2003年 メキシコの労働事情

2003年7月10日 講演録

メキシコ労働組合連盟(CTM)
カルロス ウガルデ ロペス

メキシコラジオ・テレビ関連産業労働組合 副事務局長

 

国内の状況

 まず、2000年7月2日の大統領選挙でPRI(制度的革命党)は、PAN(国民行動党)のビセンテ・フォックス氏に敗れました。フォックス氏が大統領になって2年半経ちました。フォックス氏は大統領選挙期間中に、政治、経済、社会などいろいろな分野の変革を約束し国民に大きな希望を与えましたが、その公約をほとんど果たしておらず、国民は失望しています。
 メキシコは経済面では大変安定しており、安定度では世界の10番には入るのではないかと思います。マクロ的に安定しており、自由貿易協定により貿易も大幅に増加しています。経済の安定により、少数の人には利益がもたらされましたが、しかし大多数のメキシコ人にはよい影響を与えていません。貯蓄は少なく、生産的な投資が行われていません。本来ならば、国内に投資が行われれば国内の流動性が増えるわけですけど、そういうことは起こっておりません。メキシコは現在、外貨を石油で稼いでいます。同時に、メキシコの経済はアメリカ市場に依存し過ぎています。アメリカで働くメキシコからの不法移民による送金が、メキシコ経済にとり大変重要となっていることを、ビセンテ・フォックス大統領自身も認めています。治安の悪化や複雑な手続を求める官僚主義の蔓延りにより、国内外の投資家が投資を敬遠するようになっています。例えば投資家がメキシコに投資したいとしても最高6カ月待たなければ投資許可がおりません。
 メキシコは貿易パートナーであるアメリカやカナダと同じような労働条件を確保しようとしていますが、まだまだ実現にはほど遠く、雇用の安定は確保されていません。このような状況の下では、雇用を生み出すことが出来ないだけでなく、企業の閉鎖により雇用が失われて、労働者や労働組合に悪影響を及ぼしています。
 フォックス大統領は、年間130万人の雇用を生み出すと約束しました。つまり、この公約によれば3年間で400万人ぐらいの雇用が生まれなければならないはずですが、実際には60万人の雇用が失われてしまいました。フォックス大統領は雇用喪失の原因を、9月11日の同時多発テロのせいにしています。し、、かし全国社会保険庁のデータによりますと実際には同時多発テロが起きる以前に既に36万2,000人の雇用が失われているという事実。、、がありますまた2003年の第一四半期ではこの前の四半期に比べ、63,157人の正規雇用が失われました。全国社会保険庁によりますと、フォックス政権になってからの正規雇用者の失業数は5,141,949人に達しました。

CTMの活動方針

 CTMの今年の目標は、団体交渉、賃金、契約の見直しにより、自由な労働組合運動を擁護していくだけではなく団結権、団体交渉権、スト権の尊重や、現在の状況の中での雇用や労働条件の確保を求めていくことであります。
 同時に、労使労働会議の中で経営者と労働者間で合意された労働法に関する改革のイニシアティブを促進していきます。具体的には、民主主義制度の強化に積極的に参加し、次回の選挙では当選した多数派を尊重するとともに、議会の上下院で労働者を代表する議員の政治的主張を擁護し、こうした労働者を代表する議員をつうじて労働者の福祉を促進するための労働法制の改革をめざし、議会での提案・参加・監視の活動を行っていきます。組織の原則とプログラムにのっとり、戦略的な分野での国家の主権の尊重を擁護しながら、経済、財政、労働分野での構造改革に関する討論には全面的に参加して監視を行います。更に、未組織労働者の組織化の活動を継続す9ることで、労働者の権利を保護し改善し、また、労働者の精神的、物的、経済的な生活条件を向上させ、更には、世界の全ての労働者との交流や連帯を目指していきます。また、労働者の権利の侵害のすべてに反対を表明していきます。

具体的な運動方針

 CTMがどのような活動を行ってきたかと言いますと、労働者の経済状況が悪化していますので、これを少しでも改善するため、現在の経済状況の中で、賃金や労働契約に対し。、ての見直しを行っています厳しい交渉の後労使労働会議に属している経営側と労働者団体の間で合意に至った労働法改革のイニシアティブを提出できることになりました。ただし、このイニシアティブはまだ固まっていませんので、UNTも独自の提案を行いました。このイニシアティブはまだまだ改善できると思いますので、労働者の労働条件を損なうことなく、雇用の維持を支援していくようなものにしていきたいと思います。私どもCTMは革命的な性格を持っている組合ですので、PRI(制度的革命党)を支持し、活動に活発に参加しています。また、司法的・民主的な秩序を尊重しながら参加しているものですが、PRIに対しては労働者の代表を党の活。、動に参加させる事を要求していますつまり労働者の権利を直接擁護し改善できるように、労働者の代表を立法機関に送るための支援をしているのです。
 また、CTMに加入する労働者は国内で催される様々な行事に参加し、常に、CTMの原則やプログラムを養護しながら、国家の構造改革について討論してきています。
 また、CTMのメンバーを様々な国際的な行事に参加させ、情報や体験を交換するだけではなく、CTMの労働者と世界各国の労働組合の仲間との友好や連帯を強化しようと努めております。

メキシコ全国労働組合(UNT)
エドワルド トーレス アロヨ

メキシコ電話交換手労働組合 社会コミュニケーション部長

 

