2015年 コスタリカの労働事情

2016年1月22日講演録

Rerum Novarum労働組合同盟(CTRN)/コスタリカ
イレニア・オルティス・セシリアノ(Ms. Ilenia Ortiz Ceciliano)

住民登録・有権者登録所労働組合(UNEC)事務局長兼CTRN議事録担当書記

 
 

1.労働情勢

(1)物価上昇率が一転してマイナスに(疑わしい統計指標)
 コスタリカの国内総生産(GDP)の成長率を見ると、2013年の2.1%から2014年は2.2%と横ばいで、2015年は2.3%の見通しとなっている。また物価上昇率は、2013年の3.7%、2014年の5.1%であるが、2015年は一転してマイナス0.2%の見通しとなっている。労働組合は2015年の物価上昇率見通しについて、政府が増税するために公表した作為的な数値ではないかと分析している。なぜならば、実質GDPが大きく変動しない中、突然物価だけがマイナスに転じるのは、何らかの意図を感じるからである。

(2)三者構成で決定する最低賃金
 コスタリカの最低賃金は、産業・職種別に細かく最低賃金が設けられている。この多数の最低賃金を設定するために、政府、使用者、公共部門の労働組合それぞれの代表からなる三者構成機関である「国家賃金審議会」が運営されており、そこで6カ月毎に水準を決定している。この審議会を構成する労働組合の代表が公共部門である理由は、コスタリカは90%が公共部門の労働組合で構成されているからである。
 また、インフレ率の定期調査は国家統計庁が担当しており、その結果は、国家賃金審議会が賃上げ率を決定する際に重要な指標となっている。

(3)労働時間 
 法廷労働時間は、1日8時間で週48時間となっている。午後から夜の勤務になる場合は1日7時間で週42時間、夜勤の場合は1日6時間で週36時間となっている。さらに、残業は4時間以下と規定されており、時間外割増金は休暇などで代替することはできず、すべて現金で支払うことになっている。また、法律により、15歳以下の児童労働は禁止されている。

(4)悩ましい社会の諸相(不法移民とインフォーマルセクター労働、母子家庭、高い失業率)
 コスタリカは人口約484万人の小さな国である。そのうちの約100万人は移民労働者で占められている。この移民労働者は非合法であるため、働く場所はインフォーマルセクター(インフォーマルセクター労働率45.7%)となっている。
 労働者人口の約200万人のうち、32.3%が社会保険等の権利を有しておらず、安定した雇用に就くことができない。
 また、女性が家庭の長になっている世帯が非常に多いことも問題である。そうした家の子供は家計を助けるために、学校に通うことができず仕事をすることになる。女性が世帯主である割合は、1987年の17%から、2013年には36%と、この25年で2倍に増えており、3世帯に1世帯の割合で女性が世帯主となっている。
 さらに、9.2%という高い失業率も問題となっている。失業者のほとんどは、インフォーマルセクターか、労働組合のない民間部門の雇用に流れる場合が多く、そこで発生する労働問題に対し、労働者を保護することができない実態がある。
 しかし、コスタリカの政治家は、こうした不安定な社会状況を労働組合のせいにしており、労働者の権利を損なうような活動までしている。
 こうした状況に対し、労働組合は若年労働者に対して、労働組合運動に加入すればより良い労働条件で働くことができることや、団体協約を結んで労働者の権利を守ることができることを訴えている。

2.労働組合が現在直面している課題(民間部門に労働組合がほとんどない)

 直面している課題は2つある。
 1つ目は、公共部門の労働組合が大多数を占め、民間部門に労働組合がほとんど存在しないことである。
 2つ目は、政府がマスメディアを利用して「労働者や労働組合の権利は基本的人権であることを認めない」という組合運動に反対するキャンペーンを行なっているため、民間部門と公共部門の労働者間が対立の構図となっている。その背景には、公共部門の労働者は、労働組合の団体協約交渉によって大きな権利を得ているが、民間部門には労働組合がないため成果を得られないからである。

3.その課題に向けての取り組み(組織強化・教育の促進・権利の確保)

 課題の解決に向けて3つの取り組みを提起する。
 1つ目は、労働組合や産業別労働組合の発展・促進を図り、労働組合運動を強化する。
 2つ目は、組合員の人材育成である。これは市民や社会の教育としても意味をなすものであり、行動原理の認識や価値観、能力、技量などを高め促進するものとなる。このことを通して、自己改革のプロセスや労働組合組織の強化に繋がる。また政治的展望においても、新自由主義モデルに替わる持続可能な開発モデル構築という、変革の行動を導くための原動力になると期待されている。
 3つ目は、CTRNとして、国内の司法、政治、立法の分野でさらに大きな努力を払うことである。これまで自由な労働組合活動と結社の自由の全面的な権利を確立するため、ILOや労働関係の国際組織に対して、懸命な努力を行なってきたものの、いまだに望んでいる成果は得られていない。CTRNは、改めてその責任を認識し、望むべき成果の結実に向け役割を果たしていかなければならない。

4.その他特記事項

 民間部門には労働組合が少ないため、民間部門の労働者は保護されていない。そのため、労使間で問題が発生した場合、労働者は司法裁判所に訴えることになる。しかし、裁判所は労働者からの訴えに対して熱心に対応しないため、解決に10年以上かかることもある。この件に関して、ILOは何度もコスタリカ政府に注意を促しており、CTRNは議会に労働訴訟法案を提出した。これは労働裁判の迅速化を可能にする法案である。この法案は最近可決されたため、労働者が申し立てる労働関係の訴えが迅速かつ早期に解決することが期待されている。