2001年 メキシコの労働事情

2001年7月12日 講演録

ダニエルラウルアレヴァロガジェゴス
酪農食品労働組合労働局担当

 

国内の状況

 1940年代から1990年代に、CTMが支持している制度的革命党(PRI)政権が続き、この期間、労働関係でも多くの成果 が上がりました。その間、労働界では組織化が進み、CTMでは民間の組織の大体80%ぐらいを組織化することができました。CTMのイニシアチブのもとに、様々な労働者の権利が達成できました。例えば労働裁判所ができましたし、労働者を保護するような法律もできました。三者から成る最低賃金審議会などもできました。また三者を代表とする国家住宅庁もできました。この国家住宅庁については25年間活動していますが、その間に100万軒以上の労働者向けの住宅をつくっています。そして労働者は給料の20%を払うだけで家が自分の物になるので、これはとてもいい制度だと思います。
 しかし、90年代に入って、我が国の状況というのは少しずつ変化してきました。特に我が国の市場が閉じられていたものが、グローバル化の波に乗って開かれた市場になりました。そして私どもが支持するPRI(制度的革命党)も次第に力を失っていき、以前は国会で与党でしたが、今は過半数を占めることができなくなり、大統領も自分の党から選出できなくなってしまいました。こういう状況になったのも、すべては経済の開放が原因だと思います。民間の企業の労働者は、今までに達成してきたいろいろな成果 を失おうとしています。例えば、労働者を保護する法律を改正しようという声も上がっていますし、また労働裁判所も1人の民事の判事から成る普通 の裁判所に変えようとしています。同時に、労働者のための住宅庁をなくすとか、社会保険庁をなくすとかいうような声も出てきていて、一部の改革は既に行われています。
 経済のグローバル化はいろいろな問題を起こします。例えば、政府は現在民営化を進めており、我が国で大変重要な位 置を占める、石油産業や電力産業の民営化を行っています。また民営化はこういった産業だけではなく、銀行にも起こっています。100年以上メキシコにはメキシコの銀行がありましたが、最近では外国の資本が入ってきました。スペインのビルバオ・ビズカヤ銀行やサンタンデル銀行、サンテ、シティバンクなどに買収されて、今ではメキシコには外国の銀行しかなくなってしまいました。しかし、政府はこういった民営化というものを、生き長らえるための手段として許容しています。したがって、小規模な銀行や小規模な企業などは消えていく可能性もあります。小規模な銀行や企業が、大規模な銀行や企業に買収されていく可能性があります。しかし、こういったプロセスを労働組合はある程度は許容しなければならないし、労働者のためにできた諸機関も、ある程度は犠牲を払わなければならないと思うようになってきているのも事実です。
 ここで重要なのは、労働関係を安定化させる法律をつくることだと思います。例えば、今経営側は賃金を月給ではなく時間給で払おうとしています。つまり我が国に今まであったような年功制の賃金やボーナス制度、その他の恩恵を含めた給与制度というのをなくしていこうとしています。現在、我が国の経済成長率は3%と大変低いものです。そして政府はこのように経済成長が低いのは、労働組合に柔軟性がないからだと非難しています。CTMとしては、やはりある程度の柔軟性は必要だと思っています。そのかわりに私どもが求める必要最低限な条件だけは守ってほしいと要望しています。そういうことで、経営側と一緒に基本原則というものを決めました。これは新たな労働の文化と呼ばれる基本ラインになっています。
 労働者や生産セクターに働く者は、社会が変わりグローバル化が進んでいる中で、こういった課題に立ち向かう必要があります。しかしこのときに重要なのは、人間の労働で認めなければならない倫理的な価値を認めて、全体的、社会的な義務として人の尊厳を認めることが大切です。そして国の経済をより確固としたものにするとともに、企業内の人間は、人間として法律が認める権利を保障されるものでなければならず、富を生むプロセスが基盤となり、企業に参加する権利があるものと考えることが大切です。