2013年 ポーランドの労働事情

2013年11月29日 講演録

ポーランド独立自主管理労働組合「連帯」(NSZZ)
ヤクブ シュミット

 

 ポーランドの労働市場は、今年2013年第2四半期の就業率が50%で、約1500万人が就労している。そしてポーランドで一番重要な部門であるサービス部門で働いている人が約900万人、工業部門で働いている人は500万人、農業部門が200万人弱の就業人数となっている。失業率は10.4%で、200万人以上が失業している。
 ポーランドの労働市場にはいくつかの問題がある。その一つは、有期雇用で働いている人の割合の高さである。ポーランドでは雇用されている人の26.8%が有期雇用契約になっている。EU全体では13.7%で、ポーランドが最も高い数字となっている。
 もう一つ重要な点として、定年年齢の問題がある。昨年、政府は男女ともに67歳という新たな退職年齢を導入した。改定以前は女性64歳、男性65歳であったが、今は男女とも67歳である。この背景には2つの理由がある。一つは、国の財政問題で、劇的に厳しい状況になっていることである。二つ目は、人口減少問題で、昨年2012年度の人口増加率は0.01%であったが、さまざまな指標を見ても、2013年度は人口減に転じると見られていることである。
 さらに、今年労働時間について新たな政策が導入されている。この政策によって起きた一番重要な変化は、12ヵ月間の変形労働時間制が可能になったことである。2013年上期の1ヵ月の平均給与は3612, 51 ズウォティ (約860ユーロ)、 約11万3,000円(1ズウォティ=31.4375円)、2013年度の最低賃金は月額1600 ズウォティ (約380ユーロ)、5万300円である。
 次に労働組合を取り巻く状況と課題についてであるが、大きく分けて二つの問題がある。一つは、政府が『労働法』、『社会保障法』に新たな規制を導入しようとしていることである。二つ目は、新しい法制度によってもたらされる結果で、定年年齢が上がったことや、労働時間についても好ましくない変化が起きていることである。
 そして最も大きな問題は、私たちが「トラッシュ・エンプロイメント(Trash Employment)」「ごみみたいなつまらない雇用」と呼んでいるものである。「ごみ、トラッシュ」という言葉は、戦略的に強い言葉を選んで表現している。例えば、個人事業主、有期契約の雇用者、公務員の臨時雇いなどを言っているが、日本で言ういわゆる派遣労働の事である。こういった仕事、契約をごみのような契約と呼んでおり、社会にとっては大きな危険要因になると考えている。なぜ危険かというと、貧困に陥りやすくなり、社会の安定に対してネガティブな影響を与えると考えるからである。ネガティブな影響とは、①雇用労働者が家庭を持つことに対してなかなか決断ができない②家を買うための住宅ローンが組めない③非常に低い年金しか受けられない、あるいは、まったく年金を受ける見通しが立たない――などである。NSZZとしては、こういった問題はただ単に労働市場の問題ではなく、社会全体の問題として捉えるべきだと考えている。
 労働組合の問題として一番大きなことは、組織率が低いことである。特に中小企業においてはほとんど労働組合が無く、労働法違反がたびたび起きているのが現状である。NSZZは、これらの問題に対して支援したいと考えており、法律の分野で非常に活発に活動している。憲法裁判所ではNSZZの訴えが勝訴している。またNSZZとして、社会保障の負担に関する法律、最低賃金に関する法案、有期雇用契約の法案、あるいは派遣会社に関する法案など新しい法制度を準備しており、議会や政府に提案しているところである。また、国際機関に対してポーランド政府が違反しているという苦情申し立ても幾つか出している。
 まず、その一つ目は、ILOに対しての申し立てで、結社の自由に関する問題である。この申し立てが認められ、政府は『労働組合法』を改正しなくてはならない状況になっているが、その改正はいまでも法定における争いとなっている。労働時間の改変については、EU委員会に対して苦情申し立てを行なっており、まだ非公式ではあるが、これについてもNSZZの主張が通ると見られている。
 今年ポーランドの3つの大きな労働組合連合(ポーランド独立自主管理労働組合「連帯」(NSZZ)、全ポーランド労働組合連合(OPZZ)、労働組合フォーラム)が、大変象徴的な行動をとっている。それは、全国三者構成協議会に対してメンバーを送るのを中止することである。これは労働組合が、これまで政府との社会対話が少ないことに対する抗議の印として、このような行動を起こしたのである。また、労働時間の法制が変わり、9月半ばにワルシャワで三大労働組合連合が協同して大きな抗議行動を起こした。これはポーランドでは珍しいことである。皮肉なことであるが、政府がなし遂げた一つのことは、労働組合が団結したということになるかもしれない。
 今日のポーランドの状況は、大変厳しいものであるが、いま多くの人から労働組合こそが唯一、現状に対して影響力のある組織だと思ってもらえるようになってきたという前向きな状況も出てきている。

労働事情を聴く会