2011年 ドミニカ共和国の労働事情

2011年12月9日 講演録

ドミニカ共和国全国労働者組合連合(CNUS)
Ms. ハッケリーナ ロサリオ エルナンデス サンチェス

 

1. 労働情勢(全般)

 ドミニカ共和国の経済の特徴としては、高い経済成長(過去15年の成長率5%)と、低い雇用増加率、富の集中、経営側の高い自由度と特典、自由な組合運動の制限、法律や国際条約の不遵守(例えばILO87号条約と98号条約)、不安定雇用が増え、正規雇用は減少、女性の不安定雇用、若年労働者の高い失業率、商業やサービス業の雇用増、生産セクターの雇用減等が挙げられる。労働人口の中では、インフォーマルセクターの労働者が大幅に増え、現在は57%となっている。
 ドミニカ共和国中央銀行が最近発表したデータ(2011年4月)によると、労働者人口は4,559,451人で、そのうちの3,893,645人が就業している。1,686,079人がフォーマルセクターで就労しているが、反面、2,207,566人がインフォーマルセクターで収入を得ている。インフォーマルセクターで働く人は、フォーマルセクターで働いている人より約50万人多い。
 また、就業人口の大半はサービス業に集中しており、979,252人となっている。その他のサービス業は以下のとおりである:卸小売業856,509人、農牧業570,634人、保税加工地区を含む製造業466,727人、運輸通信業302,928人、宿泊飲食業266,651人。国は主要な雇用主となっており、450,000人の公務員が雇用されている。
 このような不安定な雇用が増える中で、最も影響を受けるのは、女性と若者である。女性が主に就業しているのは、ホテル、レストラン、商業などのサービス業であり、失業やレイオフなどで大きな影響を受けている。また、若者も年齢を理由に失業の影響を大きく受け、収入の少ない仕事や不安定な仕事についている。
 このような社会と労働条件は、労働者にとって不利な状況をもたらしている。すなわち、雇用機会が少ない、組合組織率が低い、低賃金、社会から保護されない、社会から疎外される、資金やサービスへアクセスできない、特に、大きな不平等や貧困は問題である。
 世界経済危機は、ドミニカ共和国に輸出の減速、観光収入の減少、海外からの送金の減少をもたらし、この結果、消費が低迷し、人々の生活の質の低下につながった。これに加え、過去3年間は、アメリカや中米との貿易協定の影響を受け、国内の生産手段が大きく減少している。これにより、経済のインフォーマルセクターが増大し、国の経済の主要伝統産業の一つとなっている農産加工業が衰退した。

2. 労働組合が現在直面している問題

 (1) 労働者の団結権と団体交渉権の制限
 (2) 雇用の不安定化:自由な組合活動や労働者が自由に組合を結成する上で、大きな阻害要因になっているのは、下請け(派遣)契約制度である。これは、不安定な契約となり、一日12時間労働を強いられることにもなる。
 (3) 大量のインフォーマル労働者の増加
 (4) 低賃金問題:ILOが発表した2010年と2011年世界賃金報告によると、ドミニカ共和国の最低賃金の購買力はラテンアメリカ・カリブ地域で最低の水準にあり、ボリビア、ガイアナ、ハイチ、ニカラグアと同水準にある。
 これ以外にも、労働者や国民が抱えている問題として、教育、医療、安全、環境、暴力の増加、犯罪率の増加などがあり、組合員やその家族の福祉や生活の質を改善し労働者の組織を強化するためには、組合は大きな挑戦課題を抱えている。

3. 問題解決に向けた取り組み

 第1の対策としては、国内の既存のナショナルセンターの結束と強化が不可欠である。この意味から、ナショナルセンターCASC、CNDT、CNUSがまとまって、「ナショナルセンター労働組合会議」と呼ぶ調整および活動統合メカニズムを作り、社会労働面での労働組合運動の優先課題(自由な組合運動、賃金、社会保障、社会政策、雇用政策、規則・国際条約・協約・社会協定の遵守)を特定し、連携した活動や対応をおこなっている。また、特定のテーマについては、活発な活動をおこなっている国内の社会勢力と合意や協定を結んでいる。
 また、解決策を提案する能力やその効果を強化する作業をおこなうとともに、社会的対話機関による合意事項(グローバル・ジョブズ・ パクト(仕事に関する世界協定)、労働者の権利に関する協定、ディーセントワーク、ILO条約102号社会保障により要求を加える作業)のフォローアップ活動をおこなっている。この活動は主に、ILO-ACTRAV(労働局)の協力プログラムおよび技術支援により実施している。
 国内外レベルで、労働運動の要求を伝え、企業や国による組合の権利侵害の告発を行なっている。これらの活動は、多くの場合、国際機関の連帯を得て、国際レベルでの活動と連携しながら行なっている。

4. ナショナルセンターと政府との関係

 次のような三者対話の場にナショナルセンターと政府が参加することにより行なわれる。例えば、労働懇談審議会(CCT)、経済社会審議会(CES)、社会保険審議会(CNSS)、ドミニカ共和国社会保険庁(IDSS)、職業訓練技術庁(INFOTEP)、年金基金リスク分類委員会、国営企業改革委員会(CREP)、国家雇用委員会、国家教育審議会、保税加工地区労働者福祉三者委員会、国家賃金委員会等である。

5. 多国籍企業の進出状況と労使紛争

 ドミニカ共和国では以下の多国籍企業が進出している。鉱業(バリック・ゴールド社、ファルコンブリッジ社)、金融業(スコシア・バンク)、食品産業(フリート・ライ社、ネスレ・ドミニカ社)、通信業(クラロ社、コデテル社、オレンジ・ドミニカ社)、電気産業(AEES社)、観光業(メリアグループ、ヒルトン)、石油関連流通業(シェル)、アパレル産業(ヘインズブランズ-布、ソックス、ボクサー-、ギルダン、流通業(カレフール)。労使紛争には多くの例がある。たとえば、シェル・ドミニカの例では、労働組合を設立したことで、幹部全員が追放されたため、10年間訴訟が続いている。