国内の状況

 我が国で一番重要な出来事は、民主主義への移行だと思います。皆さんご存じだと思いますけれども、我が国は70年間にわたり、一党が政権を独占してきました。このために我が国の政治状況は、ある面で悪化してきています。現在、移行期にあると言えますが、これは大変難しい作業です。しかしながら、私どもは30年間、メキシコの民主化のためにいろいろな活動をしてきました。民主主義の活動を始めたのは、残念ながら労働者ではありません。これは学生や学者で、1968年に民主化運動を始めました。その後、PRI(制度的革命党)の内部に混乱が発生し、その党内の混乱を利用して、私たちがメキシコの民主主義への改革のために作業をしているところです。PRI内部の混乱により新しい政党が生まれました。新たな左派の政党、PRD (革命民主党)という政党です。新しい政党が生まれたので、メキシコには3つの政党が存在することになりました。右にはPAN(国民行動党)があり、真ん中にPRIがあり、左にはPRD(革命民主党)があるわけです。3つの政党が生まれたことで、我が国の政治は安定してくるものと思います。
 社会も現在では成熟してきていると思います。成熟度をあらわすのがこの日曜日に行われた選挙で、選挙民は現政権に対してノーと言いました。また新たに生まれたPRD(革命民主党)が強化され、メキシコでは左派の力が強化されてきていると思います。現政権、、はいろいろお金を使ったり時間を使ったりマスコミを利用して、政権への支持を有権者に訴えたわけですけれども、有権者は現政権に対してノーと言いました。つまり我が国の有権者は、政治的に成熟してきていると言えると思います。

UNTの活動方針

 このような政治的背景の中で、私が所属しているUNT(メキシコ全国労働組合)は、1998年11月28日に誕生した比較的新しい組織です。UNTは、最近、ICFTUに加盟することができました。そのおかげで今回、こうしてJILAFのセミナーに参加できるようになりました。
 政治的な移行期の話をしましたので、それに沿って説明したいと思います。まず、労働組合は政治的なプロセスに参加しなければならない、労働者のため、国民のためにプロジェクト、プログラムを進めていかなければならないとUNTは思っています。重大な決定を行う場には労働組合が参加すべきです。労働者のためだけでなく、一般市民のためにも参加すべきです。UNTとしては、労働組合は国のさまざまな問題に介入していかなければならないと思います。いろいろな社会のセクターとの対話と合意を得て、解決することが大切だと思っています。
 労働組合は、ある時代の中で、変わっていく組織でなければいけないと思います。もし労働組合が時代の要請に対応して変わっていかなければ、国民からの支持が得られなくなっていくと思います。
 このような政治的変革がメキシコで起こっているので、私どもも、ラテンアメリカの多くの国々、特にチリやブラジルのルーラ大統領が進めているような社会経済審議会をつくろうとしています。こういった社会経済審議会はヨーロッパでは大変進んでいます。メキシコではまだ交渉中ですが、経営側と労組側とNGOの間で、こういう審議会をつくろうというプロセスがあります。特にこのプロセスを進めるに当たっては、カルロス・スリム氏という実業家が大きな力を発揮しています。この方はレバノン人ですけれども、ラテンアメリカでも最もお金持ちだと言われています。この人がリーダーシップをとってこのような審議会をつくろうという動きがあります。
 現在、世界がグローバル化していますので、労働組合運動もグローバル化しなければならないと思っています。資本がグローバル化していますので、労働組合運動もグローバル化。、の波の外にいてはいけません私どもは最近ICFTUに参加するようになりました。国際産別組織のUNIにも加盟しています。UNIにはラテンアメリカグループがありますし、通信部門のグループもありますので、それに参加しています。また、(OECD‐TUAC)。労働組合諮問委員会にも参加しています私どもの国はメキシコですので、OECDでは一番下のほうに位置するわけですけれども、TUACにも参加できるようになりました。
 メキシコはカナダ、アメリカと自由貿易協定を結んでおりますので、私どももカナダとアメリカの労働組合と大変密接な関係にあります。この3国の労働組合で、ともに状況を改善していくように努めています。

具体的な運動方針

 私どものUNTは、労働組合の中では小さな組織で、メキシコで一番大きな組合運動はカルロスさんがいるCTMですが、私どももUNTとしていろいろな努力をしてきました。例えば、セディージョ政権のときには、社会保障法を変えさせることができました。現在は連邦労働法の改正に向かって作業をしています。私どもの労働組合は、それ以外にも国の税制改革も要求しております。また、私どもはPRDとともに、連邦労働法改正の提案をしているところです。改正については2つの提案があり、一つは、私の同僚のカルロスさんが属しているCTMが出している案であり、もう一つはUNTが出している案であります。労働法改正については42の提案がなされており、その中でUNTとCTMが、2つの大きな提案をしています。2003年9月1日に新しいプロセスが始まりますけれども、42の中で私どもの2つの提案だけしか話し合われないことになっています。議員から、42の提案がある中でこの2つだけを審議していくという約束を既に取りつけています。
 私どものUNTは、階級闘争の概念に対して、ほかの組合とは違った考え方を持っています。私どもは経営側を敵ではないと考え、生産性の向上についても、雇用の拡大についても、品質の向上、効率の向上についても、既に経営側と合意に至っております。