1999年 トリニダード・トバゴの労働事情

1999年6月30日 講演録

クリストファー・ジャクソン・スミス
銀行一般労働組合 書記長

 

労働組合運動の歴史と活動

 トリニダード・トバゴは1962年に独立し、その後、民主的に選ばれた下院の代表によって治められています。また同時に、任命される上院によっても治められています。これは共和国憲法によって規定されているとおりです。
 我が国の人口は130万人強です。その人口を構成している人たちは非常にコスモポリタン、世界中から来ている人たちであり、また識字率は非常に高く、平均98%です。トバゴは汚染されていない美しいリゾート地がたくさんあります。きれいな海岸、ホテル、スポーツ施設などがたくさんあります。また熱帯雨林が大変緑豊かに茂っています。
 トリニダード・トバゴの労働組合運動は油田で発生したということがいえます。1937年に、チュバル・ユライア・バトラー氏が抗議行動のストライキを指導いたしました。トリニダード・トバゴの労働運動は全国レベルでの指導者たちを多く生み出してまいりました。今の名誉首相はパラディオ・バンディ氏ですが、彼自身が砂糖産業の労働組合指導者の出身です。ちょうど日本で戦後起きたと同じように、トリニダード・トバゴでも2つの思想対立が労働組合運動の中にありました。それはイデオロギーの違いによるものでした。その結果、2つの労働組合の組織、連盟が生まれました。1つはトリニダード・トバゴ労働連合でありますが、これはどちらかといえば温和な方のグループであり、もう一つ、労働組合会議の方はどちらかといえば社会主義的な傾向がありました。
 1980年代の後半になってさまざまなレイオフ、また人員削減がありましたので、2つの連盟が合併して一つの組織、つまり全国労働組合センターが生まれました。この統一組織は、トリニダードトバゴ全国労働組合センターといいます。このセンターは現在、国会に代表として事務局長を送っています。今の政府が選挙で選ばれて政権を確立した以後、首相が労働運動出身であるということもあり、新しい労働法をどんどん作っていく傾向がみられます。現在審議中の労働法改正の中には労使関係法、失業・退職金法の2つがあります。労働者災害補償法と環境法も現在再検討中です。
 ここ10年間にトリニダード・トバゴの経済は石油を基幹産業とする経済から新しい基幹産業へと移ってきました。その中には天然ガス、石油及び製造業への転換があります。1998年に我が国は海外からの投資を20億ドル以上引きつけました。これは南北アメリカ大陸の中で一番犬きな額です。ただ、このような大きな我が国への投資が問題をもたらしてきています。それは、これらの投資のほとんどが資本集約型の産業に行われていて、労働集約型の産業ではないせいであります。つまり、ほとんどの投資は新しい技術、ニューテクノロジーを中心に行われているのであります。
 そのような大変な額の投資が行われているにもかかわらず、失業率は、公式の数字でいまだに14%ということになっています。ただ私たち組合側は、これは20%に近いのではないかと考えています。最低賃金も1998年に改定されました。現在7トリニダード・トバゴ・ドル(約1米ドル・時間給)です。

求められる労働と資本と共同行動

 トリニタード・トバゴ全国労働組合センター(NATUC)は多くの三者構成の委員会に参加しています。これは労働者及び労働者の代表の意見が政府の新しい政策形成過程で反映されるためであり、それを保障するためであります。今日、国際的にも国内的にも図式が大変変わりました。市場経済制度の方が好まれつつあります。我々の闘争は伝統的な言葉ではもう定義されていません。労働は、社会的なパートナーとみなされています。この明らかな意味は、階級闘争というものがもう強調されなくなったということです。我々の組合は社会的パートナーシップの時代に入りました。その中では私たちの意見もコンセンサス形成に貢献しています。我々の闘争は再定義されました。しかし、我々の歴史のどの時期においても我々の利益というものがこれほど大きな意味をもつ時期はなかったのです。現在では、我々のような非常に小さな開発途上の国の中において労働と資本が共同行動をしなければならないということは明らかです。
 1970年代には我々は反逆者でした。歴史は我々反逆者の側につけました。私たちはその名前にふさわしい労働組合を打ち立て、私たちは労働組合運動にその痕跡を残したのです。そして組織指導者の一団を育成し、労働者の利益を実現するための機構をつくりました。今は労働者階級がこのような多くの複雑な挑戦に過去、遭ったことは一度もありません。
 中でも一番大きなチャレンジはグローバル化政策によってもたらされています。賃金の抑制、賃金の凍結、経済及び金融の自由化及び、一国の経済の開放化が今の時期の政策です。このような新しい政策が次々と出てきていますが、その中の中枢神経といえるのは大変な量の新しい契約労働者の再導入であります。このような非正規形態の雇用により、普通の労働条件というものが労働者から奪われています。もし労働側がこのような新しい傾向を受け入れるならば、労働側にとって大変な不利益になることは明らかです。というのは、正規の雇用が非常に少なくなり、一方、非正規の雇用形態による労働者が非常にふえるからです。そのような労働政策は経済の不平等の中心をなしています。トリニダード・トバゴにおいては、現在多くの組合が合併を模索しています。例えば私自身の組合である銀行一般労働組合は同じ金融部門の銀行従業員組合との合併を今考えています。
 結論として、もし労働組合運動がトリニダード・トバゴにおいても、また世界においても生き残ろうとするならば、運動の重点は訓練と再訓練です。これは労働者のみでなく、労働組合の活動家、そして指導者たちも訓練、再訓練に重点を置かなければなりません。もしそうしないならば、私たちの労働運動は恐竜となり過去の遺跡と成り果てるでしょう。