2006年 ロシアの労働事情

2006年2月1日 講演録

ロシア独立労働組合連盟(FNPR)
エヴゲーニー・アナトリエヴィチ・シヴァイキン

ロシア独立労働組合連盟組織局専門員

 

 ロシア独立労働組合連盟(FNPR)は、わが国最大の労働組合組織であり、加盟組合は42の産別労働組合と、協力協定を結んでいる5つの産別労働組合から構成されている。組合員数は3,180万人である。そのほかに、79の地方労働組合を持っている。
 FNPRは、政府の社会労働関係調整に関する三者委員会の中で、労組代表30人の内24名が委員となっていて、労働組合側のコーディネーターはFNPR議長がなっている。
 わが国の社会パートナーシップの枠内で、全ロシアの労働組合団体、全ロシア雇用者団体、政府間で総協定が締結されている。この協定は、2004年12月に締結され、有効期限は2005~2007年となっている。この枠内では産業別労組内では賃金協定が、地方組合間では三者協定が締結されている。
 FNPRは、社会労働分野及び労働組合・労働者の権利にかかわるロシア連邦法の策定に専門家を参加させている。
FNPRは組織発展のためにシステムを有する唯一のナショナル・センターであり、労働組合幹部の育成システムである社会労働関係アカデミーを有して、幹部育成の主要な役割を果たしている。2000年UNESCOより、このアカデミーは高い国際水準に合ったシステムであると認められ、社会労働関係分野の基本的な学術センターとして認められている。
 FNPRは2001年にジェンダー政策コンセプトというものが承認されて以来、活発な活動を行っている。また、青年問題に特に関心を持ち、FNPR組合員の3分の1以上が35歳までの者で占められているため、2002年に行われた国際青年労働組合フォーラムで、青年政策コンセプトについて幅広く議論を行い、FNPRの議会で承認されている。
 2002年、FNPRの中に青年会議が設立され、各地方支部、産別の組合の若いリーダーが参加している。主な活動は、青年の権利と利益に関する立法づくりの活動、労働協約の中の青年に関する項目の策定等がある。また、若い青年労働者を組合に加盟させるオルグ活動として、フォーラムや円卓会議、国際会議等を活発に行っている。
 FNPRの課題は、ロシア労働者の賃金レベルの向上、組合員数の減少問題、若年失業者問題、マスメディアの労働組合活動に関する偏見的な見方の是正等々がある。

全ロシア労働総連盟(VKT)
デニス・アナトリエヴィチ・ボロビヨフ

「アフトバズ」労働組合地方支部長

 

