2007年 パナマの労働事情

2007年10月10日 講演録

パナマ労働組合連合(CS)
マルタ イリス ゴンサレス カスティロ

パナマ女性農民連合 事務局長兼CS共同連帯活動副書記

 

パナマの経済環境

 パナマは北アメリカ大陸と南アメリカ大陸との境に位置する。人口約300万人。近年、国内総生産や投資などに関しては目覚しい成長を遂げている。2007年第一四半期の月間経済活動指標によると、前年同期比約8%の成長率であった。建設業は好況で2014年には投資総額が数百万ドルに達するという予測もある。特に建築、増築、改築が好調である。鉱山業は金、銀、銅などの鉱脈が確認されている。数億ドル規模の投資が見込まれている。パナマ運河拡張計画は今後の経済成長に寄与する大プロジェクトである。この大プロジェクトは国民投票で承認されているがまだ着工されていない。運河拡張計画は1万以上の直接、間接の雇用が見込まれている。

政治状況

 政治面においてはさまざまな問題を抱え、それが国の開発、発展の阻害要因になっている。歴代の政権が国を苦しめる諸悪に立ち向かい、解決する能力に欠如している。問題解決に力を発揮すべき政党各党は、汚職という深刻な問題を解決しようとする意気込みに欠ける。

社会の現状

 近年のパナマでは経済成長と社会福祉予算の増大が成し遂げられているが、大きな所得格差と公共サービスへのアクセスの格差を効果的に減らすことは実現されていない。2000年の国勢調査によると貧困層は100万人以上におよび、総人口の37%に相当する。このうち50万人以上、総人口の19%が極貧状態にある。都市部の貧困層は国全体の貧困層の23%を占める。先住民の貧困層は全体の19%を占めるが、先住民の中では95%が貧困層に属している。貧困は農村部と先住民の間で多く、最も収入の低い層は中央の都市部に集中している。増大する一方の貧困層は、経済活動の不足と、不均衡なパナマ経済が大きく関係している。

インフォーマルセクター

 パナマでは、就業人口のうち3割は貧困状態にあり、およそ1割は極貧状態にある。パナマの労働市場は近代的な経済構造と遅れた経済構造が混在している。高い生産性と高額な報酬が約束された近代的なフォーマルの労働市場がある一方で、収入が低く、生産性も低く、仕事の質も低い遅れたインフォーマルな市場も存在している。都市部への人口流入と、近代産業が十分な雇用を提供できない状況から、貧困層は都市部に集中する傾向がある。

 就業人口の3分の2が賃金労働者であり、この人口は1997年から2003年の間にわずかながら減少を示している。この原因として、インフォーマルセクターでの雇用、自営の労働者や賃金支給のない家族経営の労働者といった就業形態に労働人口が集中していることがあげられる。世帯調査によると、賃金労働者の28%が、人並みの生活を送るために法律で定められた最低賃金さえ支給されていないという調査結果がある。

多国籍企業

 多国籍企業は従業員に高水準の作業能力と技能を求めている。多くのパナマ労働者にとって多国籍企業に職を得ることが難しくなっている。その一方でこれらの多国籍企業は、労働組合の結成も困難にしている。これらの企業での派遣労働者が増加しているため、組合の結成の可能性が低くなっており、労働者の権利が侵害されている。コロンビアからの投資も積極的である。パナマはベネズエラ、エクアドルとともに大コロンビア共和国を構成していた時代があり近親感もあるのであろう。

労働運動の統一問題

 ここ数年、インフォーマルセクターの労働人口が極端に増加している。こういった労働者が、社会経済的な支援をまったく受けられず、非常に弱い立場にあることは周知の事実である。特にインフォーマルセクターには多くの女性の存在がある。パナマ女性農民連合はインフォーマルセクターの労働者を組織化している。女性組合員の夫も加入することが出来る。ナショナルセンターを通じNGOのプロジェクトにつなげる活動もしている。パナマの労働組合運動は組織の分裂のため新たな課題に立ち向かうための要求活動が困難な状況になっている。より高い競争力を目指した組合員のスキルの向上など新たな課題を理解することが、労働運動統一プロセスに必要なことである。

2007年2月7日 講演録

パナマ共和国労働組合連盟(CTRP)
マデライン ロレーナ エスクリパーノ オルテガ

商業産業労働組合財政担当兼CTRP財政担当兼ORIT中米地域委員会書記長代行

 

 パナマの労働力人口は140万人、うち130万人が就業している。就業の動向を見ると、サービスや商業の分野でインフォーマルな雇用が増えている。失業率は減少しており、運河の拡張など雇用の増大が期待されていて、政府は今年1月に若者10万人に対しての技術教育を始めた。パナマの貧困率は36.8%、極貧状態にあるのは16.9%と、中米の中で富の分配が2番目に不公平な国である。
 最低賃金は第3者の協議会によって決められ、セクター、地域によって金額が異なり、パナマシティーでは1時間1.36バルボア(1バルボア=1米ドル)になっている。
 パナマの社会保険制度は、社会保険基金と呼ばれるもので゛あり、加入者とその扶養家族に保健医療サービスが提供される。民間と公共部門の労働者は、全員この制度への加入が義務付けられている。最近改正が行われ、労働者は毎月の給与の7.75%、経営側は10.75%を基金に納付する。退職者が年金を受け取るためには、2007年以降は少なくとも216回の掛け金を支払っているか、または、18年間掛金を支払っていることが条件になる。男性は62歳、女性は57歳から受給権が発生する。
 労働組合は、民間部門と公共部門に分かれ、公共部門では全ての公務員が加入する。公共部門でも雇用の安定という権利が尊重されていないため、法的に労働者は不安定な状況に置かれている。国の発展のためには、公務員法をもっと技術的、近代的、科学的な判断基準を用いて運用すべきだと考えるが、政府は強固に反対している。公共部門は、フェナセップ(公共サービス産業労働者連盟)によって組織され、このフェナセップはコナトという組織労働者全国審議会に所属している。民間部門は労働法によって監督され、労働省と労働裁判所が監督機関になっている。
 パナマには364の単位労働組合があり、それが30の産業別組織に属し、合法的に組織されているナショナルセンターは9つある。そして、一つの中央全国審議会がある。コナトというのは組織労働者全国審議会で、これは全国レベルの問題を話し合う諮問機関である。われわれのCTRPもコナトのメンバーである。パナマの組合員組織率はコナトによると12%前後となっており、組織化の難しさを示している。
 われわれのCTRPは全国レベル、全ての県で活動しており、コナトの中の17%を構成し、全国の組織労働者の5.9%(政府統計では3.4%)を占めている。CTRPには10の産別組織と9つの全国規模で展開する労働組合が参加し、組合員数は4,500人である。コナトの中で、特にサービス業の中では、最大の組合員を有している。22人の執行委員のうち女性は3名である。CTRPは現在のような絶対的な市場の自由や規制撤廃に基づく経済モデルには反対している。またパナマの労働組合運動の統合を提案して活動を進めている。