2002年 ドミニカ共和国の労働事情

2002年7月3日 講演録

ドミニカ共和国労働組合連盟(CTU)
フランシスコ アントニオ ラミレス アルマレンテ

繊維・縫製産業労働組合 書記長

 

労働組合の状況

  ドミニカ共和国の労働組合運動は組織率の低下で、危機的な状況にあります。4つのナショナルセンターが参加してCNUS(全国労働組合統合協議会)という組織ができたとはいえ、労働人口と比較して、労働組合の組織率は非常に低くなっています。
 ドミニカ共和国の労働組合運動の指導者は、この5年間、経営側や政府と積極的に対話を行い、いろいろな問題を解決してきました。しかし、実際は労働者の権利と利益はいろいろな面で損なわれています。
 多くの企業で労働組合運動が禁止されています。企業の中で、労働者の労働の権利や社会的権利を妨げる動きがあります。労働組合員になると解雇される場合があり、また労働者には権利や義務に関する知識が十分でなく、さらに労働者の権利を交渉するのにも労働省を始め政府関係者は協力的ではありません。労働組合が自由に活動できるように協力してくれる政治家はおらず、政治家は労働運動に対して無関心です。政府は自由な労働組合運動を侵害している代表的な組織の1つと言えます。労働組合運動への抑圧があるので、労働者は労働組合活動に参加すると仕事を失うと思っています。労働法に違反しても、司法はそれを許してしまいます。
 この2年間、ドミニカ共和国の労働組合運動は4つのナショナルセンターがCNUSを設立して団結力を強化しました。CNUS(全国労働組合統合協議会)の議長の任期は6カ月の持ち回り制で、副議長の1人は女性です。任期は同じく6カ月です。その執行部はCNUSを構成する4つのナショナルセンターから7人の書記が選ばれて構成されています。このCNUSの主な目的は、ナショナルセンターを統合することです。2002年5月1日に、4つのナショナルセンターを構成する組織やそれらへの加盟産別組織が会合を開き、労働組合組織を1つにまとめるための方針や規則を承認しました。
 ドミニカ共和国の労働組合は、これまでまとまって活動してきてはいますが、力を失ってきていることは否定できません。労働組合の力が失われてきた原因はいろいろあると思います。産業構造の変化に伴い組織化が困難になってきました。
 まず力量喪失の理由の一つは、資本主義的経済と社会主義的経済の対立が存在するからです。冷戦後、政党は労働組合運動強化に向けての関心を失っています。また、世界経済の変化や技術革新のスピードも原因です。組織化された労働者は階級意識が低いという問題もあります。通信産業、観光業、金融業、商業などといったグローバル化の技術革新によって生まれた新しい経済分野を組織化し、労働運動を展開していくことは徐々に困難に陥ってきました。
 過去3年間、ドミニカ共和国の労働組合運動は、経済や社会の大きな変化にさらされてきました。特に国営企業の民営化という面で、97年に制定された法律141号があります。
 砂糖産業は、民間部門に売り出され民営化されました。民営化により砂糖産業は、逆に政府にとり重荷にになり、労働者の高い賃金をカバーするために公的資金を投入しなければならなくなっています。利益を得るかわりに資金を投入しなければならなくなりました。砂糖生産は最低レベルに落ち、ドミニカは砂糖輸出国から輸入国になってしまいました。
 電力会社は、分割・民営化のモデルになっています。政府は電力会社のパートナーを探して3つの会社に分割しました。サービス向上が目的でしたが、サービスは向上せず、多くの場合に料金が引き上げられました。政府は消費者を保護する責任があると思いますが、電力会社のために軍隊を動員し料金徴収を行なっています。
 労働組合運動が参加した主要な政策に、新しく制定された社会保険法があります。この法により、全国民は社会保険制度でカバーされることになります。5年間の話し合いの後に合意に至り、ドミニカ共和国に社会保険制度を発足させる法律第87-01号というものができました。この制度は、フェルナンデス前大統領が任命した委員会で作業が始まり、現在のイポリト・メヒーア大統領の代になって、多くの圧力を受けながらも、ようやく公布されました。
 CTUや4つのナショナルセンターからなるCNUSに参加するほかの組合にとって、この法律87-01号が守られることが非常に重要です。2002年11月2日より、この保険制度が開始されて、公共部門、民間部門のすべての労働者がその家族を含めて新しい社会保険制度に入ることになります。
 ここでの組合の重要な作業というのは、法律87-01号で設立される保険組織の機能に関する規則をつくることになっています。それで、労働組合は専門家に依頼して分析を行い、保険サービスが保証されるような提案を行うことになっています。組合の幹部はこの作業をするに当たって大きな責任を感じています。というのも、この制度で国民が恩恵を受けない場合に、責任を取るのは組合の幹部だからです。法律87-01号で機能する諸規則に関する提案を行うために、ナショナルセンターはワークショップを開いたり技術支援を仰いだりして提案の内容の確認作業を支援してもらい、適切な提案づくりを支援してもらっているのが現在の状況です。