2017年 メキシコの労働事情

2017年10月20日 講演録

メキシコ労働組合連盟(CTM)
ホルヘ メディナ ペレス(Mr.Jorge Medina Perez)

小麦、パン、食品、運輸その他に関するメキシコ国内労働組合 法務相談役

マリア グアダルーペ カンポス エスピンドラ
(Ms.Maria Guadalupe Campos Espindola)

乳製品・食品業界・関連のメキシコ国内労働組合 事務局長

労働者全国連合(UNT)
ホセ エンリケ オニャーテ ベラ(Mr.Jose Enrique Onate Vera)

メキシコパイロット労働組合連合 委員長

 各ナショナルセンターを代表して下記の2名がレクチャーした。

  • ・労働者全国連合(UNT):ホセ エンリケ オニャーテ ベラ
  • ・メキシコ労働組合連盟(CTM):ホルヘ メディナ ペレス
 

1.労働情勢

 実質GDPは、2015年が2.6%、2016年が2.3%である。
 物価上昇率は、2015年が2.1%、2016年が3.4%となっている。
 最低賃金(時間額)は2015年が8.8ペソ、2016年が9.1ペソである。月額換算では2015年が2,103ペソ、2016年が2,191ペソとなる。なお、直近の為替レートは1ドル=17メキシコペソ相当である。
 失業率は、2015年が4.35%、2016年が3.88%である。

2.メキシコの労働組合をめぐる情勢と課題

(1)労働者全国連合(UNT)の報告

① メキシコの平均的な賃金水準およびUNTの組織概要
 メキシコの平均的な賃金を時間給で換算すると、ドル換算では56セント、円換算では63円程度である。なお、メキシコでの収入格差はきわめて大きく、全人口の55%が貧困状態にあるといえる。
 私たちの労働者全国連合(UNT)は、組合員200万人、組合数300組合で構成されており、主にサービス業の労働組合が加盟している。
 私の所属する「メキシコパイロット労働組合」(ASPA)は5つの航空会社で働く2,800人の組合員で構成されている。

② 労働法の改革について
 最近の労働市場における重要なテーマとして労働のインフォーマル化、雇用のインフォーマル化が挙げられる。こうしたインフォーマル化は2011年頃から顕著になってきており、こうした状況の中で2012年に労働法が改正され、インフォーマルセクターで働いている人々が正規雇用者になるチャンスが生まれた。その後、インフォーマル労働者の数は減少してきているものの、このことがディーセントワークに繋がっているかは別問題だといえる。私たちが注目するのは、それぞれの労働者の購買力であり、その購買力で彼らが本当にディーセントな働き方をしているかどうかを重視している。
 労働者全国連合(UNT)の活動の中で中心的なテーマの一つが「労働法改革」である。この労働法改革は、ILO勧告、北米自由貿易協定、アメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)との連携、2018年に行われる大統領選挙のそれぞれの対応と相互に関連しあっている。
 労働法改革の考え方は、ILOの環太平洋パートナーシップ協定(2016年)に関する提言をもとにしている。また、ILOの提言やアメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)との連携を踏まえながら経営者寄りの労働組合に反対している。経営者寄りの労働組合とは、労働者を正しく代表していない組合のことをいう。メキシコでは、20人以上の労働者が集まれば労働組合ができるが、企業の中には、まだ従業員を雇っていないのに組合のあるところがある。それは、最初にできた労働組合が交渉権を持つという決まりがあるためで、別の労働組合を選ぶ選択肢を剥奪していることになる。私たちは、こうしたことについてもILOに提訴している。北米自由貿易協定に関しては、この協定の中に労働者の最低条件に関する章を設けるよう要請している。
 2018年の大統領選挙については、しっかりとした労働者の権利を守るための働きをする大統領の誕生を望んでいる。

(2)メキシコ労働組合連盟(CTM)の報告

① 2012年改正労働法の問題点
 メキシコの連邦労働法は2012年に改正されたが、この改正は25年にわたる長いプロセスを経て行われたものである。この改正によって、雇用の柔軟化の条件が整い、結果、労働者の権利が侵害されている。
 具体的には、改正によって一時的な雇用契約条件(訓練期間雇用、主要期間雇用、季節雇用、不連続雇用、時間給雇用など)が付加され、このことによって、雇用の安定が侵害されている。また、下請け契約の規定が見直され、この改正によって、使用者が労働者に対して責任を負う必要が無くなり、雇用関係という概念が破られ、さらに下請け労働者に対する労働義務遵守規定が設けられた。
 教育訓練の面では、生産性というテーマが加わった。この生産性については、企業の競争力を高める生産性というものを正当化して、労働者の権利と労働者の義務という新しいメカニズムが生まれている。
 解雇についての条件も使用者に有利に改正された。今までは、使用者が解雇する場合は、労働者個人に通知をしなければならなかったが、調停委員会を通じての解雇が可能になったのである。
 このことによって、ディーセントワークとか尊厳のある仕事というものが損なわれることになる。私たちは労働条件の改善と生活水準の改善を求めて闘っているが、労働法改正に対しても、問題点を明らかにしつつ具体的な提言を示しながら対応していく。

② アウトソーシングと派遣労働者の問題
 メキシコではアウトソーシングサービスを提供している900社のうち、100社しかメキシコ社会保険庁(IMSS)に登録しておらず、納税している企業は40社のみとなっている。
 メキシコの労働市場には悪い慣行がはびこっている。例えば、契約の無い雇用関係、給与の全額を関係機関(社会保険庁、国税庁、労働者用住宅基金庁など)に申告しない、押印されていない給与計算書、などである。
 政府は2009年以降、こうした形態の契約への監視を始め、社会保険法を改正し、経営者に対して派遣労働者への報告を義務付けるようになった。

③ CTMの取り組み課題
 CTMはこれまで社会正義のために闘い、成果をもたらしてきたので、これからも人権、労働の擁護を進めていく。また、不公正と闘い、労働の差別、賃金格差などについても闘っていく。そして、より広く社会保障が適用されるように、保健医療サービス、教育、住宅の確保ができるように取り組む。また、暴力が無いように環境保護にも努めていく。