトも行っています。民営化された企業で失業のおそれがある若い労働者を対象に、持続的に職業訓練を行っています。
 このコースの重要性とパイオニア性が評価され、ブラジルの販売経営者協会からトータル・クォリティ(TQ)賞を受賞しました。そのほかに若者の就労、または社会的リスクに直面している若者、失業者、民営化や技術革新によるために失業のおそれのある労働者や身体障害者に対しても、様々なプログラムを行っています。
 1999年から2002年までの4カ年計画では、36万人の職業訓練を行い、さらに31の職業訓練コースを設けたいと思っています。これを全国レベルで繰り広げていく予定です。また、ミナス・ジェライス州ベロ・オリゾンテ市で、1999年から職業安定所が設けられました。ここでは労働組合が主になって労働者を登録し、直接雇用を図ろうとしているところです。最初の年は、年間に42万人が登録し、今年の6月で64万人に達しました。運営基金は、労働者支援基金を基にしています。
 このようにして、経済のグローバル下で国内で起きているインパクトを、なるべく抑えようにしているところです。

ブラジル中央統一労働組合(CUT)
アルトゥル エンリケ ダ シルヴァ サントス

エネルギー労働組合 委員長

 

国内の状況

 南米全体、特にブラジルでは、ネオ・リベラリズム・モデルが使い尽くされてしまったと言ってもいいと思います。最初にこれを導入したのは、フェルナンド・コロール・デ・メロ大統領です。最近では1994年に選出されたフェルナンド・エンリケ・カルドゾ大統領です。世界経済に屈服した政策が採られ、国際通貨基金(IMF)の厳しい管理下にあります。
 ネオ・リベラリズム・モデルが使い尽くされたという1つの明確な例としては、現在のアルゼンチン危機、ブラジルの電気エネルギー危機があげられます。これらは無責任な民営化の結果であり、エネルギー部門への間違った投資と計画により、国民は電力消費を20%削減するように義務づけられ、電気、家電製品を止めなくてはなりません。
 事態は悪くなる一方で、経済は悪化、失業者は増加、所得の格差が拡大、暴力の増加も起きています。

CUTの活動方針

 昨年8月に開催された大会で多くの目標が設定されました。主なものは、農地改革の断行、児童労働反対闘争、民営化反対、国際通貨基金(IMF)やフェルナンド・エンリケ・カルドゾ大統領に反対する姿勢、つまりIMF追い出し闘争です。また、労働運動の自治権を守る闘い決定されました。更に賃金をもとの額に戻すこと、これは主に公務員の問題ですが、公務員の給与が7年間見直されていない問題であります。その他多くの内容が去年の8月の大会で決定されました。
 今年の目標は、第二半期に、統一賃金キャンペーンを実施することです。その目的は、同じ時期に行われる産業別の闘いを統一することにあります。銀行員、教員、金属産業、保健・健康などに携わっている労働者500万人の賃金キャンペーンを行います。日本の春闘に似たようなものではないかと思います。
 また最近では、首都ブラジリアまでのデモ行進を行い、生活水準と賃金アップのための訴えを行いました。また汚職反対、汚職関係者の処罰も訴えました。フェルナンド・エンリケ・カルドーゾ政権で起きている汚職の例を幾つか挙げると、数カ月前の出来事ですが、大臣、衆議院議長、参議院のリーダー、そして新たに選出された参議院議長も以前パラー州知事だったころ、パラー州立銀行で行われた違法取引に関わっていたとの疑惑で取り調べられることになり、辞任に追い込まれてしまいました。そのすべての関係者はフェルナンド・エンリケ・カルドゾ内閣の基盤になっている人たちです。
 最近では電力規制と失業危機に対しての反対運動を行い、10月3日には教育を守るデモを予定しています。だれでも無料で通える、質の高い公立学校を求めるデモであります。教育デモと呼んでいます。
 このようなすべての運動や集会は、FNL(全国紛争フォーラム)が組織しています。FNLはCUT、政党、都市労働者と農民、失業者、ホームレスなども含む組織です。
 CUTは、第2回世界社会フォーラムに向けて活動しています。今年も、リオ・グランデドスル州ポルトアレグレ市で各国から数千人の参加者が集って開催されます。これは毎年、スイスのダボスで行われている先進国の代表者の集まりに対抗して行われる会議であります。
 最後に、2002年はブラジルでは選挙の年に当たります。大統領、州知事、州参議院、地方議員の選挙が行われます。現在の調査では、有権者の35%は野党労働党のルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァを支持しています。

