2012年 ブルガリアの労働事情

2012年11月2日 講演録

ブルガリア独立労組連盟(CITUB)
Mr. プラメン・ジョージー・ナンコヴ (Mr. Plamen Georgiev Nankov)

副会長

Ms. ダニエラ・ディミトロヴァ・アレクシーヴァ (Ms. Daniela Dimitrova Aleksieva)
青年委員会委員長

 

1.全般的な労働情勢

 ブルガリアでは、世界的な経済危機の影響が雇用、国内需要、投資などに大きな衝撃を与えてきた。政府の緊縮財政により、賃金および社会保障給付が凍結されている。最近5年間で、不況の中で、40万人分に相当する15%の雇用が失われた。失業者の数は210万人に達し、失業率は12.5%にのぼる。ちなみに2008年の失業率は5.6%であった。2012年5月の時点の若者の失業率は32.8%。欧州連合(EU)27カ国の間で、ブルガリアは仕事もしていないし学校にも行っていないニートの割合が一番高い国になっている。
 ブルガリアのもう一つの問題は、120万人のブルガリア人が海外で働いて暮らしていることである。その多くが若者であり、また高い資格を持つ若者が海外へ流出している。貧困率は40%で、EUの中で最も悪い。雇用がなくなったというだけではなくて、ヨーロッパの中で一人当たりGDPも所得も低い。

2.労働組合が現在直面している課題

 第一に、適正な賃金と労働条件を目指す包摂的な労働市場政策があげられる。つまり、所得・消費・投資の増加によって生み出される内需の拡大を促すために、質の高さと新規雇用に基づく新しいタイプの経済成長が必要とされている。マクロ経済政策は通貨の安定と金融規律を保つこと自体を目的とすべきではなく、貧困と社会的疎外と闘うための金融ツールやアプローチを含まなくてはならない。
 第二は、社会保障制度改革の問題で、社会的不平等を減らすために、新しいより公平な税制が必要とされている。この改革に含まれる内容としては、基本的な所得や税の再配分に対する国の関与の強化、教育や保健医療などのサービスへのフリーアクセス、十分な代替所得を伴った社会保障制度の資金的持続可能性、雇用・教育・失業・退職の間の移行の改善が挙げられる。
 第三は、社会的対話の進展の問題である。団体交渉の役割を向上させ、企業間のフレキシキュリティ(雇用の柔軟性と安定性の両立)を安定化し、部門別の社会的対話の進展と、欧州社会対話への積極的な参加を図ることが不可欠である。単一欧州労働市場内を移動する労働者の権利と利益を相互に保護するために、他の欧州諸国の労働組合とのさらなる二者間協力協定が必要である
 第四は、ストライキの問題である。労使紛争とストライキの主な理由は、不適切な改革と重要な社会的部門に対する資金提供水準の低さ、および低賃金である。未払いの賃金と未払い社会保障負担金、劣悪な労働条件、高い超過勤務率、民営化による大規模な余剰人員の発生などが原因となっている。

3.課題解決に向けての労働組合取り組み

 三者間の社会的対話を活性化しようとしても、効果的で有益な決定にはほとんど至っていない。現政府は労働組合との社会的対話を約束していたが、社会的対話が適切に機能してよい結果をもたらすには、まだ多くの障害がある。経済・金融危機と緊縮政策を背景として、過去3年間の社会的対話は、矛盾と、主に全国レベルにおける不均衡な発展が特徴となっている。社会的パートナーと政府との交渉と意見交換は難しく、社会的対話のプロセスに重点が当てられ、対話の成果には二次的な注意しか払われなかった。政府が社会的パートナー間で同意した協定に違反したり、時には、社会的パートナーとの協議もなく一方的に決定を押しつけたりする例は多い。
 政府との長く困難な交渉を経て、またCITUBが組織した全国的抗議活動によって、年金改革に関する合意が得られた。しかし、政府はこの合意を反故にした。労働組合に対するメッセージは明らかだった。ストライキをしたいなら、どうぞ実施してください、それでどうなるものでもない、という態度であった。これによって、2つの労働組合連合は全国三者協力協議会(National Council for Tripartite Cooperation)への参加を打ち切らざるを得なかった。政府と社会的パートナーの間の信頼は損なわれ、2011年の下半期に三者対話は決裂した。
 通常CITUBは、ストライキによる解決を図っているが、声明、政策提案、覚書、三者構成機関における積極的立場またはそれら機関への参加の一時停止、あるいは全国的な抗議やストライキなど、集団的行動のためのさまざまな手段を組み合わせることによって目的を達成することが必要な場合もある。全国レベルでは、最低賃金に関してのみ部分的成功を得ることができた。2011年9月1日現在で賃金が引き上げられ、2012年中旬の段階で新たな賃上げ交渉が行なわれた。

4.多国籍企業の進出状況および労使紛争

 少なくとも近年、実際にストライキは起こっていない。多国籍企業では労使対話がかなり高いレベルで行なわれており、例えば、クラフトやカールスバーグなどでは労働組合と経営者との間には、良い協力関係ができているという意味でグッドプラクティス(良好な関係)となっている。ただし、問題を抱える企業もある。問題の多くは企業内に労働組合を立ち上げることについての問題で、例えば、矢崎総業、メトロ・キャッシュ・アンド・キャリー、コカ・コーラなどの企業は、企業内の労働組合をパートナーと認めることを渋っている。
 また、ヒューレット・パッカードのブルガリア支社では、欧州労使協議会(European Works Council: EWC)への代表者選びに関して緊張が生じている。コダックでも、EWC代表の変更に際して、経営陣からの圧力があった。最近では、ネスレにおいて余剰人員の解雇をめぐって緊張が生じていた。労働組合は、こういう状況を黙視できず、さまざまな政策策定と提言、多国籍企業に関する定期的な調査などを行なっている。数年前に多国籍企業クラブが作られ、多国籍企業からさまざまな人を招いて意見交換や議論を行なっている。

労働事情を聴く会