2011年 ポーランドの労働事情

2012年1月27日 講演録

ポーランド独立自主管理労組「連帯」(NSZZ)
Mr. ラドスロウ・アダム・メクリンスキ
Mr. カジミエル・キムソ

 

1. 労働事情(全般)

 全体主義の共産主義体制崩壊より始まった社会・経済の変革の結果、ポーランドの労働市場と労使関係は抜本的な変容を経験した。90年代の初め、ポーランド労働者の70%が国有部門で働き、民間ではほとんど見られなかった。現在は、労働者の70%以上が民間部門で働いており、労使関係は非常に分権化している。
 ポーランドの経済情勢は極めて好調に見え、2011年の経済成長率は前年比約4%の上昇を記録したが、労働市場の状況は安定しているようには感じられない。2012年には失業率が上昇する可能性がある。この他懸念される労働市場の徴候は、正規労働契約率の低下である。2009年に雇用契約で働いていた人の30%以上が有期契約に基づく労働者または派遣労働者であった。失業率は2011年11月に12.1%に達した。ポーランドの失業問題は農村部または産業力を失った地域に関連する構造的なものであるため、対策を講じるのが難しい。グローバルな経済危機がポーランドに悪影響を与えている。今年も多くの職場、仕事が失われるのではないかと心配している。そしてかなり多くの労働者が仕事を求めて他のヨーロッパ諸国に移住している。

2.労働組合が現在直面している課題

 民間部門における地位の強化が労働組合にとっての主要事項の一つである。法的拘束力にもとづく権利が存在するにもかかわらず、企業レベルでの労働者の組織化は難しい。経営者は何らかの口実をつけて組合オルグを解雇しようと試みる。
 労働組合の全国レベルの重要課題は、不安定雇用(有期契約)の数を制限し、「働く貧困層(ワーキング・プア)」、つまり、フルタイム労働契約で働いていながら生計を維持できない人々の現象と闘うことである。今フルタイム契約者の約11%が貧困状態で暮らしている。もう1つの問題は、偽造自営の問題である。建設・運輸部門では労働者が解雇され、仕事を取り戻したいなら自営(請負)になるよう強制されている。こうした人々は同じ経営者の下で働き続けながらも同じ福利厚生を享受できず、労働法に基づく保護も及んでいない。そして労働組合にとっての大きな懸念は、政府の脱危機戦略である。これは公的債務の削減を意図しているものの、主に公務部門の賃金凍結と雇用削減で構成されている。2011年末、議会選挙直後にポーランド政府は男女の定年を67歳(現行65歳)まで引き上げることを発表した。

3.問題解決に向けての取り組み

 労働組合は新しい産業部門、とりわけサービス部門(最近は警備部門と小売部門)における自らの存在感を高めるために運動を展開してきた。労働組合に対する個人攻撃があった場合には、経営側に対して連帯ピケラインが張られる。全国レベルでは「連帯」(NSZZ)は、いわゆる人間らしく暮らせる報酬水準を達成するために平均賃金と比較した場合の最低賃金の上昇(少なくとも平均賃金の50%への引き上げ)を要求している。さらに、法律による有期契約の制限に関する詳細を詰めるため、経営者団体との話し合いも行なわれている。国内需要を制限し、公務員の状況を悪化させる可能性がある緊縮措置を導入しないよう政府に圧力をかけるために、労働組合の共同行動およびデモが行われている。2011年に欧州労連の加盟組織である連帯はブロツラフで世界危機に対する大規模な欧州レベルでのデモを組織した。また、連帯はポーランドにおける定年引き上げに反対する公共キャンペーンを開始した。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 政府には労働法の変更に関し、社会的パートナーと協議する法的義務がある。社会的パートナーは、政府の提案に対する自分たちの意見や見解を提示するが、法の最終形態でそれが考慮されることは滅多にない。全国レベルでは、社会・経済事項三者構成委員会が労働組合と政府の間の法的基盤を構成している。この機関の中では様々な事項が取り上げられるが、とりわけ最低賃金の引き上げと公務部門の賃上げに関する協議と交渉が行われる。労働市場に影響するマクロ経済問題の話し合いも行なわれる。いま「連帯」(及び他の組合)と政府との関係は満足できるものとは言えない。労働市場政策に係わる労働組合の提案はほとんど考慮されていない。新自由主義の与党の主眼は、共同解決策を話し合うというよりも労働組合の権限を切り崩すことにあるように思われる。

5.多国籍企業の進出状況

 外国の直接投資の水準は1989年に100万ドルであったのに対し、2009年には1,600億ドルを超えた。この急上昇によって多国籍企業は現在、経済のあらゆる産業に存在している。欧州企業がこの投資の主流を占めているが、日本企業もまた約10億ドルをポーランドに投資しており、その子会社で働いている人の数は約2万人と推計される。
 一般的に言って、多国籍企業は工場レベルで労働者代表の地位を疎外しようと試みており、労働組合にとっての最大の課題は経営側にその存在を認めさせて、団体交渉と協議のための条件を確立することである。欧州連合の法によって保障されている、国を越えた労働者代表制である欧州労使協議会はこの点で役に立つ。当初は失業水準が高かったために、労働組合の関心は主として雇用の安定に置かれ、労働条件向上の闘いを犠牲にする場面もあった。現在は適切な資格を備えた労働力に対する需要が高まっていることもあり、労働組合はますます労働条件改善、賃上げ、残業規制などに対する要求・協議を増やしている。結果として、ストライキを含む労使紛争が増えている。この種の活動は出身国と無関係にすべての多国籍企業で起こっており、たとえば、日本のAKSという会社やフランスのフォレンシアというところでは組合員の差別が問題になっている。また同時に、労使が協調出来ている所もある。トヨタのポーランドの工場であり、ここでは生産性運動を熱心にやっていることからも協調的な労使関係が分かる。

労働事情を聴く会