2001年 エストニアの労働事情

2001年2月7日 講演録

エストニア労働組合連盟(EAKL)
カディ・パルニツ

エストニア労働組合連盟会長

 

国内の状況

 現在、エストニアの政府は、連立政権です。その連立政権は中道主義と自由主義者、そして穏健派から成っています。穏健派はエストニアにおける民主主義派と言えると思いますが、穏健派と労働組合は協力関係を保っています。現在、エストニア共和国においては、いわゆる社会民主主義党というものはありません。
 労働者、労働組合にとっては非常に厳しい状況にあります。労働組合は、まだ十分活発に活動できているとは言えないので、今後政党との協力関係を強化しつつ活動をさらに活発にしていかなければならないと思います。
 昨年から労働組合は活発に活動するようになってきました。昨年はその前年よりも活発に行動ができたと思いますが、本来我が国ではあまり労働者が活発に抗議集会等をすることはなかったので、エストニアの労働者を刺激し、活発な労働運動を起こすことは非常に難しいことなのです。労働運動を活発化し、また政党との協力を受けた結果、昨年労働組
合にとって良い法律が採択されました。その法律は労働組合の基本的な権利を保障でき、また、差別行為のないようにするものです。そして、労使関係においても協議ができる体制になってきたと思います。団体交渉の権利も取得できました。
 エストニアの人口は140万人で、そのうち労働力人口は60万人です。失業率は12%です。1999年、国内総生産がマイナスになりましたが、生産性と賃金は上昇を確保することができました。賃金の上昇率は6%程度です。生産性は向上していますが、失業率は低下していません。物価上昇率は4%、最低賃金の上昇率が9%です。最低賃金は97ドルで、ほとんどの労働者が確保されています。平均賃金を受け取っている人の割合は7.8%で、平均賃金は月297ドルです。平均賃金以下の給料を受け取っている人は労働者全体の70%になります。これは労働組合の要求、またEUの要求である平等な賃金、配当ということに反しています。平均賃金額は、何とか最低限の生活が保障される額だと思います。家庭に
子供がいた場合は、共働きをしなければ生活ができません。
 私はエストニアのナショナルセンターであるエストニア労働組合連盟の会長を昨年の4月末から務めることになりました。EAKLのほかにもう一つホワイトカラーを主に組織している連盟がありますが、その組合員は文化関係者、学者、大学の講師、学校の教師です。
 EAKLが組織している労働者の分野は、製造部門、交通、国家公務員、地方公務員、一部教師、サービス部門となっています。基本的に2つの連盟は協力関係を保っています。国が小さい上に、それぞれの組織も小さいので、お互いをまとめる委員会を作っています。また何かの交渉をしなければいけないときはお互いに代表団を組んで交渉に当たっています。
 エストニアには経営者側組織が1つあります。エストニアにおいて、三者交渉は政府代表、労働者側として労働組合代表、雇用者代表の三者での協議を行い、国レベルで団体協約を結んでいます。その団体協約の中に最低賃金等が定められていて、本年までさまざまな協議が続けられる中、最低賃金に関しての私たちの運動は成功し、14%の向上が確保できました。また、労働組合と経営者団体、労働組合と政府という二者間での協議も行っています。国家公務員にとっての雇用者としての政府との協議も行っています。国家公務員も労働協約を結ぶ権利があり、エストニアでは、毎年秋過ぎぐらいに賃金交渉が行われます。また、各企業別の労働協約も結んでいます。
 その他に、エストニアには社会経済審議会というものがあります。これも三者構成になっていて、学識経験者と経営者代表、労働者代表になっています。この審議会では法案について審議がされています。また、この法案の成立に関しても私たちが支持する議員等を通じて活動をしています。

EAKLの活動

 EAKLがおこなっている基本的な活動内容には、情報提供とコンサルティング活動があります。これらは労働組合にとって非常に重要な活動であると考えています。その他には、雇用のための教育運動にも重点を置いています。私どもの活動の中にはあえて、男女平等のための運動というのはありませんが、その点に関しては特に運動を起こさなくても確保されていると思います。基本的に女性も産休の後、きちんと自分の職場に復帰できます。ただ、1点差別があるとすると、給料の部分での女性への差別はあると思います。国レベルでは今後の課題としてEUとの協力関係もあります。今現在は、準会員になっています。今後の関係強化が期待されるところです。
 ソ連邦崩壊後、労働組合員数は減っています。2000年のデータでは、組合員数は5万8,000人で、組織率はほかの連盟を含めて15%です。組織率の向上も組合としての1つの課題です。現在、労働組合が組合員に提供しているサービスは、法的な問題の支援と社会保障、保険、一番重要な給料に関する活動、それから、組合員の教育、人材育成です。内
部的な問題として、もっと具体的で現実的な援助を労働組合員に与えるべきではないかという声も挙がっています。
 そういった課題を達成するために、まず労働組合のイメージを改善していくこと、情報を幅広く与えていくことが非常に重要だと思っています。そして、エストニアには地域別組織がないので、各地域での労働運動を活発化していくことが課題になっています。各地域には、ナショナルセンターの出先機関がありますが、なかなか地域での活動が活発化されていないので、改善しようと努力しています。
 25の産別組織の統合も課題の一つです。サービス部門、また中小企業での組織化の向上にも力を入れています。
 現在国レベルで、労働組合から経営者への社会的な保障の要求に関する、非常に重要な協議がずっと続けられていますが、おそらく数日後に具体的な国レベルでの協定が結ばれると思います。そのなかには、失業手当をどこからだれがどれだけ手当するのかということや、企業倒産の際の保障に関してさまざまな社会保障に関する内容が盛り込まれる予定です。ただ、なかなかこの三者協議がスムーズに進まないのがエストニアの現状です。三者間協議に基づいて協約、協定を結ぶというのも難航しています。

労働事情を聴く会