2012年 ハンガリーの労働事情

2012年11月2日 講演録

ハンガリー労働組合全国総同盟(MSZOSZ)
Mr. サボルチェ・プーチィフェール (Mr. Szabolcs Beothy-Feher)

ハンガリー鉱山エネルギー産業労働組合 アドバイザー

 

1.全般的な労働情勢

 ハンガリーの特殊な問題として、1989年の共産主義政権崩壊以来、就業率が54~56%となっていることがある。ハンガリーの失業率は現在10.5%、過去には主に公的雇用の増加により就業率のごくわずかな上昇があった。失業率は、経済・金融危機以前と比べても(2008年初頭で7.5%)高止まりである。2012年4月には、失業率が過去2年間でピークに達した。被雇用者数は約380万人である(ハンガリーの総人口は1,000万人未満)。現政府は10年間で100万人の新規雇用を創出すると約束しているが、実質的で持続的な雇用は実現しそうにない。インフレ率は6%くらい。最も重要なことは所得税率が16%と高く、消費税率は欧州連合(EU)で最も高く27%となっている。労働組合組織率は12%。年金支給開始年齢は65歳である。

2.労働組合が直面する課題

 まず、どのように雇用を増やすかという課題がある。公共部門の雇用ではなく、民間部門の雇用を増やす必要がある。公共部門の雇用とは、政府が雇う短期的な道の清掃や農業の収穫作業などを意味する。雇用の創出と維持、賃金の保障、職業の質の改善、競争力の強化、全国レベルと産業レベルでの社会的対話の進展など課題が山積している。投資家が納得するような環境をどのように作っていくか、国家レベル、産業レベルでどのように効果的な経済政策を進めていくかが重要である。

3.労働組合と政府との関係

 現政府は、労働組合との対話を変えている。労働組合との協議を最小限に減らし協議する場合も協議する労働組合を選別している。以前には三者協議の場として全国和解協議会(OET)が存在した。しかし、政府は労働組合からの批判を敬遠し、それに代わってNGOや宗教団体も加わった大規模な全国経済社会審議会に改編した。

4.多国籍企業の進出、労使紛争

 ハンガリーでも労使紛争が発生しているが、その数は欧州の近隣諸国よりはるかに少ない。ハンガリーの多国籍企業の労働組合は、組合員を代表しており、職場の意見との食い違いはない。輸送部門では組織された本格的なストライキが行なわれている。金属産業、保健医療部門、電力産業では、警告的ストライキが近年行なわれている。政府はストライキ法を改正したため、ストライキを組織することは格段に難しくなっている。

ハンガリー独立労働民主同盟(LIGA)
ヴェロニカ・シラジー (Dr. Veronika Szilagyi)

青年委員会委員長(弁護士)

ピーター・ジョゼフ・フェドラー (Mr. Peter Jozsef Fiedler)
広報担当

 

1.労働組合が直面する問題

 2010年に議会で3分の2を占める新政権が誕生した。この新政府はありとあらゆるハンガリーの法律を変え始めた。全国三者構成協議会も廃止され、政労使間の協議がなくなった。改正された法律には、「労働法」、「年金法」、「税制に関する法」、「選挙法」、「労働組合法」などが含まれており、それらの法律が突然改正されてしまった。ハンガリーの国民はハンガリーに住んでいながら、ハンガリーに住んでいないような状況になった。

2.課題解決に向けての労働組合の取り組み

 このような状況に対して、労働組合は、3つの優先事項を掲げて取り組んでいる。第1の優先事項は、三者構成による社会的対話の再構築である。第2の優先事項は、労働法、年金法、労働争議法に関する協議である。第3の優先事項は重労働、軍隊、消防夫に対する退職年金の早期支給である。
 取り組み方としては、徐々に一つ一つ積み上げていく形をとっている。つまりいきなりストライキから始めるのではなく、まず裁判所から始まり、最終的には憲法裁判所に上げていく方法である。ただ、政府に対してさまざまな要求を出しても、現在の政府はそれらに耳を傾けるような状況にはなっていない。
 さまざまな国際的な場にも訴えている。例えば欧州連合(ETUC)、国際労働組合総連合(ITUC)、そして国際労働機関(ILO)の場に訴えている。ILOについては、ハンガリーはILOのほとんどの会議に関係していることもあり期待をしたが、最終的にはあまり効果がなかった。国内でのデモに訴えても効果はなかった。その結果、平和的な行為から始めることになった。それでも最終的にはストライキという形をとりたかったが、ストライキは事実上不可能という状況になっている。もちろんストライキは、非合法ではないが、ストライキを起こすこと自体が政府のとった改正によって不可能になっている。
このように何も機能しないという状況に陥ったが、何とか政府を動かしたいと考え、要求を通すために、最初は首都のブダペストにおいてのみ、道の片側だけを閉鎖するという抗議行動を展開した。その後、何百という道路でも閉鎖行動が展開され、場所によっては24時間閉鎖という事態にもなった。3回目の道路閉鎖を行なうというアナウンスをした後に、ようやく政府は交渉を始めることに同意した。
 これらを通じて、ハンガリーの労働組合が学んだことは、さまざまな課題を解決していくためには、国際的な労働組合組織との連携も必要であるが、それ以上に国内の市民社会、あるいは市民との連携が極めて重要であるということであった。
 現在の状況は、三者構成による社会的対話のフォーラムはできてきたものの、このフォーラムの中に政府は入っていない。公共部門と、新たに民間部門の対話のフォーラムができたが、完全な形の全国的な三者構成のフォーラムはまだ存在していない。さらに問題として、政府は、これまで交渉しようとしてこなかった労働組合のみをピックアップして、いくつかの労働組合組織を疎外しようとしていることである。ハンガリーにはさまざまな問題が存在している。これから6ヵ月の間は、さまざまなストライキの頻発が予想される。

労働事情を聴く会