2008年 コスタリカの労働事情

2008年11月12日 講演録

Rerum Novarum 労働組合同盟(CTRN)
ホセ エドガルド モラレス ロメロ

 

 輸出拡大や経済成長があったにもかかわらず、コスタリカの賃金は実質的に減少している。輸出の増加によりGDPが大幅に増えたが、雇用機会を生まず、貧困は低減せず、格差が増大している。
アリアス・サンチェス政権の国家開発計画により、コスタリカで新規に創出される雇用の45%はインフォーマル雇用となっている。政府は有効な雇用政策をとっていない。
 統計庁の調査によると、コスタリカの総人口が443万100人、労働力人口は201万8,444人、そのうち失業者が9万2,792人、失業率は4.6%であるが、昨年の6%と比較するとやや低下している。産業分野別の労働者比率は公共部門労働者が13.9%、民間部門労働者が86.1%と民間部門の労働者が多いが、その多くがインフォーマル雇用である。インフォーマル雇用は34%前後と推測されている。公共部門は、中央政府労働者が6.6%、残りの政府部門(独立行政法人と地方政府など)労働者が7.9%となっている。
 CTRNは、ディーセント・ワークという観点から国が雇用政策をとるよう提案してきた。これは国の継続的な政策で、マクロ経済政策に組み込まれたものでなければならない。特に重要なことは、経済政策の目的をはっきりさせることである。
 社会・労働・環境の制作を履行するためには、コストがかかることを認識し、権利の審査や行政司法保護制度の強化を伴った促進政策のもとでのインセンティブを得て進展させなければならない。このためには、生産的で経済的な政策と連携した雇用・労働政策を生み出すことから始めなければならない。雇用・労働政策としては、A.総合的なビジョンでの政策設計 B.質の高い雇用の創出をマクロ政策の目的とするよう、特定の基準を作る。また、インフレや財政赤字の抑制にも重点を置く。C.税制政策の課題認識や、開発に必要な投資のための予算増額の必要性を認識させる意識啓発キャンペーンを計画し実行する。などがあげられる。
 これは一部の企業のためではなく、国のためになるものでなければならない。そして、教育や訓練、研究、技術の開発などに投資を行い、それと同時に教育関係の奨学金制度や教育関係の融資制度も強化する必要がある。
 CTRNは、さまざまな労働組合、関連団体や障害者、農民、先住民、女性、若者、共同組合員のグループなどとともに、共通の提案を作り、経営側や政府と話し合いをもち、さまざまな分野からの同意を得て、国家雇用政策を策定するよう努力している。この政策には、「労働における基本的原則及び権利に関するILO 宣言」にうたわれている労働の権利であり、この権利を行政や司法当局が尊重することや移民労働者の保護なども含まれている。
CTRNと政府の関係は、政府がアメリカとの自由貿易協定を受け入れたため、緊張したものになっている。しかし、唯一労働教育省との関係は継続的に良い関係を持っている。
 コスタリカにはさまざまな分野で多国籍企業が存在しているが、連帯活動を行う労働組合に反対しているところが多い。

2008年2月6日 講演録

Rerum Novarum労働組合連盟(CTRN)/コスタリカ
アラン グスタボ サラサール サモラ

SITRAPEQUIA石油化学関連労働組合青年組織書記兼CTRN青年委員会コーディネータ

 

 コスタリカの人口は430万人、一人当たりGDPは4,877ドル、経済成長率は7.9%、失業率は6.0%(いずれも2006年)である。
 この失業率は一見低いと思われるが、実際には全ての労働者が、フルタイムで働ているわけではなく、また法定の最低賃金を上回る賃金を受け取っているわけでもない。完全就業率、つまり週48時間労働し、最低賃金を上回る賃金を受け取っている労働者の比率は54.4%に過ぎないのである。
 多くの労働者が現在不完全労働者(労働時間週48時間未満の労働者、週48時間以上の労働を探しても見つからない労働者)や潜在不完全労働者(47時間以上働いても、最低賃金以下の労働者)であり、こうした労働者が存在する原因の多くはインフォーマル経済によるものである。インフォーマル経済については公式な統計はないが、ILOの世界の雇用情勢(2006年)によると、コスタリカのインフォーマル率は41%以上になっている。
 雇用と経済活動には相関関係があるといえる。この25年間に実質的な変化が起り農林水産業、製造業、鉱業、採石業に代わって商業や観光業などが盛んになった。特にサービス業が日ごとに増加している。これで経済や雇用創出の傾向が分かるが、サービス業ではインフォーマル雇用が多く生まれ、社会保険に加入しない労働者が多く存在することになる。
 ここで労働運動の課題について述べる。

1. 尊厳あり質の高い雇用政策のための闘い
 重要な課題の一つがディーセントワークの実現(ILOの理念)であることは疑いない。コスタリカではこれに尊厳と質という理念を加えている。この理念は労働における基本的原則および権利に関するILO宣言(1995年)が定めている、最低限の権利を守ることである。この場合は単にこの原則を守るだけでなく、労働者が自分の自由意志で選択した仕事に尊厳をいだき、また、この仕事は総合的かつ人間的成長と発展を強化するものでなければならない。重要な課題の一つは、フォーマルな仕事を生み、インフォーマルな雇用を減少または根絶するよう、国の政策を定め実行することである。これに加え、質の高い雇用を生んでいかなければならない。

