2007年 ドミニカ共和国の労働事情

2007年10月10日 講演録

ドミニカ労働組合全国センター(CNTD)
ネルソン バレンティン フェリス オガンド

独立港湾援助労働組合教育宣広報担当書記兼CNTD渉外担当書記

 

国の概要

 西インド諸島のイスパニョーラ島の東側にある国がドミニカ共和国。人口約886万人、スペイン語圏。首都はサント・ドミンゴ、人口約91万人(同じカリブ海にあるドミニカ島にあるのはドミニカ国、人口7万人、英語圏)。1492年コロンブスが来島、サント・ドミンゴが建設されて最初のスペイン植民地となった。サトウキビ栽培に多数の黒人奴隷がアフリカから連れて来られた。2007年は大西洋奴隷貿易廃止200年にあたる。その後、イスパニョーラ島の西側はフランス領、現在のハイチとなり東側がスペイン領サント・ドミンゴ、現在のドミニカ共和国となった。歴史的には全島のフランス領の時代や東側のハイチによる占領、ハイチからの独立、独裁政権、内戦と苦難の道を経てきた。1992年にはコロンブスのアメリカ大陸到達500年記念祝賀反対運動が起きている。

労働関係法

 ドミニカ共和国憲法は、基本的権利の中で労働組合の結成を擁護している。憲法では、民間企業の労働者のスト権も認められている。労働組合には、農業、工業、商業、鉱山業の正社員が、企業の利益の分配交渉をする権利がある。また、政府は労働運動の自由を制限したり妨害してはならないと定めている。また、労働組合は政党や宗教団体に対して独立性を保たなければならないとしてある。こういった組織や団体からの財政支援を受けることは禁止されている。労働組合結成に必要な最低人員は20人である。

労働運動の制度・政策要求

 ドミニカ共和国の労働運動は現在、組織強化に尽力している。様々な製品やサービスの生産拠点における組合活動の活性化に集中している。社会保障制度や家族医療保険制度の発足に労働運動は重要な役割を果たしている。労働組合運動の最近の成果では、全国社会保障審議会への参加である。審議会は労働者、経営者、政府などの代表者からなり、社会保障制度の導入に関する様々な勧告を行っている。

労働組合組織とインフオーマルセクター

 ナショナルセンターとしては、国際自由労連(ICFTU)、汎米州地域労働者組織(ORIT)加盟のドミニカ労働組合全国センター(CNTD)、自治労組全国連合(CASC)、労働組合全国連合(CNUS)の三つがある。これらの組織が最高代表機関となって、労使間の論議や、労働関係の諸政策に関わる議論を行っている。活発な労働運動にも関わらず組織拡大は停滞している。55%の労働者がインフォーマルセクターで働いているためである。この部門の労働者の労働条件や生活水準は不安定で、労働時間などの規制や労働契約もなく組合を作る可能性は皆無に近い。

国営企業労働者のスト権

 正規労働者の58%が国営企業の従業員である。スト権の行使が非常に制限されている。公務・行政専門職法という法律があるが、公共部門では、雇用保険などの支給もないままに大量解雇が行われている。失業率は継続的に低下している。2007年4月の失業率は15.6%で前年同期比0.4ポイント下がっている。

多国籍企業と労使関係

 アメリカ・中米自由貿易協定(CAFTA)締結により、多くの企業の参入が想定されることから労働運動の重要課題に労働者の技能教育と技能評価の取り組みがあげられている。一方、
 ドミニカ共和国に生産拠点を置く多国籍企業における組合運動は、あまり満足すべきものではない。歴史的にも多国籍企業は、労働者の要求を代表するような組織の結成に抵抗しているからである。国内各地に生産拠点を持つ多国籍企業では企業全体としての組合の結成を認めず、拠点ごとの労組に従業員を分散させ、交渉も別々にさせる。「分断すれば勝てる」の格言が実行されているのである。2005年1月から繊維および繊維製品に関する協定(通称繊維協定)が廃止された。その結果、アメリカ市場向け輸出製品のセーフガードが撤廃されたため、貿易特区の従業員に対する契約取り消しや大量解雇が起きている。ドミニカ労働組合全国センター(CNTD)加盟の全国貿易特区労働者連合(FENATRAZONAS)を通じて、大規模な闘争を開始している。

ハイチ人労働者問題

 ハイチからの不法入国者が、会社経営者にとって低賃金労働者として魅力的な存在になっている。約130万人のハイチ人労働者についてはハイチ人労働者社会・文化運動(MOSTHA)という運動も生まれている。ハイチ人移民が作ったNPOで、ハイチ人移民の生活と人権の改善を目指した活動をしている。この組織は自治労組全国連合(CASC)に加盟している。国も非公式な形でハイチ人労働力を導入している。公共事業・通信省の委託工事などにはハイチ人労働者が多く見うけられる。