2014年 ハンガリーの労働事情

2014年7月11日 講演録

ハンガリー独立労働民主同盟(LIGA)
イストヴァン・アルコヴィクス

副会長

アドリエン・ハンゴニイ
国際関係コーディネイター

ハンガリー労働組合全国総同盟(MSZOSZ)
イルディコ・ケペスネ

ハンガリー鉄道労働組合労使関係担当

 

1.ハンガリーの労働情勢(全般)

 ハンガリーの人口は約1000万人で、そのうち労働人口はわずか380万人である。雇用率は約54%で、EUで最低レベルにある。定年は65歳(以前は62歳)で、高齢化し、出生率は低い。失業率は8.4%であるが、若年者の失業率は25%と高くなっている。
 問題は2010年まで累進課税だった所得税が一律16%の定率になったことで、これにより毎年5000億フォリント(約2150億円)の税収減となっていることである。労働組合としては累進課税に戻したいと考えている。
 ハンガリーには全国最低賃金がある。しかし、この金額(10万1500フォリント=約4万3645円)は非常に低い。
 組織率は11~12%で、EUではフランスに続いて低くなっている。政治状況の変化により、組織率は下がり続けている。

2.労働組合の直面する課題

 ハンガリーのナショナルセンターは統合が進んだ結果、現在4つになった。
 *HTUC(ハンガリー労働組合連合)
 *LIGA(独立労働民主同盟)
 *ESZT(専門職魚業者組合連合)
 *MOSZ(労働者評議会連盟)
 ハンガリー労働組合全国総同盟(MSZOSZ)を含む3つのナショナルセンターが、現在統合作業を進行中で、それがハンガリー労働組合連合(HTUC)に統一される予定である。加盟組織は62組織で、9産業グループに分けられる。
 LIGAは政治的に独立した組合で、加盟組織は99組合である。最近の大会では、非正規労働者の組織化戦略を採択し、組合員増に取り組んでいる。組合員の75%は中小企業で働き、平均年齢が35歳という若い組合員の多い組織である。
 しかし、未だにナショナルセンター数は多く、労働組合、組合員は細分化されている。
 2010年に右派政権ができるまでは、三者構成の利害調整審議会があり、社会対話の場となっていた。右派政権はこの審議会を廃止し、新たに政府と民間部門間の常設の協議フォーラムを設置した。国家公務員には国家公務員利害調整審議会がある。しかし、両者ともすべての労働組合が参加できるわけではない。産業レベルでは、現在30の対話委員会があるが、これは法律に基づくものではない。労使の二者構成で、部門レベルの労働協約はほとんどない。企業レベルでは、労使の団体交渉が行なわれるが、労働組合の存在が前提となる。組合結成には10人以上の組合員で、登録が必要である。団体交渉権は組合員数と結びついており、労働組合が使用者と交渉するためには、組合員の10%が当該使用者に雇用されていなければならない。交渉結果である労働協約は全従業員に適用される。
 ハンガリーの労働組合は労働法の改正に取り組んでいる。2011年に労働法は従業員と労働組合が不利になるように修正された。労働法が定める基準よりも悪い条件で、労働協約を結ぶことが可能になってしまった。時間外労働や休日数などで、実際に法の基準を下回る労働協約が結ばれている。ストライキ法も修正され、その結果ハンガリーではストライキの実施がほぼ不可能になっている。
 次に労働組合に対するプラスの制度をふたつ紹介する。一つ目は、労働組合幹部の保護である。これは、組合の幹部が会社と交渉をしても、そのことによって職を失うことはないという雇用の保護である。二つ目は、労働組合の権利としてタイムオフがある。これは組合員1人につき30分、労働組合役員が仕事を離れて、労働組合活動に従事する時間が持てるという仕組みである。組合員2人の組合だと1時間、組合活動に従事できる。従って、組合員数が多ければ多いほど、組合役員が会社から給与を受けながら、労働組合活動ができる時間が長くなるということになる。

3.解決に向けた取組み

 ハンガリーでは、競争力を高め、雇用・労働条件の柔軟性を高めるためとして、労働法が改正された。しかし、これが労働者、組合員にとって不利な状況を生み出しており、これを再度修正して労働組合に力を取り戻そうと考えている。
 一番重要なのは、組織化に力を入れて組合員を増やしていくことである。経済危機で政府が緊縮財政を導入し、その代償を一番多く払っているのが労働者である。労働者にとってネガティブな方向に向いてしまった状況を、まず元に戻すことが目標である。
 
*1フォリント=0.43円(2014年8月22日現在)

労働事情を聴く会