2010年 コスタリカの労働事情

2010年9月3日 講演録

Rerum Novarum労働組合同盟(CTRN)
ミラグロ・マリア・ヒメネス・ベナビデス(Ms.Milagro Maria Jimenez Benavides)

全国看護士労組(SINAE) 執行委員

 

1.労働情勢

 コスタリカの経済データによると、2001年から2007年までGNPは増加した(508億9,000万ドル)が、以降減少し、2009年には440億6,000万ドルとなった。貧困層の割合は2000年から2005年までの間およそ20%だったが、2007年から2009年の間に18.5%に減少し、極貧層の割合も過去最低の4.2%となった。所得格差に関してはジニ係数0.40~0.45が維持され、2008年の賃金格差係数(ティル係数)は0.40であった。
 就業人口の62.02%が都市部に集中している。中部地方には67.24%が集中し、最も比率の低い太平洋沿岸中部地方と北ウエタル地方はそれぞれ4.95%と5.23%。性別就業人口は男性が64.73%を占めている。部門別就業人口は公共部門が14.31%、民間部門が85.48%、国際組織で働いている者が0.17%である。
 コスタリカの失業率は2008年の4.9%から2009年には7.8%に増加し、極貧層世帯が強く影響を受けた。この時期に民間部門では40,000件以上の雇用が失われた。経済活動参加率は55.83%。可視潜在失業率は4.77%、雇用率は52.82%。一般的に男女間の格差が大きく、女性は雇用率、潜在失業率、失業率で不利な立場にある。

2.労働組合が現在直面している課題

(1)労組統合(コンセンサスを得るためには労組の統合が必要)。
(2)看護関係労働者が異なった労組に散在している。
(3)労働者の権利が十分に認知されていないため、組合運動の古い体質と経験主義的な行動を打 破する必要がある。
(4)専門職と非専門職との間に大きな賃金格差がある。
(5)管理職の大半が経営に関する高等または専門的な教育を受けていない。
(6)現在の労組の組織拡大方針に「少数グループ」の加盟が考慮されていない。
(7)法制関係の主な課題は、コスタリカが批准しているILO条約第87号と第98号の尊重と完全適用。

3.課題解決に向けた取り組み

(1)労組統合
 ⇒労組間の戦略同盟関係を確立し、様々な組織の最も重要な要求を網羅する共通アジェンダ作りに努力する。
 ⇒ナショナルセンターの創設:我が国のすべての労組を代表し、組合員からの分担金によって成り立つ組織を創設し、個々の利益よりも集団の利益を優先させる。
(2)看護部門労働者の大半をSINAEに加入させ、力を合わせて、労働者の権利を要求する際により多くの存在感を示す。
(3)労働者の有する労働の諸権利について対話し、議論するための講習やワークショップを開催する。
(4)役職に応じた活動に基づき賃金の再評価を行い、看護部門の非専門労働者の実質賃金を改善 する。
(5)次のような分野で管理職レベルの能力開発を目的とした専門教育や専門講習を実施する。
 ⇒戦術企画。
 ⇒プロジェクト運営と資金運用。
(6)特に女性、若者、障害者、高齢者、年金受給者、定年退職者を加入させ、労組、労組連合ともに組合員数を増やし、これらの人々の要求事項を達成する。
(7)当局との会合、集会、デモ行進といった集団行動の様々なメカニズムを使い、労働・社会保障省(MTSS)に対し、ILOの第87号および第98号条約の規定の完全遵守を監視するよう要求する。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 全国看護士労組(SINAE)と政府との関係は最善という訳ではない。その理由は次の通り。
(1)要求の達成、最悪の場合は政府当局との会合を実現するために様々な集団行動(デモ行進、スト、集会)を行わなければならない。
(2)医療部門当局と交渉する機会は少なく、交渉が実現しても議論で提起された要求事項の大半は達成されない。
(3)政府は労組との交渉で末規定の事柄の完全履行をフォローしておらず、そのつもりもない。
(4)世銀 (WB)、国際通貨基金 (IMF)、米州開発銀行 (IDB) などの国際金融機関が準備した政策を強要する傾向が国家にある。

5.多国籍企業の状況

 主な多国籍企業は製造業、金融、サービス業。製造業ではINTEL、金融ではゼネラル・エレクトリック、ウエスタン・ユニオンがあり、サービス部門ではウォルマート、HPなどがある。
 多国籍企業に関わる主な問題は、(1)労働の柔軟化、不安定化(遠距離(在宅)労働、労働時間延長)、(2)賃金の不安定化、(3)職場の再編成(解雇)、(4)高い職能を持つ人材を必要とする雇用の創出――などである。