2006年 ブルガリアの労働事情

2006年11月15日 講演録

ブルガリア独立労働組合連盟(CITUB)
アタナスカ・トドロバ

会長アドバイザー兼青年組織21世紀青年フォーラム会長

ブルガリア労働同盟(PODKREPA)
ヴェセラン・ミトフ

国際局主任

 

社会労働情勢

 人口約800万人(ブルガリア人83.9%、トルコ人9.4%、ローマ人4.7%、その他2%)首都はソフィア。1989年11月の改革開始以降民主化、市場経済移行のなかで労働組合も真の独立と自由を得た。他の東欧諸国と比し経済改革はずっと遅れ、共産党独裁体制の終焉をもってスタートしたが政治的に不安定な期間が長く市場経済化や民営化に向けた本格的な方策は1997年まで待たなければならなかった。97年の通貨準備委員会設置、為替相場の安定、インフレの沈静など構造改革の下でマクロ経済指標は堅実に安定した状況になってきた。労働組合もEUへの統合を目標に競争力と連帯の観点から社会経済問題に取り組んできた。2007年1月よりブルガリアは欧州連合(EU)加盟国となる。社会経済問題に関する政府の楽観的な見方に対して労働組合は、次のような労働市場を取り巻く環境の厳しさを指摘している。1.人口の減少、2.経済活動の停滞、3.高い失業率、4.雇用の地域間格差、5.低レベルの雇用、である。

労働市場

 人口の減少は、高い死亡率と低出生率によるものであるが、過去15年の間に100万人の人が国を去り人口減を記録している。特に、男の減少が激しい。2003年には労働人口が増加したが、これは定年延長によるものである。経済活動人口の減少は企業活動の停滞をともなうものである。今日までの数年間において若干なりとも雇用増が計られたのは組合が提案した施策に負うところ大である。ブルガリアが抱える問題はEU加盟国平均と比較するとより鮮明となる。政府とEUとの交渉は99年に始まったがEU指令との整合性を計るために労働関係法規は、その85%を改正するに至っている。
 EUでは14週間以上の有給産休が実施されているが、ブルガリアでも少子化対策の一環として産休中の賃金が保障されている。産前45日産後290日は給料の90%が保障される。その後に育児休暇を2歳になるまでとることができる。育児休暇中は最賃金額が支給される。両親に代わって祖母が育児をしたときは祖母に2歳になるまで最賃額が支払われる。
 高い失業率については世代間に格差がでてきている。若年層(15~24歳)と中高年(50~64歳)の雇用機会が不足している。民営化によって職場を終われた労働者も多い。公式な統計によると2006年10月の失業率は8.7%で欧州の平均的な数字に近づいている。
 ブルガリアの現在の平均所得は、1989年までの共産主義時代下より約40%低いものとなっている。インフォーマルセクターが増えていることにも起因している。25~30%がヤミ労働市場である。労働組合は100ユーロ(月当たり)の獲得を目指している。
 さらに貧富の格差問題が起きている。国民のわずか10%の富裕層、30%が大体中産階級で残り60%が貧困層でまさに日々の生活に生存を賭けている。年金生活者や失業者もこの貧困層に含まれる。この現実を携えてブルガリアはEUの加盟国となる。

ブルガリアの労働組合

 労働運動の歴史では、最初のストライキが行われたのが1895年である。労働組合が成立されたのは、1904年のことになる。共産党時代の労働組合は共産党の一部であった。1989年に結成された「独立労働組合」が現在の「ブルガリア労働同盟」(PODKREPA:組織人員約15万)」である。ブルガリア独立労働組合連合(CITUB:組織人員約35万)は1990年の結成である。両組織ともICFTU(現ITUC)および欧州労連(ETUC)の加盟組合である。両組織間の関係はかってより良好な関係に発展している。労働運動の最大の使命は、結社の自由と労働組合の独立性の確保、組合と組合員の利益を代表することとしている。

EU加盟と労働運動

 2007年1月1日からブルガリアは欧州連合(EU)の加盟国となる。EUへの統合に関してはさまざまなレベルでの社会的対話、市民対話が行われ労働組合も三者諮問委員会をはじめあらゆる対話に参加している。EU指令などEUの諸規則の実施に取り組んでいかなければならない。EU加盟国のなかで最下位のランキングになるがEU加盟を通じ民主的な近代国家へと再構築をはかることになる。EU加盟は西欧社会モデルの導入を意味するものであり同時にそれはブルガリア自身の統合を進めることにもなる。労使関係のみならず「平等」のモデルをブルガリアの社会に導入されていくことになる。1943年のヤルタ会談におけるスターリン・ルーズベルトの協定によって共産圏に追いやられてから60年、ブルガリアにようやく歴史的な正義がもたらされ西側諸国の仲間入りをすることになる。

労働事情を聴く会