ブラジル労働組合の力(FS)
ジェフェルソン コリテアック

サンパウロ州金属労働組合 組合推進部長

 

国内の状況

 現在、我々の国の社会、政治、経済はよい状態ではありません。電力危機と失業の問題により、経済はとても危ない状態です。また、アルゼンチンも懸念される要因です。南米での主要なパートナーであるアルゼンチンの危機はブラジルの経済を不安定にしてしまうからです。
 このような状態ですので、労働運動も厳しい状況にあります。責任感、創造性、対話を主な武器として、労働者を守る闘いを発展していかなければなりません。FSが主に行っていることは、政府と企業と労働者の声をつないでいくことです。

FSの活動方針

 今年の目標の一つは、失業危機、電力危機の問題解決に貢献することであります。そのためにはできる限り国の構造改革をはかることであります。労働組合として政治・社会・経済に影響を与えていきたいと思っています。
 FSは、政党を強化してデモクラシーを強める政治改革、国内全体の賃金の分配を改善した経済モデルを望んでいます。労働時間を週44時間から40時間に短縮すること、さらに大衆向け住宅(ポピュラー住宅)の供給、貧困階級にいる児童の福祉の改善など、社会的プロジェクトを望んでいます。
 FSの活動は、市議会、国会などに代表を送って、そこで労働組合としてのプロジェクトや提案を提出しています。
 労働組合の活動を、多くの人たちに理解してもらうために、例えば2001年5月1日メーデーには150万人の労働者たちが集まり、また「ブラジリアへ歩こう会(ブラジリアへのデモ」では、数百人が徒歩で千百キロ以上)歩きました。サンパウロからブラジリアまで歩き、我々の闘いの旗を掲げて、州、国レベルの抗議を行いました。

ギレルメ・サントス
ABC地域化学製品労働者組合

 

所属組織の活動状況

 政治的な状況を話したいと思います。2つの分野に分けて説明したいと思います。1つは政府との対応、もう1つは使用者との対応です。
 まず、政府レベルですけれども、労働法が1930年に制定されていますが、現在の政府は、それを改正するために大変力を注いでいます。我々労働組合としましては、基本的には支持していますが、支持するための条件として、組合運動の自主性を認ること、もう一つ、地域に複数のナショナルセンターがあることを認めることとしています。もう少し詳しく説明しますと、現在、我が国ではそれぞれの地域に1つのナショナルセンターしか認められていません。複数のナショナルセンターがあれば、労働者は自分の加入したい組合を選ぶことができ、労働者に選ぶ権利ができるということになります。
 使用者に対する私たちの政策を申し上げます。これは我々の行ったさまざまな要求が守られていないということや、労働組合に加入している人たちにはさまざまな圧力がかけられたりすることがあり、特に多く見られるのは多国籍企業などです。私たち労働組合が、労働者たちを教育するためにさまざまな活動を行いながら、組合の中で対話などを行いますが、使用者側は、私たちとは違ったイデオロギーを労働者側に植えつけようとします。企業の中で、労働組合と使用者のイデオロギーの違いがぶつかり合いができてしまいます。

社会・経済の状況

 現在、ブラジルは歴史的なひどい危機状態にあります。地域によっては、失業率が20%に上るところもあります。それを反映して、インフォーマルセクターの労働者、あるいは委託労働者などが拡大していますが、この人たちは当然労働法などが適用されませんので、不当な目に遇っています。さらに賃金も停滞しています。このような経済悪化の状態にありまして、社会では、犯罪、貧困、麻薬売買、売春などが大変増えてきています。

CUTの活動

 2000年はCUTにとって、大変変化に富んだ年でありました。それは、私たちのナショナルセンターは4年に1回大会を行いますが、今年が大会の年だったこともあります。さまざまな会議が行われ、州レベル、国レベルの政策が数多く提案され、議論されました。さらに市議会の選挙もありましたので、私たちのナショナルセンターは労働党、PTを支持しているCUT は、多くの組合員の力をそちらへ注ぎました。私たちがこのような仕事に力を注いだのは、労働者の代表する力を強めるためです。
 私たちの主な闘いの目的は、雇用拡大、賃金の補てん、要するに今まで賃金が上がっていったのが、事実上、止まってしまったので、その分を補てんしてもらうということです。それと、労働時間を少なくして同一の賃金を維持しながら労働時間を縮小するということと、インフレなどの状況にあわせ計算上では決められている厚生年金システムの89年から91年分が補てんされていない、つまりそれが支払われていないというギャップがあるので、それがさらに補てんされるということが私たちの要求です。
 私たちの要求をさらに聞き入れてもらうために行った活動としましては、月に1回、1月から6回、大会・会議などが行われました。さらに市議会議員の選挙に、私たちの利益を代表する人たちを支持することによって、私たちの求めている内容が可能になるために働いてくれる人たちを支持してきました。私たちがこれからさらに行っていかなければならない主な内容は、それぞれの産業の職業訓練ということです。これは能力訓練と、もう1つは労働組合の運動を理解していただくために工場に出向いて、私たちの目標などを説明するという活動です。さらに我々は、現在、ほかの労働組合と手を取り合って、賃金のレベルを交渉、統一するために、横のつながりも持ってきております。さらに街頭での、行進を行ったりもしています。
 ナショナルセンターレベルでもう1つ行われていることは、厚生年金システムの補てんを行うための活動で、ナショナルセンターが1つになって、政府に圧力をかけていこうという態度をとっていることです。