2.教育の質の向上と教育を保証するための国家予算の獲得
 これは、教員養成課程や教育のカリキュラムの妥当性を検討する必要性、教育インフラの改善、学生の教育における先端技術の適切な利用であり、誰もがアクセスできる適切な教育を保証し、経済の監督機関のような市場推進機関の一部が以前目指していたような、ロボットを養成するのではなく、人間が総合的に発展できる教育を目指すことである。また、十分な教育を受けることの出来なかった人たちが職業教育を受けることが出来るように闘っていく必要もある。重要な課題としては、予算措置があり、少なくともGDPの8%にするために闘っていく必要がある。これには発展の基本的な要素としての研究プロセスを正しい方向に導くことが出来る組織として、公立大学の参加が必要である。

3. 全国民の社会保険へのアクセスと社会保険担当組織強化のための闘い
 コスタリカでは社会保険制度が、ある程度前進したのは事実であるが、複雑な状況により、前進と同時に後退しているのも事実である。医療に関しては100%に近い国民が医療保険機関による医療サービスを受けることが出来る。しかし、医療保険期間は政労使三者から出資を受けているため、インフォーマル雇用や、掛け金を払わない企業が増えたことにより、数年前から運営状態が悪化している。さらに適切なインフラ整備や必要な機材整備、住民に質の高い適切なサービスを提供できる人材を常時教育する面で、資金不足がおきている。また、組合運動が責任を負い活動している大きな課題として、国民全ての年金制度へのアクセスがある。複数の柱からなる年金制度があるにもかかわらず、国民の40%がこの制度の対象になっていないため、大きな課題になっている。

4.尊厳と質の高い労働を保証するための自由な組合活動の実現
 労働運動が直面している重大な課題の一つは、団結権、団体交渉権、スト権という3つの基本的な権利における自由な労働組合活動である。政府や経営側は、コスタリカは最も民主主義が確立した国であると国外に向け表明しているが、実際には国際協定(ILO条約)の遵守や適用の面では、非常に遅れており、ILOの監督機関で何度も討論されている。したがってこの民主主義は不完全である。民間企業で労働組合を作ろうとすると、組合に入ろうとする労働者は迫害され、解雇されたり、雇用されないようブラックリストに載せられたりする。就業人口のうち8.72%しか組織化されていないのである。組織化されている労働者のほとんどは公共部門の労働者であり、全体の68.06%を占めている。法律では農民やインフォーマル労働者などの自営業者が組合を結成することを禁じてはいないので、二番目に多いのは自営業者の組合であり25.57%を占めている。この面では、権利を擁護する国内機関とILOや国際人権裁判所などの国際機関に訴えるなど、常に闘っている。
 民間部門では、労働組合がなければ団体交渉権は成立しない。公共部門では憲法裁判法廷での判決により、交渉により取り決められた条項で定められている権利が排除されることから、団体交渉権がなくなり、公共サービス部門の多くの労働者が交渉することを阻まれている。

5. 民間部門での労働組合の結成
 経営者や政府、政治家、マスコミが組合運動に反対する文化があり、反組合運動を推進しているが、われわれの重要な課題の一つは民間部門に労働組合を作ることである。また、現在ある労働組合の多くが企業別組合であり、組合の強化には貢献しないため、将来的には産業別組合やナショナルセンターを結成する必要がある。
 また、大きな課題として多国籍企業における組合の結成がある。多国籍企業は柔軟な勤務時間体制をとり、現地の生産活動や租税制度に組み込まれず、労働組合は不在など、特別な条件で国内に進出している。そのため、組合運動としてはまず地域内にある多国籍企業の組合と接触した後、本社の組合と接触し、多国籍企業に組合結成を認めさせ、労働条件の合意に至る戦略を練ることになる。フォーマル経済セクターの就業人員のうち組合に加入しているのは現在わずか0.59%にとどまっている。

6.ネオリベラリズム・モデルに対する恒常的な反対
 われわれは25年前から導入されたネオリベラリズムに対して恒常的に反対の活動を行っている。このため、さまざまな市民組織とともに開発システムの提案作成に従事してきた。特にDR-CAFTA(米国との自由貿易協定)はこのモデルの一つの手段であるため、労働組合はこの貿易協定に反対し協定の実施を阻むことに取り組んだ。
 また、この協定が地域の発展や国の発展を促すことになるよう努力することも課題であり、DR-CAFTAを今のような単なる自由貿易協定にしないようにすることが課題である。

7. 環境保護への取り組み
 環境保護および、国のもっとも大きな資源の一つとなっている天然資源、自然公園、湿地帯、野生動物生息地の保護。これも労働組合の取り組むべき大きな課題である。鉱物の露天掘りや環境に悪影響を与えるパイナップルやバナナなどの大規模農業への反対運動に参加している。

8. 貧困との闘い
 貧困との戦いも組合運動の重要課題である。近年コスタリカはジニ係数などの統計によると、不平等が最も増加している国である。われわれは雇用問題、教育の機会、社会保険加入問題を解決するほかに、富のより平等な分配を目指した社会保障プログラムに対する国家予算の強化が必要であり、それとともに財政政策を変え、現在免税措置を受けているダイナミックな経済セクターが税金を払うようにさせなければならない。