2003年 ジャマイカの労働事情

2003年7月10日 講演録

ジャマイカ全国労働組合連盟(JCTU)
バーリントン クライブ ドース

労働組合会議 副書記長兼JCTU官公部門中央執行委員

 

国内の状況

 ジャマイカの経済は現在非常に低迷しています。原因として学者は、政府によるマクロ経済の運営の誤りを挙げています。経済の低迷は産業、労使関係にも悪影響を及ぼしています。労働組合の活動にかかわる現在の問題としては、高い犯罪率、社会での暴力、公共部門での赤字、国の大きな負債、エイズ問題などがあります2002年の犯罪発生率は2001年に比べて12.5%下がったとはいえ、未だに非常に高く、社会秩序、経済成長に悪影響を及ぼしています。国際機関は、ジャマイカの経済発展を妨げている最も大きい原因は高い犯罪率にあると言っています。IMFは2002年の報告の中で、ジャマイカ政府が犯罪防止のイニシアチブをとるか否かが、ジャマイカの社会の安定、ビジネス環境の改善の鍵を握っていると、言っています。
 高い犯罪率の悪影響として1番目には、収入減によって生活難に陥る個人や経営難に陥る企業が増えている事です。2番目の弊害としては、犯罪率が高いがための労働損失日数が増え、生産性が低下している事です。生産性が低下しているために企業は、この厳しいグローバルマーケットで競争力を失いつつあります 。また、もう一つの弊害としましては、ビジネスの運営コストが非常に高い事です。つまり犯罪が多いので、恐喝などによって失われる金額が大きく、また警備会社を雇う金銭的負担も大きくなっています。ジャマイカから撤退した企業の中には、警備費にかかるコストが高過ぎると言う企業もあります。犯罪率が高いので、海外からの投資も進まず、治安が悪いためジャマイカには投資しないという投資家も増えています。もう一つの問題としては、治安が悪く社会情勢が不安定なために、技能の高い労働者が海外に流出していることであります。ジャマイカの国の赤字は、総額6,010億ドルに上ります。2001年度においては、GDPの152%に当たる350億ドルとなっています。また2002年度においてはGDPの9%になっています。
 国際的な債権者はジャマイカ政府に、財政的な措置を講じないとジャマイカの債務の格付を下げると警告しています。経済を改善し財政再建を図るために、2005年から2006年にかけて、ジャマイカ政府は幾つかの政策を計画しています。しかし、政府の新しい計画は、国民に新たな大きな困難に直面させるものとなっています。この具体的な政策として消費税の引き上げがありますが、これは国民の購買力を低下させるものです。現在、消費税、売上税は既に15%です。また、緊縮財政の実施も計画されています。特に賃金コストを削減する具体策が出ています。更に、金利の引き上げがあります。これがなぜ問題かと言いますと、投資家は金利が高い場合、政府の発行する国債などに投資して製造業などには投資しなくなるのです。このような金利の引き上げは、投資の流入を低下させ、経済の拡大、雇用創出を妨げる傾向があります。
 最後に、エイズ問題についてお話ししたいと思います。エイズは国の成長、開発にとって非常に大きな問題であり、健康面だけではなく、社会情勢、経済、国家の安全にも影響を及ぼす問題です。ジャマイカでは15歳から49歳の間の性生活を営んでいる人口の1~3%が感染していると推定されています。産婦人科に通っている妊婦の1.5%がHIVの陽性反応を示していると言われ、2001年には、4歳未満の子供たち、30歳から34歳の大人の一番の死亡原因はエイズだという結果も出ています。西インド諸島大学の感染病研究センターによると、2005年までにジャマイカの経済にエイズが及ぼす影響は、GDPで6.4%の縮小という結果が出ています。今までジャマイカでは、エイズ問題は、衛生省が中心となって取り組んできていました。健康面、行動学的に見て、エイズにどうやったら感染し、どうやったら防止できるかというようなことが対策の中心とされていました。しかし今は、社会のより多くの人たちを巻き込んで、エイズの及ぼし得る社会経済的な悪影響について、より広く考えていかなければいけない時が来たと思います。