2001年 トリニダード・トバゴの労働事情

2001年7月12日 講演録

ジョアンヌデフレイタス-ウイルソン
銀行労働者組合副会長

 

国内の状況

 経済は英国による植民地支配によって大きな影響を受けました。初めは奴隷制度から始まりました政治システムは議会制民主主義首相と大統領がおり、大統領は首相のアドバイザーをしています。英国から独立したのは1962年、ごく最近のことです。76年に共和国になりました。1970年には多くの市民による社会的な暴動が起こりました。このほとんどはアフリカ系市民によるもので、アフリカ系市民は自分たちが排斥されている、ほとんどのビジネスあるいは土地の所有者は、ヨーロッパ系、中国人であるという不満を持っていたからです。1990年にはクーデターの未遂事件が起きました。これは我が国が多民族であって、モスリムの人たちが政府を転覆しようとして起こしたクーデターの未遂です。そのクーデターに使われた拳銃はリビアから持ち込まれたものだといううわさがありました。
 我が国には二大政党があります。1つは国民国家運動(PNM)で、これは主にアフリカ系の人たちが参加している政党です。もう一つは統一民族会議(UNC)、これはインド系の人たちによる政党で、この政党は5年間第2期目の政権をとっています。首相は元砂糖産業の組合リーダーでしたそれゆえに統一民族会議のほうが労働者に近い政党と考えられています現政権は政権をとって以来幾つかの労働関係の法律を制定しました。一つは最低賃金、もう一つは母性保護です。職場における健康、安全と労働災害などにかかわる法律も検討されています。
 労使関係はインダストリアル・リレーション・アクト(労使関係法)によって1972年に規定されたものです。労組はそれを結成したときに登録をしなければいけないとか、さまざまな規定があります。また問題解決のための労働裁判所も設定されています。裁判官は政府によって任命されています。労使間の協議は直接に組合と経営者の間で行われ、政府はそこに介入しません。ただし、話し合いが解決に至らないときには、労働省あるいは労働裁判所に申し立てをします。  NATUCは1991年に2つの組合が統合してでき上がったものですが、2つの組合のイデオロギーが違っているために、あまりその関係はよくありません。
 我が国の労働組合の歴史というのは1930年代の石油産業に発しています。トリニダードトバゴの経済はプランテーションに基づいたものでした。そこではココアやコーヒー、砂糖を生産していましたが、すべて輸出に回され、英国の望むものを我々はつくり、国内では消費されてはいませんでした。その後石油産業に重点が移り、80年代には石油価格の高騰からいわゆるオイルブームの時代がきて、賃金も高騰しました。消費も盛んになり、輸出も盛んになりました。それで労働の価値が非常に高まり、組合活動も容易になりました。そのときには、組合と経営者の間で賃金交渉が盛んに行われました。  現在では、政府はさまざまな国営企業を民営化しようとしており、民営化により経済の多様化ということも図ろうとしています。
 社会環境ですが、多文化、多民族、多宗教の国家です。ただ識字率は非常に高く95%です。失業率は24%、現在では18%と政府は発表していますが、この数字はもっと高いのではないかと疑っています。また若年層に犯罪が多く起こり、エイズの罹患率も19歳から25歳の年齢層に非常に多く発生しています。実はエイズはカリブが世界中で一番罹患率が高くなっています。またDV(家庭内暴力)のケースも非常に多発していて、そのほかにも殺人や自殺、いわゆるパッションクライム、感情の犯罪ということが非常に多く起こっています。現在、6トリニダードトバゴ・ドルは1アメリカ・ドルです。非常に高い専門性を持った看護婦さんや教師などがアメリカ本土に移住してしまいます。そのために資格、能力を持った人たちの流出がゆゆしい問題になっています。

NATUCの活動

 実際には理想的な機能はしていません。それは加盟組合の数が少ないこと、また財政的な問題があるからです。組合費で賄われるのはほとんど役員のサラリーだけで、活動費用は欠乏していて、実際には多くの活動の計画をすることはできません。
 これからの問題としては、間もなく始まるカリブ海単一市場経済に対して、あるいはEU経済に対しての準備です。このどちらも実際の労働者にとって大きな影響を与えるからです。それによって労働条件が悪くなったり、長時間少ない報酬によって働かされるなどの問題が出てくるからです。また次には国13営企業の民営化に対しても対処しています。民営化によって必ずや一時解雇や解雇される人たちが多く出てくるでしょうし、またその恩典も少なくなるからです。また政府が法律を改正するときには、必ず三者の一者として労働組合が参加できるように求めていて、実際にこれは機能しています。
 そしてもう一つの取り組んでいる重大な問題は、ナショナルセンターの統合です。ナショナルセンターは4つに分裂してしまいましたが、これは組合員たちがこの運営に満足していなかった結果 です。というのは政治的には 中立であるべきナショナルセンターの会長及び事務局長が政治的にある政党に加担し、そこからの指名などを受けているからです。
 今年になって行った活動ですが、その1つはカリブ海の単一市場経済に対応するセミナーを行いました。これには非常に多くの人たちが参加し、大変好評でした。もう一つは首相にNATUCが要求し、会見を求めました。この結果 はまだわかりませんが、ともかく首相が聞く耳を持っていたということで成功であったのではないかと思います。2月になって、ソーシャルコントラクト(社会契約)の条約が調印されました。ここにはさまざまなことが盛り込んでありますが、これはまだ紙の上だけのことで、実際の行動は何もここから生まれていません。NATUCには長年たくさんの闘争を経験している人材が多くいます。しかし、過去の闘争は闘争として置いておき、もう少し長い将来を見据えた活動をするようなセンターに改革していきたいと思います。