2012年 チェコの労働事情

2012年11月2日 講演録

チェコ・モラビア労働組合連盟 (CMKOS)
Ms. インジェッカ・ペッチコヴァ (Ms. Jindriska Petrickova)

チェコ郵便通信新聞サービス労働者連合 会長

Mr. ピ-ター・ペチェンカ (Mr. Petr Pecenka)
チェコ・モラビア教職員組合 全国委員会委員

 

1.全般的な労働事情

 現在のチェコの労働事情は、経済・金融危機によって引き起こされた雇用の減少と失業の増大という特徴を持っている。失業者数は50万人を超えている。国による財政支援を得ている失業者はこの内25%に過ぎない。
 このような状況に陥った原因は、政府による効果的な危機対策の欠如によるものである。それは、政府がチェコの国家財政の赤字解決策として提案した、破滅的な政策措置であり、政府は歳出削減措置のみを求めていることにある。この措置がさまざまな社会的給付を始め雇用政策に対して財政削減による大きな影響を与え、その結果、労働市場情勢およびチェコの社会全体にマイナスの影響を与えている。

2.労働組合が直面する問題

 政府は労働者保護法を改正し、労働市場に柔軟性を与える法律案を提案している。
 今日、関係労働者に適切な保護をいかなる意味でも与えていない不安定な雇用形態が大きな割合を占めるようになっている。個人生活と家庭生活のために必要な基本的な条件である常用として期限の定めのない雇用契約が、多くの労働者にとって手の届かないものになろうとしている。

年金改革:
 CMKOSは年金改革に断固反対する。反対の理由は、年金支給開始年齢の極端な引き上げ、年金支給開始金額の段階的な引き下げ、公的年金制度の民間年金制度への移行を図ろうとしているからである。

医療制度改革:
 CMKOSは医療制度改革に断固反対する。特に、その「2段階医療制度」提案、すなわち健康保険によりカバーされる標準医療と、患者が追加費用を支払う「標準以上の医療」を区別し、患者の支払い能力に応じて医療の質とレベルを差別化しようとしている政府提案に反対する。

社会改革:
 CMKOSは社会改革に断固反対する。主な理由は、職業紹介を公的なものから民営化しようとしているからである。さらに、失業者は公的な機関に登録後2か月間を経たものは、個人の資格にかかわりなく与えられた仕事を受け入れなければならない、として失業者の立場を悪化させるからである。また、子供のいる家庭、低所得者、障害者に対する国の援助を制限しようとしており、それは貧困の増大を招くからである。

税制改革:
 CMKOSは税制改革に断固反対する。それは消費税引き上げによって生活必需品の価格を引き上げようとしているからである。政府は引上げ比率をめまぐるしく変えながら提案している。現在2つの提案をしている。20%引き上げと14%引き上げである。また自営業者と比較して賃金労働者に不利益な税制上の取り扱いを図ろうとしている。実施されると隠れ自営業者が蔓延することになろう。さらに賃金労働者の増税に対して企業経営者の税制上の優遇措置が盛り込まれている。

教職員組合に関して:
 チェコ・モラヴィア教職員組合では、地方における教育関連支出が国家的な重要な課題だと考えている。他のEU諸国と比べて教育関連への政府支出は下位に位置する。教師と学校のスタッフの給与などの報酬制度が昨年大きくゆがめられた。GDPにおける教育部門への支出が継続的に下げられてきている。今年も下げられると予測している。
 教育部門への支出が減るということは、いくいくは労働者の賃金の実質的な低下につながり、失業者の増大につながる。それは国民へ良い教育を与える機会、アクセスする機会を削減するからである。良い教育を提供することは絶対的に必要である。
 良い仕事につける割合、すなわち賃金が高く、ストレスが少なく、長期雇用の仕事に就ける割合は、大卒で3人に2人、高校卒業で5人に1人、そして、最低限の教育しか受けられなかった人については、20人に1人という状況である。

3.課題への労働組合の取り組み

 この1年ほどの間、CMKOSは政府が提出している改革案は社会的に耐えがたいものであり、実施されると特に中間所得層と低所得層に大きなマイナスの影響を与えると国民に喧伝してきた。CMKOSの活動の枠組みで、12万人が参加した大デモとかさまざまな会合、集会、行事を行なってきた。CMKOSは抗議行動を孤立して実施したのではなく、政府の改革案に反対する数多くの市民団体と協力して実施した。
 労働組合は、多くの代替案を持っているわけではない。労働組合はこれまでの十数年間、あるいは過去100年間と同じような問題、すなわち労働時間、労働・生活条件、環境、労使関係、安全衛生、労働組合権などの問題に取り組んでいかなければならない。
 CMKOSは、包括的なキャンペーンとして「チェコ共和国のヴィジョン」を策定し、その中で市民のニーズを削減、無視しようとしている現政権の政策に対する代替案を提示した。経済危機の中で、今後、労働組合は何をなそうとしているかをかなり詳細に述べた分析的な計画文書をすでに公開している。中期的な措置として、汚職との戦い、税収の改善などによる国の歳入の強化を掲げ、長期的な措置として、明確な成長志向経済政策の策定、安い労働力や低賃金に基づくのではなく高技能に基づく競争力の漸進的強化、公的資金支出への秩序の導入を掲げている。
 三者構成機関を利用する方法もあるが、政府寄りの勢力が国会の過半数を占めている状況では、協議は困難であり、事実上成功の見込みは極めて限られている。

4.政府との関係

 政府と労働組合との関係は、三者構成機関や関連機関の通常のベースで公式的に行なわれている。最高の三者構成機関は、社会経済協定協議会である。三者交渉の実質的な活動や効率性は各パートナーの政治的意思、特に政府サイドの政治的意思に左右されている。CMKOSは、政府が社会的なパートナーと協議する方法について基本的に強い留保を持っている。CMKOSは数多くの代替案を提出してきたが、そのほとんどのケースで政府の政策と合致しないという理由で取り上げられることはなかった。

5.多国籍企業の活動・労使紛争

 過去10年の間に急速な外国企業の投資活動が見られた。政府の奨励策によるものであり、新規の投資に対して税制上などの優遇措置を講じてきた。外国企業は安価で技術の高い労働力、安価な生産コスト、チェコの伝統的な生産能力に目を付けた。自動車産業、高技術産業、食品産業、商業分野に多くみられる。

労働事情を聴く会