2012年 ポーランドの労働事情

2012年11月2日 講演録

ポーランド独立自主管理労働組合「連帯」(NSZZ)
Ms. モニカ・アンナ・コンチェック (Ms. Monika Anna Konczk)
教育担当執行委員

Ms. アグネッチカ・マリア・レバルトウィッチリシク (Ms. Agnieszka Maria Lenarowicz-Lisik)
スラスコ・ダブロウスキー地区・組織拡大・教育・国際協力担当専門家

 

1.全般的な労働情勢

 ポーランドの労働市場の現在の主な特徴は、2012年第2四半期の労働力調査データによると、(1)就業率が比較的低いこと、特に24歳未満の若者および55歳以上の高齢者および女性全般の就業率が低いこと(2)労働市場に参加していない非労働力率が高いこと(3)非正規労働者の比率が高いことである。
 例えば、就業率は50.1%(男性57.7%、女性43.2%)、失業率は10.5%(男性10.0%、女性11.0%)、特に15~24歳層の失業率は27.7%である。15歳以上人口のうち1402万7000人が労働市場に参加していない(61.3%が女性)。生産年齢人口(18~64歳)中、657万1000人が非労働力であり、55~64歳の男性の22%が労働市場に参加しない非労働力人口である。2012年第2四半期における有期契約労働者人口は被用者全体の26.7%に当たる331万6000人である。
 また、2012年に政府は、男女共に67歳という新しい定年制を導入した(以前は女性60歳、男性65歳)。最低賃金は2012年が375ユーロ(約3万7000円)で、企業部門の平均月額総賃金である約9万円と比べるとかなり低い。

ポーランドの労働組合
 ポーランドには3つの全国規模の代表的な労働組合組織が存在する。
(1)ポーランド独立自主管理労働組合連帯(NSZZ「連帯」) : 組合員総数約60万人
(2)全ポーランド労働組合連合(OPZZ) : 組合員総数約60万人(旧体制下の組織を引き継ぐ組織)
(3)労働組合フォーラム(2011年創立) : 組合員総数約40万人
 ポーランドの労働組合組織率は約14%(約150万人)である。組合員全体の70%が公的部門の雇用労働者であり、民間部門の雇用労働者はわずか30%と推計される。一般に若者および女性の組合員は少ない。ポーランドのすべての労働組合に共通の事実であるが、NSZZ「連帯」の場合も、24歳以下の組合員は組合員全体のわずか3%、女性は30%余りを組織しているに過ぎない。

2.労働組合が現在直面している課題

(1)年金支給年齢の67歳までの引き上げ
 55歳以上人口の就業率は不十分で、高齢者はあまり新しい技能を有せず、その技能は更新されていない(例えば、コンピュータ・スキル)。積極的労働市場政策および生涯学習制度に対する政府支出は低く、賃金の仕組みが年功序列制であるために使用者はあまり高齢者を雇いたがらず、さらにまた職場内での健康促進の仕組みも弱い。
(2)非正規労働者数の漸増
 深刻な貧困リスク。また、非正規労働者を組合員として組織化することは困難である。
(3)低い最低賃金
(4)2013年1月1日に発効する欧州連合(EU)の包括的気候対策
 これにより電気料金が大幅に引き上げられ、ポーランド経済は今後7年間で最大50万人分の雇用を失う可能性がある。

3.労働組合は課題解決に向け、どのように取り組もうとしているか

(1)ポーランドの労働組合(特にNSZZ「連帯」)は政府の年金支給開始年齢引き上げに反対し、真剣に闘った。この問題は政労使間で協議すべきものであるが、政府はいかなる対話も受け入れようとしなかった。そこでNSZZ「連帯」は、年金支給開始年齢引き上げに向けた政府の提案に、ポーランド社会が同意するか否かを問う全国的な国民投票を行なうことを提案した。NSZZ「連帯」は他の労働組合と協力してこの市民イニシアチブを支援するため、200万人の署名獲得活動を展開した。NSZZ「連帯」の会長は、定年と国民投票提案についてポーランドの国会で演説を行なった。しかし、議員投票の結果、国民投票実施に対する同意は得られなかった。結局、政府は年金支給開始年齢を67歳とする法を施行した。労働組合は、国会議事堂や大統領宮殿の前で多くのデモを組織した。
 他方、NSZZ「連帯」は訓練を通じて、「職場における活力ある年齢管理」の考えや生涯学習の推進に取り組んでいる。また、雇用労働基金の適正な使用に関し、政府の説得を試みている。政府はこれを準備金として保持しているが、積極的労働市場措置に用いられるべきである。
(2)全国および地域レベルで「ディーセント・ワーク」、つまり、正規労働契約とまともな賃金を推進する数多くの活動を展開している。デモだけでなく、音楽コンサートも主催している。他方、欧州連合(EU)や国際労働機関(ILO)の法的枠組みの活用も試みている。例えば、2012年9月にNSZZ「連帯」は有期労働契約指令の実行が正しくないことを言及して欧州委員会に苦情を申し立てた。
(3)NSZZ「連帯」は市民法案の提案を準備したが、そこでは最低賃金を年平均賃金とインフレ率と関連させる指数連動制を提案した。
(4)NSZZ「連帯」が支持した「EU気候・エネルギー包括措置の一時停止に関する市民提出法案」は2012年6月、欧州委員会における登録に成功した。発議集団は少なくとも7つのEU加盟国において、市民100万人以上から気候・エネルギー包括措置の一時停止を求める署名を集めなくてはならない。

4.NSZZ「連帯」と政府との関係

 労働組合は、ポーランドの社会対話システムの中の主要な行動主体である。特にNSZZ「連帯」はポーランド最大の労働組合であり、三者構成の経済諮問委員会に代表者を送っている。しかし、労働組合は委員会の活動を以前から茶番劇と見ている。政府は対話を行なわず、自らの決定を報告するだけである。従って、政府は労働組合の社会的パートナーとしての代表性を徐々に損なっているといえる。

5.多国籍企業の進出状況と多国籍企業における労使紛争

 日本企業85社を含め、ポーランドでは多数の多国籍企業が事業を展開している。ポーランド国内で活動する多国籍企業の約187社に欧州労使協議会(EMC)が存在し、協議会のポーランド代表者のほとんどがNSZZ「連帯」から出ている。多国籍企業にも労働争議があるが、大多数が賃金問題に関係している。労働組合の権利が侵害されている事例もいくつかある。

労働事情を聴く会