2001年 リトアニアの労働事情

2001年2月7日 講演録

リトアニア労働組合(LDS)
クリスティナ・クルパヴィチエンネ

リトアニア労働組合書記長

 

国内の状況

 リトアニアには4つのナショナルセンターがあり、リトアニア労働組合はその1つです。
 リトアニアの情勢は、ラトビア、エストニアと非常に似通っています。現在リトアニアでは今後の国家体制等の移行期にあると思います。いろいろな社会的な変化を考慮しますと、今後リトアニアはEUへの統合の道を選んでいくべきであり、法律を整備していくと同時に、その中で西ヨーロッパをモデルにしたり、また社会民主主義的な伝統や、社会的パートナーシップについては支持していくべきだと思います。
 このような現状の中、一方で大資本家は自由な市場を要求し、労使関係に関しても自由化すべきだと要求しています。
 リトアニアは民主主義的で、かつ社会的な方向を目指していますが、国民はその利益と悪影響の両方を受けているのが現状です。
 政治家は一方で、EUの統合に向けて国際的な義務を果たしていく姿勢を見せ、社会的パートナーシップは認めるという態度をとっていますが、他方で徐々に労働組合の権利を縮小してきています。
 政府は労働組合の権利を制限し、労使関係を自由化させていく法律を採択しました。政府はそのことにより企業活動が活発で、自由になり、さらに雇用がふえると言い訳をしています。
 また、地域間の社会的、経済的発展の差が開いてきていて、一部地域では失業率が30%から40%にのぼり、ほかの地域からも孤立しています。国全体の経済運営があまりうまくいっていないことや、企業活動に対する平等な条件が確保されていないこともあり、法律を守って活動している企業が倒産し、その結果多くの失業者が出ています。そのように失
業し、収入源を失った人たちが犯罪に走ったり、自殺をするというケースもふえています。
 リトアニア全体の失業率は、非公式データで20%、公式データで13%から15%になっています。また給料の額も減ってきています。
 そして、国の予算では基本的な最低限の社会保障もできないという現状で、育児をする女性に対する助成金を削ったり、また年金受給者で職をもっている人の年金額を減らすという措置がとられています。
 もう一つの社会問題として、多くの企業で給料の遅配が続いています。ともすると遅配が半年に上る場合もあります。国内企業のうち700件の企業が倒産の危機にあります。
 労働市場での一番大きな問題は組織率が低いことと、労働組合の力が弱いということです。組織率は12%。また、勤労者165万人の中で税金や社会保障費を払っている人は125万人なので、一部の勤労者は税金も社会保障費も払っていないということになります。
 20世紀の最後の10年間、またリトアニアが独立を確保してからの流れをみると、政府と経営者側は、労働者、労働組合に対する攻撃、権利の制限を強めてきていると言えます。特に2000年はその悪影響を強く受けました。2000年の7月12日採択された労働紛争法で、企業別労働組合が労働紛争を解決する権利を失ってしまいました。実はこの法律を採択する際に労働組合は政府から、この法律を施行するかわりに労働裁判所を設置すると言われていたのですが、結果的に労働裁判所は一切つくらず、その計画も立てられていません。また、労働協約を結ぶことも拒否されるようになり、雇用、解雇、すべての手続きが簡素化されてしまいました。
 2000年秋に国会議員選挙があり、社会自由連合が勝利しました。この党は労使関係を自由化させていき、労働者の権限を制限していくという方向に流れていて、これはILOやヨーロッパの社会憲章とは反する流れです。
 LDSの設立は1989年ですが、それ以前に12万4,000人いた組合員が、設立当時5万人に減ってしまいました。これは多くの大企業が倒産してしまったことに関連して、労働者の数が減ったということも原因にあります。失業者数も大変ふえていて、新たにどのようにして組合員の組織化をしていくか、また、組織率を上げていくかということが1つの大きな課題になっています。現在リトアニアでは一時的にアルバイトのような形で就職する人がふえています。正規社員として働いている人は75%しかいません。社会全体を活性化し、組織していくための戦略を考えていかなければならないと思っています。その中の1つとして、賃金に関する契約があります。同じ職種で、同じ仕事をしていても地域によって賃金の格差があります。特に貧しい地域の住民はほかの地域からも孤立した形になっています。その地域の子供たちも就学の可能性を失っています。失業した両親は自分の子供の将来を考える余裕もなくなっており、また、職業訓練、つまり、新しい労働市場の中で新しい需要にこたえるために再就職を目指しての教育も1つの問題です。そのためにはやはりお金がかかります。ただし、正規労働者が新しい技能を身につけようとする場合は、経営者側は非常に歓迎しています。
 このような背景の中で、LDSとしては基本的な労働者の権利、つまり、労働契約を結ぶ権利、労働協議を行う権利、団体交渉を行う権利、そしてストライキを行う権利を確保すべきだと考えています。また、課題として中小企業、外資系企業の労働者、また、パートタイムで仕事をしている人たちの組織化もあります。
 リトアニアには三者評議会というものが設、、置されており政府各関係省庁の代表が5名労働者側4名、雇用者側4名で構成されていて、LDSからの代表も労働者として参加しています。
 労働組合として積極的にセミナー等を開催し、組合員に対する教育活動も行い、頻繁に経営者、政府の代表と会って協議を続けています。政党との関係強化にも務めていますが、政治体制が安定していない、つまり、政党が離合集散を繰り返している不安定な状況のためそれが難しいのが現状です。
 このような状況のなか、2000年の5月18日、初めて合法的な形で公共交通機関の運転手のストライキがビリニュスで行われました。このストライキの要求事項は、遅配が続いている給料の支払い、賃金の引き上げ、また、今後経営者側の政策を労働者に明示することでした。その結果、経営者側、つまり、政府側は労働組合側を裁判にかけ、このようなストライキは非合法だとして、労働組合に対し20万ドルの補償を要求してきました。他には、単位組織の中でも丸1年間、給料が支払われていない労働者もいたので、そういった労働者がハンガーストライキ等を行ったときには労働組合としても積極的に協力、参加しました。

労働事情を聴く会