2008年 メキシコの労働事情

2008年11月12日 講演録

メキシコ労働組合連盟(CTM)
アナ ヘォルヒーナ サパタ ルセロ

 

 メキシコも他の中米諸国と同じような問題を抱えている。メキシコの人口は1億3,000万人、そのうち500万人がCTMの組合員である。
 企業は労働条件のルールを無視し、労働法の規定を守らず、例えば、法定労働時間(一日8時間)を上回る労働時間での就労や、残業代の規定を守らず、残業代を休みで調整し、4日間12時間働き、週3回休ませるなど、企業は労働者の給与や手当てを減らしてコスト削減を図っている。
 1番大きな問題は金融危機による影響である。現在全ての分野で多くの雇用需要があるが、全国で年間30万件の雇用が創出されるのに対し、専門職市場には国公立私立大学から100万人が流入するため、雇用が大幅に不足している。仕事があっても支払われる賃金が低く、労働者や家族が給与で手に入れることのできる生活物資が減ってきている。要するに雇用が減少し、低賃金労働の仕事しか見つからない状況にある。賃金が高く条件の良い雇用を創出しなければならない。しかし、中央政府や州政府は雇用を増やすためには、労働者に経済的犠牲を強いても経営側の条件を受け入れるので、難しい課題となっている。組合は連邦労働法の規定を上回る賃金や条件を求めることから、政府と企業との間に組合を作らないという合意があることが多く、特に多国籍企業では顕著である。多国籍企業はマキラドーラ(メキシコの国境地域にある保税加工区。中南米の一部の国にも存在する)として知られており、こうした多国籍企業は特にチワワ州に多い。多くの企業が進出し、州や国に多くの雇用を創出しているが、こうした企業は、世界規模での競争力を高めるために賃金の安いところに進出するため、賃金は非常に低く、労働条件が悪いうえ、一切の労使関係を否定している。そのような状況の中で、われわれは労働者を守るために、組合員の拡大、つまり組織化を進めることが重要と考えている。また、男女不平等の問題、非正規労働者問題、連邦労働法の体制に対しても闘っていかなければならない。それ以外にも賃上げ、社会問題の解決、雇用の創出など、大切な問題が山積みとなっている。
 CTMと政府の関係は対話と尊敬である。しかし、政府は組合を増やす活動はまったくおこなっていないため、かえって、組合の登録を難しくしている。そのため、政府と対話しながら登録しやすい方向に持っていかなければならないと考えている。
 また、差別が起こっているパートタイム契約に対する改善や社会保険関係の改善もある。
 その他の対策としては、CTMに加盟すればどのような恩恵が受けられるかなどの普及活動も行っている。そして、女性のリーダーシップを発揮してもらえるように、女性リーダー育成に対する取り組みも進められている。現状を把握して分析を行い、労働者の条件を良くするために労働法を改革するために上下院に提案していきたいと考えている。
 また、それ以外にも社会の治安情勢の悪化、汚職問題などさまざまな問題があり、このような問題も解決し、それと同時に多国籍企業やマキラドーラなどでの雇用を創出することが大切である。CTMとしては、会社の中で差別を受けている人や会社から不平等な待遇を受けている人たちを支援する活動もある。そして今、労働者たちがひどい状況にあることを政府に理解してもらい、政府がきちんとした対応をすることが大切である。多国籍企業が進出することは、結局労働者に対しては不利益になると思っている。

全国労働組合(UNT)
マリア テレサ デ ヘスス マシーアス ガルシア

 

 メキシコの政治的危機が経済・社会・労働の危機を招く原因となっている。低い経済成長率が賃金や収入の少ない国民に大きな影響を与え、雇用の機会が減り、生活必需品が高くなり、賃金の購買力が大幅に低下している。ネオリベラル・モデルは、低い経済成長率、少ない雇用の創出、低賃金、より広い経済格差、貧困、社会の格差を意味する。より多くの機会と社会の平等のためには、ネオリベラル・モデルをなくさなければならない。メキシコでは不公平な富の分配、活力のない国内市場、低賃金、貧困、治安の悪化に加え、アウトソーシングや派遣労働者の増加による組合組織率の低下(メキシコ派遣労働会社連盟は10万人の派遣労働者を送っている)、経営側を保護する団体協約、企業側に有利になるような地元や国の調停仲裁機関、UNTのような民主的進歩的な組合に打撃を与えようとする政府や多国籍企業などに立ち向かっていかなければならない。
 他方、国際的な金融危機と食糧危機はメキシコの発展を妨げる大きな原因になり、したがって、労働条件に影響することになる。そのような状況下で、UNTの課題としては5つの大きなものが挙げられる。1)労働法制の改革 2)社会保障制度の改革 3)エネルギー改革に対する反対運動 4)食糧危機 5)金融危機に対する対処である。
 このような問題に対して、UNTはさまざまな活動を行っており、その中でも労働法の改革については改正案を長年政府に提案している。 また、革命記念日や独立記念日などの多くの記念日には、動員をかけて集会を開催したり、企業を保護するような協約に反対する運動なども行ったりしている。そして、社会的な監視制度の設立に向けても努力している。ISSSTE(公務員共済庁)を通じてその改革などに対しての監視を行い、改悪に対しては反対の意見を唱え、国際的な機関に対しての働きかけも行っている。
 政府は今エネルギー改革を行おうとしているが、先月、これに対して住民の意見調査を行うことを提案した。UNTに参加している各労働組合にも、この調査に積極的に参加するようにとの呼びかけを行った。特にエネルギーに関しては、PEMEX(メキシコ石油公社)に関する改革の話があるが、この改革に対して国の主権、尊厳が損なわれないような改革の仕方を提案している。
 また、農業運動の団体や市民団体、社会団体、労働団体と提携して食糧・エネルギー政策の改善を求める運動も推進している。その中で三者協議(社会三者協議)が生まれつつある。また10月の全国大会の中で、いまの世界的な経済危機に対するさまざまな働きかけを世界的な連携で行っていこうという決議を行った。
 UNTと政府の関係は、儀礼的なものでしかない。政府は現在の危機の深刻さを認めようとせず、政治・経済・社会モデルの変更に抵抗しているので、政府との関係については、組合員の動員をかけることも含まれるようになった。UNTは設立以来、政党や政府との相互尊敬の関係を尊重するとともに、派閥主義やコーポラティズムのない関係を尊重してきた。この理念に基づき、政党と組合との新しい関係を打ち立てるためのさまざまなオプションを模索してきた。
 多国籍企業も他の国と同様に多く、多国籍企業労働者への組織拡大キャンペーンを行っている。そして、隣国アメリカという非常に影響力の強い国に対して何とかしなくてはいけないということを強調することだと思う。