 ナショナル・センターである全ロシア労働総同盟(VKT)に加盟している産別組織は、ロシア独立鉱山労働組合、ロシア社会サービス労働組合、ロシアエンジニア・技術者労働組合、ロシア自動車労働組合、ニッケル・コバルト・プラチナ金属生産労働組合である。
 これらは80の地域に広がり、地方組織として52組織がある。同盟は社会労働問題を取り扱う三者委員会のメンバーである。労働組合組織と使用者組織、政府の三者による全国一般協約の作成や調印にも参加している。
VKTは2000年にICFTUに加盟、産別組織はグローバルユニオンに加盟している。加盟人数は127万900人であり、3年間に約2倍に増えている。
 VKTは緩やかな連合体としての組織形態をとり、加盟組織の組合費の5%が同盟に納められている。VKTが規約の中で掲げている3つの課題は、[1]福祉や賃金の向上に全面的に貢献する [2]組合員の労働条件、安全衛生、生活向上、休暇の問題を改善する [3]組合員の利益と権利を守り、労働能力の発揮、職業的、国民的尊厳を守っていく。
 また、国民が労働組合を自由に結成し、組合活動に参加する憲法上の権利を行使できるよう協力している。つまり、人種や性別、政治的、宗教的信条に関係なく、すべての人が自由に組合活動できるように、組合として努力している。
VKTは憲法や国、地方自治体で定めている法律に従い、ILO条約・勧告や、国際労働運動にのっとって、積極的な活動を展開している。
 具体的な活動として、第4回大会で採択された雇用プログラムに関連して、国や地方レベルの行政機関が効果的な雇用政策をとるよう要求してきた。その内容は、失業者の社会復帰、職業訓練、新しい雇用の創出のための国家支援、不当解雇の阻止となっている。
 経済の構造改革を目指した政府の行動は、生産性向上にも雇用の創出にもつながらなかった。VKTも参加している三者委員会の労働側組織は、苦労を重ねて、2010年までに連邦社会経済発展計画に失業保険の項目を盛り込ませ、2002~2004年の全国一般協定案の中に、義務的な国家失業保険の早期策定という項目を加えることができた。
 今、外国人労働者が増加している。政府は、従来、外国人の雇用に関して許可制をとってきたが、簡単な通知制に変えようとしている。労働組合は、この改定に対し慎重に対応している。
この通知制は、社会的労働基準が下がってしまう懸念があるからである。
 国民の所得、現金収入、賃金については貧富の差が非常に拡大している。これは政府の社会経済政策が原因であり、全国民の15%の層に全所得の半分が集中している。総所得の内、企業活動による財産収入の割合が増え、一方では賃金の比重が低下し、国民全体の現金収入、所得の約38%以下になっている。
 VKTは、他の労働組合と協力して、最低賃金を最低生活費に合わせるよう主張している。2004年の最低生活費は全国平均1カ月、2,495ルーブル(90USドル)であるが、現在の最低賃金レベルは800ルーブル(28USドル)となっている。
 政治に関して、労働組合代表を地方レベルの議会に送る例として、ノリリスク市長にノリリスク市唯一の雇用の場であるニッケル企業の労組委員長が市長に選出され、経営者が驚いたことである。
 VKTは、2000年2月にロシア労働総同盟(KTR)の間に連絡評議会を設置し、この2つの組織を統合するため、法的、思想的、組織的基盤を作っていくことになった。これに関連して、両組織は共同で統一労働組合新聞を発刊している。VKTの情報局が広報活動を担当し、加盟組織間の中央・地方レベルでの情報交換を行い、効果的な連帯を図っている。
 また、外部の出版社と協力してサイトをつくり、統一した情報の流れを築いていくことに取り組んでいるが、残念ながら全国規模のメディアは労働組合の活動に関しては、ほとんど報道していない現状である。
VKTとして、定期的に中央メディアに情報を流すための記者会見を行っている。その他、VKTは労働者教育、啓蒙活動を行い、国内・社会の重要なニュースのダイジェスト版を作成している。同盟として、日本の連合も含めた国際的労働組合の交流を積極的に発展させていきたい。
 組織内には3つの労組がある。伝統的な古いタイプの労組であるアフトセリスホフマン、生産労働者評議会、そして私が所属しているアフトバズ労働組合である。アフトバズ労働組合は1990年に設立した。その時期に社会主義体制が崩壊し、国民の自由が認められ、十分とは言えないが市民社会の兆しが見え始めつつあった。ロシアは市場経済へ移行したわけであるが、市民社会の一員としての労働組合は、本来の市場経済の原則に適応するものであり、労使の利益のバランスを図っていくべきである。法治国家建設には、市民社会制度なしでは構築はできないのである。
 労働組合は設立以来、経営者と闘ってきた。また、政府機関との協力も図ってきた。近年、現政権が市民社会を管理下に置こうとする試みが見られるし、社会団体の自由と独立性を脅かす環境がでてきている。国の意見と合致すれば、市民のイニシアティブが認められ、社会団体の自由を制限する法律が改定されてきている現状がある。
 1999年に下院の選挙があり、トリアッチ市民76万人に1人の定員で議席が争われた。この時、アフトバズ労働組合の委員長が当選し、2003年に2期目の再選を受けた。2004年の市長選挙では、新しい委員長が出馬したがわずかの差で敗れた。
 市当局は、労組候補が多くの支持を得たことは危険な状況として、労組を解体しようと図っている。経営者は、組合員に対して圧力をかけ、組合に入ることは職場の秩序を乱す危険人物とみなしている。出世の道は閉ざされ、差別待遇を受けることもある。また、労組代表の職場への出入りを妨害している。
 組合は政府機関に苦情申立てを行った。また、2003年には警察が会社の役員の依頼をうけ、集会を行ったとして不当逮捕したが、裁判で横暴な措置は撤回された。
 アフトバズ労組は、労働者の組合加入、保護や集会、デモ、ピケ等の活動を行っている。また、裁判における労働者の擁護や国家監督省、検察庁との交渉も行っている。
 現在、ロシアでは、現実にストライキができない現状にある。労働組合は、トリアッチ市の市民社会をつくっている担い手という認識のもとに、市民と協力して市民レジスタンス委員会が設置され、市当局の反市民的改革に反対運動を行っている。労働組合として、市民一人一人が未来に希望をもってゆける社会づくりのため具体的提案を行ってゆく。

ロシア労働総連盟(KTR)
コンスタンチン・ウラジミロヴィチ・ヤキーモフ

ロシア海員組合北洋委員会委員長

 

 ロシア労働総連盟(KTR)は1995年の4月11日に設立された。KTRの構成は、5つの全ロシア労働組合、4つの地域間労働組合、5つの地方労働組合からなっている。
 政府の社会労働関係調整に関する三者委員会のメンバーであり、三者協定の署名人の一人でもある。また、ロシア会員組合を含めた多くの加盟組織が、ITF(国際運輸労連)のメンバーでもある。海員組合は地域間労働組合に属している。
 主な活動として、現行労働法の改善を求める運動を行っている。また、しばしば変わる会社の所有者、経営者の交替を防ぐ方策を模索している。新しい経営者は支出を押さえるため、労働者の労働条件を悪化させている。
 港湾労働者の雇用場所確保の活動も行っている。ロシア鉄道の民営化に伴う否定的な影響を防ごうという運動もしている。また、ロシア政府のILO協定の批准をするよう訴える活動を行い、ここ3年間で海運に関係する3つの協定を批准させた。それは協定137項(港での貨物の処理に関する新技術の社会的影響)、第152項(港の労働安全保護)、179項(船員の雇用と就業)である。自分の所属している北洋委員会では、海員組合に加盟しており、海員組合のメンバーは、11,500人である。この委員会では、26の組織、5,500人がメンバーとなっている。メンバーの中には、ロシア海洋の古いゆりかごといわれる造船所(クラスヌィ・クヅネツ)が入っている。また、北洋医療センターもメンバーであり、10万の船員とその家族が治療や検査を受けている。その他に海洋アカデミーや海洋高等学校もメンバーである。
 北洋委員会の解決すべき問題として、賃金の遅配問題、経営者の早期交替、働く場所の削減問題、反労組経営者問題と労働法違反等々がある。委員会の基本的活動は、労働者の権利を主張し、組合員への法律的支援、組合員の子弟への健康保険キャンプ運営、低所得組合員への金銭的支援等々がある。末端組織に対する文化活動、法律相談・コンサルティング、労組員の教育訓練活動も行っている。

労働事情を聴く会