ニルド・ノゲイラ
サンパウロ商工労働組合文化部長及びFSの財務部長

 

FSの現状

 政府との関係については、FSは政治的にも社会的にも、大変よい関係を保っております。しかし、ブラジルの経済状態は大変悪いと申し上げてもいいと思います。財政赤字は大変大きく、今現在は、国際通貨基金、IMFの監視下に置かれています。不況は続き、失業も拡大し、賃金も6年間上がっておりません。賃金の上がるはずの補てんも正当な形で行われていません。
 現在、FS はCUT 、CGTとの関係は大変よくなっています。この3つのナショナルセンターは、政府に対してさまざまな共同作業を行っています。国の状況は悪化していて、今の大統領は国民の支持を得ていません。特にそのような状態にありますので、ナショナルセンターは労働者の権利を守る立場になくてはなりません。というのも、ほんとうは政府が守らなければならないさまざまな行為が、守られていないからです。
 一例を申し上げますと、厚生年金基金というものがあり、労働者が毎月給料の8%を天引きされて、基金にそれが投入されるのですが、この基金が、1989年から91年の間に、ブラジルのインフレが加速したときときですけれども、月に84 %のインフレの状態で、そのときのインフレで生じる差額を調節しなければいけなかったのですが、それが行われなかったので、労働者は大変な損害を受けているわけです。
 この件については、さらに労働裁判で裁判官は「政府は、労働者にこの賃金、補てん、の調整を行って支払うべきだ」という判決を出したにもかかわらず、政府は資金が不足しているという理由で、まだ補てんをしていない状況です。
 現在、FSとしては、さまざまな不当な行為、失業などに対して大変力を注いでおります。これは、労働時間の短縮です。現在は週44時間を40時間にと要求しているところです。要するに、時間を少なくして、働くシフトを多くつくるということです。
 FSは「労働者の城」という教育センターを持っています。これにより、月に1万2,000人の労働者が、さまざまな教育を受けています。技術教育から言語、英語・スペイン語の教育を受けることもできます。このような講義をこれからさまざまな州でも行っていこうという仕組みを進めているところです。
 また、最低賃金を上げるという運動もしています。現在、ブラジルの最低賃金は、ドルに換算すると日額およそ72ドルですが、この賃金は、最低の生活レベルを維持することができない金額です。私たちは、最低100ドルまで最低賃金を上げていきたいと思っています。政府は、現在4 ドル上げると言っていますが、これでは貧困がさらにひどくなるばかりです。それに抵抗し、私たちFSは歩いて抗議する運動というものをつくり、組合員の200名がサンパウロ州からブラジリアまで歩こうという運動を行っています。これは、1,200キロを徒歩で40日間かけるということです。このような行動を起こしながら、ブラジルの連邦政府に気持ちを訴えていきたいということです。
 私たちFSとしましては、今現在、地域に1つのナショナルセンターしか認められていないということには賛成です。なぜならば、多くのナショナルセンターが存在することによって、力が分散してしまうので、企業あるいは政府との交渉を強めていくためには、1つの力のほうがいいと思うからです。ブラジルの政府は、大変不安定な状態にあります。我々がさまざまな提案を提出しても、その提案がお蔵入りになってしまうということが多いのです。
 FSは、大変多くの支持をもらっておりまして、常に新聞にも出ています。多くの市議会議員、国会議員なども選挙で選ばせることもできました。現在のFSの委員長、パウロ・ペレイラ氏は、大統領に立候補するシル・ゴメス氏から、将来副大統領になって一緒に活動しないかという誘いも受けております。ブラジルの中で、FSは大変勢力を強化してきています。我々の目的としましては、労働者のために闘う、労働者が不当な目に遭わないために闘うということです。