2007年 バルバドスの労働事情

2007年10月10日 講演録

バルバドス労働組合(BWU)
トニ ニコール シェリー アン ムーア

上級労使関係役員兼青年委員会コーディネイター

 

国の概要

 リトルイングランドとも呼ばれるバルバドスはカリブ諸島の英連邦の一国である。人口約27万人、労働人口約13万人、就業者の75%はサービス産業に従事している。年間100万人の観光客が訪れる。過去10年間サービス産業の成長が著しい。
 2006年は翌年にカリブ諸国で開かれたクリケットワールドカップ大会(2007年3月~4月)が観光と建設産業に大きな経済効果をもたらした。

労働市場の緩和

 2006年現在の労働参加率は67.9%。失業率は8.7%であるが若年者(15~24歳)の失業は32%前後と高率である。労働力の高齢化が問題となっている。
 バルバドスの労働運動はカリブ単一市場(CSM)を支持し移民労働者保護に努力しているが本来国内で育成すべき熟練労働者を外国から導入することには反対している。外国人労働者を国内労働者より低い賃金で働かせるため当該職の経済的価値が低減し熟練労働者全体の賃金上昇を鈍化させる結果となっている。非正規労働者も増大傾向にあり労働組合の取り組み課題となっている。

労働組合とパートナーシップ

 労働組合としては最も古いバルバドス労働組合(BWU)とバルバドス職員協議会(CTUSAB)がある。バルバドス職員協議会は1991年に設立された。労働組合の結成が認められていない警察と消防職員の組織で13の組合が加盟している。全体の組織率は17~18%程度である。
 社会的パートナーシップの制度が総理大臣の下に設けられている。小委員会が設置され3ヶ月に1回は開催されることになっている。先ごろ開かれた小委員会は労働大臣を議長に民間使用者団体(BPSA)と2つの組合の委員長が出席している。今までの成果としてあげられるのはパートナーシップ協定(プロトコル)である。経済関係では1993年の「物価と所得に関するプロトコル」や2006年の「生産性のパートナーシップに関するプロトコル」である。その他HIV/AIDSや労働安全衛生、セクシャルハラスメントなどに関する法制についても論議されてきた。

多国籍企業と労使関係

 多国籍企業では特にアメリカ、カナダの企業がバルバドスを金融サービスのハブとしており積極的にビジネスを展開している。外資はバルバドスの外貨収入に貢献しているだけでなく金融サービスでは2000人以上を雇用し第二の産業としている。金融サービスでは2006年に新規登録申請が537社あったがライセンスがおりたのは391社であった。グローバル化では2006年に認可された3488件の国際ビジネスがあげられる。この数字は更新と新規に認可された件数の合計である。組織化されている多国籍企業においては強力な労働組合の影響力により労使関係に大きな問題は存在しない。銀行の場合、本国が組織化されていないケースがあるがバルバドスでは組織化されバルバドス流に労働協約が作られている。労働運動としては多国籍企業が最低基準を最初から遵守するためにはグローバル協定の締結が必要であると考えている。海外からの投資が国内の労働市場と既存の労使関係の枠組みにあたえる影響は少なくない。特にトリニダード人の投資が雪崩れを打って流入しておりバルバドスの社会的パートナーシップの機能に深刻な影響を与えている。多くの多国籍企業がオフショアを展開している。オフショアビジネスが飛躍的に拡大する可能性があると労働組合はみているがこの分野にはまだ手がつけられていない。

カリブ共同体とカリブ労組会議

 カリブ諸国の地域共同体としてカリブ共同体(CARICOM)がある。カリブ諸国15カ国から構成されている。事務局はガイアナに置かれているがカリブ単一市場(CARICOM Single Market & Economy Unit)の事務局はバルバドスにある。労働市場の自由化によってもたらされるさまざまな問題は地域的な問題でもあり国境を越えた労働組合の連携が必要となる。バルバドスの労働組合は域内の諸問題についてカリブ労組会議(Caribbean Congress of Labour)通じて取り組んでいる。カリブ労組会議は3年毎に大会を開催している。今年は開催年で11月にセント・ヴィンセントで開催される。前回はスリナムで開催されている。スリナムはガイアナと同じく南米に位置するがカリブ地域でもある。