2013年 ブルガリアの労働事情

2013年11月29日 講演録

ブルガリア独立労組連盟(CITUB)
プラメン・ゴーチェフ・ディミトロフ

 

 ブルガリアは、経済的に主要な指標である購買力基準における人口1人当たりのGDPが、東欧諸国で一番低く、欧州連合(EU)諸国の約半分程度とみている。また平均賃金は、日本円に換算すると月額5万6000円程度で、おそらく日本の5分の1ぐらいになるのではないかと思う。また最低賃金は、月額170ユーロで、日本の最低賃金に比べると、日本のほうが6倍から7倍高くなっている。
 またインフレ率は1.8%から2.5%で推移している。所得税は、一律10%で非課税部分はない。2013年9月までの失業率は約13%で、若年層は約30%と、ヨーロッパ諸国の中では最も高い水準になっている。
 15歳以上の労働者の雇用率は約60%となっており、失業給付の額は、実際に就業していたときの賃金の約60%である。失業給付の期間は、年齢と勤続年数によって4ヵ月から12ヵ月となっており、現在は失業者の約20%が給付を受けている。
 ブルガリアはEUの中で最も貧しい国であり、その貧しさは、ポーランドの2倍ぐらいである。これについてはプライドを持って言えることではないが、国の政治家たちが何をやっているのかと、問いたい。
 労働組合が直面する課題としては組織率が挙げられる。しかし、現在のところ組織率は約21%と比較的良い方である。ブルガリア独立労組連盟(CITUB)は、現在約30万人の組合員数を抱えているが、その中でも組織率は悪くない。
 国際的な労働組合は、国際労働組合総連合(ITUC)と欧州労連(ETUF)に加盟し、またほかの国際産別にも加盟している。いま最も焦点を当てているのが国際労働機関(ILO)であり、CITUBにとって最も重要な組織となっている。
 また喫緊の課題は組織化である。特に青年・若年層の組織化を進めることを優先している。若年層の組織化を図るためには、経済的あるいは社会的に新しい内容を提供する必要がある。より高い賃金、教育、ヘルスケア、ほかの社会的なサービスも提供していかなければならない。さらに、社会保障や福祉についてもしっかりした制度を導入させないと、組織化は難しいと思っている。
 政策課題については、社会的対話を改善しなくてはならない。全国的なレベルにおいて、『労働法』や社会保障関係についての法律、また最低賃金、労働市場などについてはいくつかの団体協約が結ばれているが、それ以外は結ばれていない。
 全国的なレベルでみると、特に賃金の改善、あるいは引き上げに関して、2007年には多少使用者側との交渉に成功しているが、それ以外はすべての産業、すべての地域において、今のところ成功していない。63の地域で社会的対話について行なってきたが、非常に弱い協定で拘束力のあるものにはなっておらず、協定をさらに広範囲な項目に広げてきたがほとんど成功していない。
 ブルガリアは、移民の問題、移動労働者の問題を抱えている。これまで比較的古いEU加盟国である英国、ギリシャ、キプロス、スペイン、ルーマニアなどの国々と協力関係を持つことを通じて、さまざまな協定を締結してきた。CITUBとしては、非常に例外的な組織ではあるが国際通貨基金(IMF)を含めてITUC、ILOからサポートを得て、経済の成長・安定や国際収支改善など複数の課題を同時に達成するために財政・金融政策などを組み合わせて用いるポリシーミックスと呼ばれるさまざまな政策を提案している。その政策は、マクロ経済政策や産業界についての政策で、新しい投資等などを含んだ形での政策、これらを合わせた形でのものである。そしてIMFの勧告では、財政的に統合した形で、それを恒常的に行なった場合、GDPは上がり、長期的な失業率は下がっていく予測となっている。
 1年半前になるが、政府と社会的パートナーがこの経済回復の政策を始めた。しかし、最終的に結果を見ると、ただ単に政府と社会的パートナーが話し合いをしたにすぎず、最終的な政策に関する書類を提出したにすぎなかった。この回復のための政策ミックスというのが行なわれたが、誰もそれに耳を傾けようとはしなかった。ただ社会的な不安定さと、政情不安に陥っただけである。今年の2月に選挙が行なわれて、新しい政権が誕生し今日に至っているが、今なお社会的不安はそのままの状態になっている。
 政府との社会的対話は公平でないまま続いており、これが政策の欠如という形で現れている。この11月20日には、約1万人の大規模なデモが起きている。新しい政府ができたとはいえ、国家の予算に関して良いニュースはない。この中道左派の政府は、政策的な協働はいまだに行なわれず、同じ状況が続いている。
 こうした中でも、ごく最近は2ついいニュースがあった。一つ目は、低収入の人たちに対する免税制度であるタックスクレジットである。二つ目は、2012年に実施することで決まっていた定年制度である。女性は63歳、男性は65歳まで定年を延長できることが、少なくとも来年は凍結されることになり、現在の女性60歳と8ヵ月、男性63歳と8ヵ月を維持するということである。
 多国籍企業については、新たに投資先国に法人を設立する投資形態(工場の設立などを伴う投資など)であるグリーンフィールド投資を行なうことで新しい雇用が生まれている。これにより、既存の雇用はしばらく守られると思う。
 この多国籍企業によって民営化されたすべての企業において、逆に仕事を失う人たちが多いという結果にもなっている。この多国籍企業においては、団体争議や団体紛争が見られる。多国籍企業の使用者側が労働者の賃金に対して支払い違反する、あるいは労働組合権の侵害、リストラなどの問題が起きている。

労働事情を聴く会